お江戸を指南所

朝山みどり

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第17話 カモ

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ロクスケは六之丞と名乗り、俳句の師匠に挨拶をしていた。
「早岡六之丞と仰るか。ここは町の者が多く集っておりまして、ご無礼な物言いの者がおります。それでもよろしゅうございますか?」
「かまわぬ! ・・・いや、かまいません。それが・・・わたしが新参者で迷惑かけることも・・・」
「いや、そう言うことでしたら、入門承ります。次の会では初夏から夏の句となっております。みなで寸評をしましてね。好きに発言します・・・もし来てみたはいいけど、どうも・・・となりましたら遠慮なく仰って下さい。入門は最初からなかったと言うことに致しますし、ほかの師匠の紹介もいたします」
「丁寧な言葉・・・ありがとうございます。話し方はおいおい慣れます」とロクスケこと六之丞は頭を下げた。

さて、チャラチャラのミツジが美也子屋の前を歩いていると、前から来た中間が、声をかけた。
「話がある」中間の後ろの主人らしき男も
「逃げるなミツジロウ」と声をかけた。
身を翻そうとしたミツジに
「もう逃げるな」と主人が声をかけた。ミツジは立ち止まり冷たく二人を見ると
「裏に神社があります。そこで」と言うとさっと姿を消した。
ちょうど入口当たりで商品をきれいに並べていたキヨとシズは神社に行こうと奥に引っ込もうとしたが、手代の一人が
「キヨ。今日入った荷を見て店に出すのを十点程選んでみよ」と言った。
常なら嬉しいその申し出が、恨めしかったが黙って手代に従い、神社に向かうシズの後ろ姿を見送った。

シズは神社に向かい、社殿の後ろに隠れた。

「おぉここですね」
「そうだな」の声を聞いてそっと覗くと、侍と家来だった。

「だが、話を聞いてくれるのはありがたい」
「そうですね。多江殿のうそを皆が信じて・・・忠家様にはなんの罪もないのに・・・」と中間が言うと
「そうだな、あれは認めなかったのに」
「多江殿は、罰が当たったんですよ。誰がみてもわかる黒子があり、目鼻も」

「待たせましたか?」の声に二人は話をやめた。

ミツジロウは黙って二人を見ている。先ほど冷たい目をしていたミツジロウはなんの表情も見せずに二人を見ている。

「すまなかった。謝って元に戻るものでないのはわかっておる。だが謝らせてくれ」
「兄上。わかりました。母上の具合はどうですか?」
「会いたがっておる。母上は謝っておる。会って謝りたいそうだ」
「わかりました。気にしないように言って下さい」
「おぉわかってくれたか。ありがとう。光次郎」

「それでは、また連絡をいたします」
「待て、光次郎!まだ話は終わっておらん」
「わたしは終わりました」そう言うとミツジは神社を出て行った。家来の男があとをついて行った。
兄上様はため息をつくと社殿に向かい、柏手を打つとぶつぶつ呟いて去って行った。

シズは思いがけないことを聞いた。あのチャラチャラした人がお侍さんだったとは・・・

いろいろなことを思った。
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