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第二王子

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私には兄と弟がいる。父は兄を愛している。母は弟を愛している。両親は私をたよりにしている。

昔から言われていた。

「リチャードを助けてやってくれ、あれは、ああいう子だからお前のようなしっかりした者の助けがいる」

「テリウスを助けてあげてね、あの子はああだからどうしてもね。あなたのようなしっかりした補佐が必要なの」

こういう親にああいう子ってことを小さい時から・・・・・私が一からがんばってやった事は、いつのまにかああいう子たちが褒められる材料になっていた。私は自分に価値があることに気づいた。そしてそれを一番上手に使えるのは自分だと。


私が学院に入学したとき、有力貴族が近寄ってきた。有力ではないな・・・有力な家はすでに兄か弟に近づいている。

私に近寄ってきているのは二番手の家柄の者だ。二番手だって事は成り上がる気があるということだ。

子供だけのお茶会でいつも不思議に思うことがあった。付き添いでやってきたブルークリフ伯爵家の者がいつもこの場にいないフレデリックの話をするのだ。そしてあまりのひどさに眉をひそめながらなんどもうなづくのだ。ブルークリフの者もそれに応じて同じような話を繰り返すのだ。

自分のところの手に負えない子供のことを外で話すのも不思議なら、それを興味深げに聞くのも不可解だ。

こっそり調べてわかったのは、長男のフレデリックは先妻の子。次男は後妻の子だが生まれたときは先妻が生きていて伯爵の子として届けられていない。あくまで後妻の連れ子になるということだ。

この場合跡取りは先妻のフレデリックしかありえないが、伯爵夫妻はフレデリックの評判を下げて跡取りからはずそうとしているということか・・・・

おまけにフレデリックは魔力なしと言いふらしているが。確かにブルークリフ家の跡取りが誰であろうと気になる貴族はいないだろうし、何代かあとに不都合なことがあればこの跡取り問題を蒸し返せば解決ってことだな・・・・

私はこの案件を黙認することにした。私のまわりに側近きどりの男たちが集まってきているが、ただそばに置くだけで側近候補だとは告げていない。都合のいいことにブルークリフの者もそのなかにいて、なぜか周りがそいつを助けている。

あいつらが私を後ろ盾扱いしているのが妙に面白くて、そばにいることを許しているが、本当にそばに置いているのは乳兄弟のルドだけだ。


ブルークリフの魔力なしと名高いフレデリックだが、この間、食堂の前でおもしろいことをやっていた。バージルがすぐに声をかけて、フレデリックは二度とその看板を出さなかったが・・・・・

そしてこの夏、王都で大評判になった肌着がある。バージルのところのカーメル商会が売りだしたのだが、涼しくて汗をかいても匂いがせず、洗濯しなくても清潔なものだ。

私も評判を聞いて手に入れたのだが、確かにいいものだ。後騎士団の者が、体の傷跡が薄くなったと言いだしたのだ。
言われてみると、心なしか肌がすべすべのような気がする。


騎士団からと言うか男性からでた噂で男性の肌着を女性が着るようになったらしい。これはあくまでも、そういった噂を聞いたってことだ。

女性自身がそんなことを言う理由がないからな。寝るときに男の肌着を着て、顔にもそれをかけていると言うのだ。

なんでも女性用を売り出してくれと言う手紙がたくさん届いているということだ。


いやいや肌着の有用性の問題ではない。問題は廃嫡されて平民になった、フレデリックだ。

エドワルドがフレデリックに関していろいろ言っているが、あくまで家内いえのなかの問題だ。

フレデリックは公の場でなんら咎められるような事はしていない。

フレデリックを貴族の養子にして側近なんて陳腐な事はしない。平民のままで重用するのだ。

さて、気さくで公平な第二王子の出番だ。


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