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第23話 本当に全部あった
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「上手だ。アリス。その馬は信頼できるよ。楽にして」と馬の背で緊張しているアリスにアレクは声をかける。
「速歩して」とアレクが指示をしてアリスが合図を送るが馬は並歩だ。ふっと笑ったアレクが
「速歩。はい」と言うと馬は軽くうなずいてゆっくりと速歩を始めた。
「力を抜いて。そうそう。はい」とアリスに声をかけると速度を落としていた馬の速度が上がる。
「アリス。馬は走ってこそだ。その速度で練習しておけば大抵のことは対処できる。馬を信頼して」とアレクが言うと
「はい」とアリスが小さな声を出した。
『返事する余裕がでたか』とアレクは微笑んだ。
「歩いて鍛えたと思っていたけど、痛い」と朝食の席でアリスが言った。
「使う筋肉が違うからね。乗ってしまえばなんとかなるから大丈夫だ」とアレクが笑うと
「そうですか。楽しいけど馬がもうすこし動いてくれるといいですが」とアリスが言うと
「そうだな。まぁ練習。たくさん乗ることだな」とアレクが言うと
「それはそうでしょうけど・・・」とアリスが拗ねた。
それを見たデイビスとアレクは目交ぜして、ともに口元を緩めた。
翌日の朝食の席でアリスが
「昨日より痛い。楽しかったのに痛い」と言うと
「だってアリス。止めたのに乗り続けたじゃないか」とデイビスが言うと
「駈歩が楽しいからいけないのよ。なんだか馬が急にお利口になったし」とアリスが言うのを
「今日は三人で少し外に出てみましょう。馬を信頼していれば安心ですかね」とデイビスが言うと
「嬉しい。がんばらないと。たくさん食べておいたほうがいいですね」とアリスはパンにバターをたっぷり塗った。
「こんな場所があるんですね。片方が春で片方が冬だなんて」とアリスがため息混じりに言うと
「ここで見つかるとは思わなかった。なんでもありのこの国でもここまで極端になるのは珍しい」とアレクが言った。彼自身も目の前の景色に見とれている。
ここは天の山をぐるりと回ったところにある渓谷だ。下に川が流れている。
春と冬の移り変わりをみることが出来る場所として有名だ。そして今は特別だった。
「せっかくだからお弁当はここで食べましょう。少し早いですが」とデイビスが言うと
「いいですね。お弁当と聞いたらお腹が空いてきました」とアリスが返事をした。
馬たちはのんびり草を食べている。
お弁当は四角い入れ物に入っていて一人分ずつ箱に詰めてあった。
開けると大きなキッシュが二種類。アリスの分はちょっと小ぶりだった。あとは果物が添えられていた。
「このキッシュは美味いなぁ」とデイビスが言うと
「本当ですね。チーズが美味しいのでしょうか?」とアリスが言うと
「そうかもな」とアレクもうなずいた。
春と冬を同時に見て、キッシュだけと言う単純だけど美味しいものを食べた。
なぜか、アリスの心はこれですっきりした。一度家に戻って家族に別れを告げる。死んだことにして終わりにしない。自分の手で終わらせる。
前に二人に言ったのは強がりも入っていたが、アリスは自分の心をしっかりと見た。
帰りは馬たちが張り切って走りたがるのに任せてかなりの速さで駈けた。
最初は怖いと思ったアリスだが、前を行くアレクの背中を見ると怖さがなくなった。
アレクの背を見ていたらいつのまにか馬が並んだ。馬が合図を送って来た。走りたいらしい。
アリスはそれに答えた。馬はアリスの意を汲んで駆け出した。
アリスは馬と完全に意気投合して風を切った。
アリスが並んで来た。無理のないきれいな姿勢だと思ってる間に、先に行った。
先に行って振り返って手を振って来た。どこまで上手くなるんだ。だいたい、その馬はそこまで走れる馬じゃないぞ。
結局、宿までアリスは駈けたようだ。水を飲む馬を撫でている。
戻るときが来たな。そう思ったがアレクは戻りたくないと思った。
「速歩して」とアレクが指示をしてアリスが合図を送るが馬は並歩だ。ふっと笑ったアレクが
「速歩。はい」と言うと馬は軽くうなずいてゆっくりと速歩を始めた。
「力を抜いて。そうそう。はい」とアリスに声をかけると速度を落としていた馬の速度が上がる。
「アリス。馬は走ってこそだ。その速度で練習しておけば大抵のことは対処できる。馬を信頼して」とアレクが言うと
「はい」とアリスが小さな声を出した。
『返事する余裕がでたか』とアレクは微笑んだ。
「歩いて鍛えたと思っていたけど、痛い」と朝食の席でアリスが言った。
「使う筋肉が違うからね。乗ってしまえばなんとかなるから大丈夫だ」とアレクが笑うと
「そうですか。楽しいけど馬がもうすこし動いてくれるといいですが」とアリスが言うと
「そうだな。まぁ練習。たくさん乗ることだな」とアレクが言うと
「それはそうでしょうけど・・・」とアリスが拗ねた。
それを見たデイビスとアレクは目交ぜして、ともに口元を緩めた。
翌日の朝食の席でアリスが
「昨日より痛い。楽しかったのに痛い」と言うと
「だってアリス。止めたのに乗り続けたじゃないか」とデイビスが言うと
「駈歩が楽しいからいけないのよ。なんだか馬が急にお利口になったし」とアリスが言うのを
「今日は三人で少し外に出てみましょう。馬を信頼していれば安心ですかね」とデイビスが言うと
「嬉しい。がんばらないと。たくさん食べておいたほうがいいですね」とアリスはパンにバターをたっぷり塗った。
「こんな場所があるんですね。片方が春で片方が冬だなんて」とアリスがため息混じりに言うと
「ここで見つかるとは思わなかった。なんでもありのこの国でもここまで極端になるのは珍しい」とアレクが言った。彼自身も目の前の景色に見とれている。
ここは天の山をぐるりと回ったところにある渓谷だ。下に川が流れている。
春と冬の移り変わりをみることが出来る場所として有名だ。そして今は特別だった。
「せっかくだからお弁当はここで食べましょう。少し早いですが」とデイビスが言うと
「いいですね。お弁当と聞いたらお腹が空いてきました」とアリスが返事をした。
馬たちはのんびり草を食べている。
お弁当は四角い入れ物に入っていて一人分ずつ箱に詰めてあった。
開けると大きなキッシュが二種類。アリスの分はちょっと小ぶりだった。あとは果物が添えられていた。
「このキッシュは美味いなぁ」とデイビスが言うと
「本当ですね。チーズが美味しいのでしょうか?」とアリスが言うと
「そうかもな」とアレクもうなずいた。
春と冬を同時に見て、キッシュだけと言う単純だけど美味しいものを食べた。
なぜか、アリスの心はこれですっきりした。一度家に戻って家族に別れを告げる。死んだことにして終わりにしない。自分の手で終わらせる。
前に二人に言ったのは強がりも入っていたが、アリスは自分の心をしっかりと見た。
帰りは馬たちが張り切って走りたがるのに任せてかなりの速さで駈けた。
最初は怖いと思ったアリスだが、前を行くアレクの背中を見ると怖さがなくなった。
アレクの背を見ていたらいつのまにか馬が並んだ。馬が合図を送って来た。走りたいらしい。
アリスはそれに答えた。馬はアリスの意を汲んで駆け出した。
アリスは馬と完全に意気投合して風を切った。
アリスが並んで来た。無理のないきれいな姿勢だと思ってる間に、先に行った。
先に行って振り返って手を振って来た。どこまで上手くなるんだ。だいたい、その馬はそこまで走れる馬じゃないぞ。
結局、宿までアリスは駈けたようだ。水を飲む馬を撫でている。
戻るときが来たな。そう思ったがアレクは戻りたくないと思った。
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