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第5話 一人では行かないわよ マリカ目線

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侍女長がリックを衆人環視のなかで貶めていた。宰相もあほづらでそれを見ていた。他の連中はおもしろそうにそれを見ていた。

我慢できなくて、リックをかばい侍女長に甘えを謝罪した。

練習場に向かっているときに陛下がかけつけてくれた。
陛下の胸にすがって泣いた。理不尽に泣いた。陛下は侍女長を呼びつけると叱ってくれた。
「おまえはマリカに頭を下げさせたそうだな」
「いえ」と侍女長が反論しようとすると
「黙れ。マリカの身分はおまえの遥か上だ。わかっているのか」
「申し訳ありません」と侍女長が陛下に向かって言うと
「謝る相手が違うだろう」と陛下が言った。侍女長はわたしの方を向いて
「申し訳ありません」と言ったが、頭を下げなかった。
「陛下、わたくしは侍女長の教えを勘違いしていたようです。この国の謝罪の仕方を間違っておりました。さきほどのわたくしの謝罪は間違ったやり方でしたね。侍女長。しっかり覚えたいのでもう一度やって下さいな」と言うと侍女長は怒ったようだ。だが、それを抑えている。いつまで我慢できるかなって見てたら、陛下が

「マリカ、許してやれ。せっかく二人なのだ。侍女長はいないほうがいいと思うが」と言うと侍女長に手を振った。下がれと言う意味だ。

侍女長が出て行くと
「マリカ、会いたかった。遠目でもいいからと練習場に行くところなどを見ていたが、こうやって会いたかった」とわたしをぎゅっと抱きしめた。
「マリカ、帰りたい気持ちは大事だ。そしてマリカ。マリカの帰る場所はわたしであって欲しい。わたしはすぐそばにいる。決してマリカから離れない」

陛下にそう言われて抱きしめられると、安心できた。わたしを利用するものから守ってくれる。わたしが陛下の胸に頬をつけて
「陛下」と囁くと
「アンソニーだ。わたしの名前はアンソニーだ」
「愛称で呼ばれたことは、ありますか?」
「いや、ない」
「それではトニーと呼んでも」と言うと
「トニー。トニー」とつぶやき
「マリカの特別になった気がする。トニーいいなぁ」と続けた。
「トニー」と呼ぶと
「マリカ」と言う声に顔を上げると唇が落ちて来た。

わたしの世界に愛が戻って来た。この世界に来てよかったのかも知れない。あちらにいたら復讐だけを考えるつまらない生活になっていただろう。
この戦争を終わらせなくては・・・我が国の勝利で。


それからは力を抑えるのをやめた。魔法士長も聖女として形になったと認めた。
目に見えてほっとしていた。アドレナリンを放出させるだけなのに・・・
怪我を癒すと言っても自然治癒にかかる時間を早めてるだけなのに・・・この程度で。

いや、違うこの世界の者はこの程度が出来ないのだ。だからわたしのこの程度を求めたのだ。この程度でわたしをここに呼んだのだ。

あの動画が広まったときのあいつらの顔を見たかったのに・・・

トニーを愛するようになっても黒い気持ちはなくならない・・・仕方ない・・・もっと愛して愛されたら消えるよ。きっと!

そしてわたしが戦線に出る時に問題がでたのだ。

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