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6.突然の来訪者
しおりを挟む「お母さん、コハクと隣町まで野菜を売りに行ってくるね」
「いってらっしゃい、二人とも。いつもありがとね」
「行って参ります、お母様。無理はせずに安静に休んでいて下さい」
「そうだよ、お母さん。また無茶して台所に立たないでね? お母さんが倒れたら、私泣きまくっちゃうから」
「ふふっ、分かってるわよ」
ベッドの上で上半身を起こし、微笑んでいるのは私のお母さんだ。
黄金色の輝く長い髪にエメラルドグリーンの美しい瞳を持つお母さんは、今年で四十六歳になるけれど、相変わらずとても美人で。
現在は体調を崩してしまい、ベッドの上で生活をしているけど、お医者さんの話では命には別状はないとのことで安心した。
――ホークレイと別れてから六年が経ち、私は二十二歳、コハクは二十三歳になった。
私達は変わらずこの村で生活をしているが、年々税金の徴収額が高くなっており、苦しい生活が免れなくなっていた。
税金が上がっているのに、王族の暮らしは前と変わらず贅沢三昧らしく、国民達の不満も確実に上がっていっている。
そんな中でも、私達ハミルト家は、生活は細々ながらも仲良く幸せに暮らしていた。
「……奴がいなくなって、六年……。あれからリュシルカは益々お母様に似て輝くほどの美人になり、男性達の引く手数多だというのに、奴の言葉を信じてずっと待ち続けている……。健気で泣けますが、六年間も手紙も何も寄越さない薄情者のことなんかスッパリ忘れて、他の男性のもとに行ってもいいと思いますよ?」
隣町でいつものように野菜を完売させ、村に戻る途中でコハクが突然そんなことを言い、私は思わず笑ってしまった。
「ふふっ、ホントにね。私もよく待つなぁって自分でも感心しちゃうよ。先日村長さんにバッタリ会って少し話したけど、彼、城下町で元気に暮らしてるって。それを聞いて安心したよ。でも私、引く手数多なんかじゃないよ? それを言うならコハクの方がすごいじゃない。村の男性達の熱い視線がすごいよ?」
「それはリュシルカに向けられているものですよ。全く、自覚が無いのも困り者ですね」
「何よ、コハクの方こそ」
私達は顔を見合わせ、笑い合った。
「ね、コハク。私に遠慮しないで、良い人がいたらお付き合いして、結婚していいんだよ? 私はコハクの幸せな姿を見るのも幸せだから」
「……こんな公衆の場で泣かせるようなことを言わないで下さい。私はお母様とリュシルカと三人仲良く暮らせることが一番の幸せですから。でも、もしも良い人が出来たら、真っ先に伝えますよ」
「ふふっ。うん、楽しみにしてるよ」
「――あの、突然すみません。リュシルカ・ハミルトさん……ですか?」
不意に後ろから声を掛けられ、私達は同時に振り返った。
そこには、二十代半ばだろうか。翠色の跳ねた短髪に茶色の瞳を持ち、白銀の鎧を身に付けた騎士風の男性が立っていた。柔和な顔で、優しそうな雰囲気を醸し出している。
私達が怪訝な表情をしているのに気が付き、男性は慌てた様子で両手と首を振った。
「あっ! いえボク、怪しい者では決してありませんから!! ボクの名前はオズワルド・サイフォンと申します。ドヨナズク王国騎士団の副団長を務めさせて頂いています」
「この国の、騎士団の副団長……? そんなお方が、リュシルカに何か御用ですか?」
私の前に庇うように立ち、警戒心丸出しでオズワルドさんに尋ねるコハクに、彼はまた焦ったように両手をブンブン振って答えた。
「いえ! これは、そのっ、国王陛下の命令でして! 陛下の血を引く貴女を王城に連れて来い、と……」
「「は??」」
私達は同時に素っ頓狂な声を出した。
陛下の血を引く……? 私が王様の血を引いてるって? 一体何を言ってるのこの人は?
「あ! その顔、信じてないですね!? これは本当の話ですよ! しっかりと調べましたから間違い無いです! リュシルカ様は、国王陛下と、元踊り子であるイレーナ様との間に出来た子なのです!!」
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