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第三章 旅の魔女

第69話 もう一回!

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 師匠は、手を僕の方に向けながら高らかに告げました。ちなみに、テーブルの上のクッキーは、いつの間にか全てなくなってしまっています。おそらく、師匠があっという間に食べてしまったのでしょう。

 十枚以上あったはずなんですが……。

「ど、どうしてですか!?」

 旅人さんは、納得できないといった様子で尋ねます。そんな旅人さんに向けて、師匠はこう言いました。

「弟子君のクッキーの方が、甘くておいしかったから!」

 そう。師匠は、とんでもない甘党なのです。師匠が毎朝飲む紅茶には、角砂糖とミルクがたっぷり入っています。しかも、角砂糖の数は三つ。普通の人なら一つで十分なのですが、師匠に常識は通用しないのです。

「そ、そんな」

 旅人さんは、がっくりとうなだれました。旅人さんの長い桃色の髪が、顔を覆いつくすようにタラリと垂れます。これでもかというほど落ち込んでますね。薄々思ってはいましたが、旅人さんは、かなり負けず嫌いのようです。

「でも、あなたのクッキーもおいしかったよ。もっと甘さがあれば最高だったね」

「ううう……甘さ……ぐぐぐ」

 落ち込み方が……。

「こんなことじゃ……魔女として……魔女として……」

 悔しさを呟き続ける旅人さん。ですが、数秒後、ピタリとその呟きが止まりました。次の瞬間、旅人さんの体が、ブルブルと小さく震え始めます。一体どうしたというのでしょうか。

「もう一回!」

「え?」

「もう一回、お菓子作り勝負お願いします! 今度は、森の魔女さんと!」

 …………おや?
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