70 / 164
第三章 旅の魔女
第69話 もう一回!
しおりを挟む
師匠は、手を僕の方に向けながら高らかに告げました。ちなみに、テーブルの上のクッキーは、いつの間にか全てなくなってしまっています。おそらく、師匠があっという間に食べてしまったのでしょう。
十枚以上あったはずなんですが……。
「ど、どうしてですか!?」
旅人さんは、納得できないといった様子で尋ねます。そんな旅人さんに向けて、師匠はこう言いました。
「弟子君のクッキーの方が、甘くておいしかったから!」
そう。師匠は、とんでもない甘党なのです。師匠が毎朝飲む紅茶には、角砂糖とミルクがたっぷり入っています。しかも、角砂糖の数は三つ。普通の人なら一つで十分なのですが、師匠に常識は通用しないのです。
「そ、そんな」
旅人さんは、がっくりとうなだれました。旅人さんの長い桃色の髪が、顔を覆いつくすようにタラリと垂れます。これでもかというほど落ち込んでますね。薄々思ってはいましたが、旅人さんは、かなり負けず嫌いのようです。
「でも、あなたのクッキーもおいしかったよ。もっと甘さがあれば最高だったね」
「ううう……甘さ……ぐぐぐ」
落ち込み方が……。
「こんなことじゃ……魔女として……魔女として……」
悔しさを呟き続ける旅人さん。ですが、数秒後、ピタリとその呟きが止まりました。次の瞬間、旅人さんの体が、ブルブルと小さく震え始めます。一体どうしたというのでしょうか。
「もう一回!」
「え?」
「もう一回、お菓子作り勝負お願いします! 今度は、森の魔女さんと!」
…………おや?
十枚以上あったはずなんですが……。
「ど、どうしてですか!?」
旅人さんは、納得できないといった様子で尋ねます。そんな旅人さんに向けて、師匠はこう言いました。
「弟子君のクッキーの方が、甘くておいしかったから!」
そう。師匠は、とんでもない甘党なのです。師匠が毎朝飲む紅茶には、角砂糖とミルクがたっぷり入っています。しかも、角砂糖の数は三つ。普通の人なら一つで十分なのですが、師匠に常識は通用しないのです。
「そ、そんな」
旅人さんは、がっくりとうなだれました。旅人さんの長い桃色の髪が、顔を覆いつくすようにタラリと垂れます。これでもかというほど落ち込んでますね。薄々思ってはいましたが、旅人さんは、かなり負けず嫌いのようです。
「でも、あなたのクッキーもおいしかったよ。もっと甘さがあれば最高だったね」
「ううう……甘さ……ぐぐぐ」
落ち込み方が……。
「こんなことじゃ……魔女として……魔女として……」
悔しさを呟き続ける旅人さん。ですが、数秒後、ピタリとその呟きが止まりました。次の瞬間、旅人さんの体が、ブルブルと小さく震え始めます。一体どうしたというのでしょうか。
「もう一回!」
「え?」
「もう一回、お菓子作り勝負お願いします! 今度は、森の魔女さんと!」
…………おや?
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
声優召喚!
白川ちさと
児童書・童話
星崎夢乃はいま売り出し中の、女性声優。
仕事があるって言うのに、妖精のエルメラによって精霊たちが暴れる異世界に召喚されてしまった。しかも十二歳の姿に若返っている。
ユメノは精霊使いの巫女として、暴れる精霊を鎮めることに。――それには声に魂を込めることが重要。声優である彼女には精霊使いの素質が十二分にあった。次々に精霊たちを使役していくユメノ。しかし、彼女にとっては仕事が一番。アニメもない異世界にいるわけにはいかない。
ユメノは元の世界に帰るため、精霊の四人の王ウンディーネ、シルフ、サラマンダー、ノームに会いに妖精エルメラと旅に出る。
GREATEST BOONS+
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだし、規格外のインベントリ&ものづくりスキルを使いこなす! ユニークスキルのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅する、ほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能、「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です!
ぼくとぼくたち
ちみあくた
児童書・童話
大好きなおばあちゃんが急な病気で亡くなり、明くんへ残してくれたもの。
それは、山奥で代々守られてきたという不思議な鏡でした。
特別なおまじないをし、角度を付けて覗くと、鏡の中には「覗いた人」の、少しだけ違う姿が映し出されます。
人生の様々な場面で、「覗いた人」が現実とは違う選択をし、違う生き方をした場合の姿を見ることが出来るのです。
おばあちゃんは、鏡の中にいる自分と話したり、会ったりしてはいけない、と言い残していました。
でも、ある日、その言いつけを破ってしまった事から、明くんは取り返しのつかないトラブルへ巻き込まれてしまうのです……
エブリスタ、小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しております。
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
蒼の勇者と赤ランドセルの魔女
喜咲冬子
児童書・童話
織田リノは中学受験をめざす小学5年生の少女。
母親はファンタジー作家。今は〆切直前。今回の物語はアイディアを出すのを手伝ったので、リノは作品の完成を楽しみにしている。
まだ神様がいたころ。女神の末裔として生まれた少女ミンネが、島の危機を救う話だ。
――ミンネの兄は、隣村のドラドの陰謀により殺された。島の守り神の竜は怒りを示し、荒ぶる神に変じてしまう。
ミンネは、かつて女神が竜と結んでいた絆を取り戻すため、蒼き血をもつ者として、魔女の宝玉を探すことになった。
魔女は、黒髪黒目の少女で、真っ赤な四角い袋を背負っているという――
突然、その物語の主人公・ミンネが、塾の準備をしていたリノの目の前に現れた。
ミンネは、リノを魔女と呼び、宝玉が欲しい、と言い出した。
蒼き血の勇者と、赤ランドセルの魔女? の冒険が、今はじまる。
花束は咲良先生に(保育士)
未来教育花恋堂
児童書・童話
新米保育士の奮闘記です。子ども理解を大切にし、先輩保育士と対立しながらも子どもの成長を願って自分なりの考えを確立していきます。恋の行方が気になる内容となっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる