大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot

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第二章 郵便屋さん

第51話 一回だけならね

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「疲労抑制の魔法……ですか?」

「そう」

 ゆっくりと頷く師匠。どこからともなく杖を取り出し、ベッドで眠る郵便屋さんに向けます。数秒後、杖の先にとある模様が現れました。模様の形は円。円の中央には六芒星。それを取り囲むように、たくさんの文字。その正体は、いつかの水質調査でも見た魔法陣。

 それは、対象にかけられている魔法が、どんな構造でできているかを表したもの。つまり、今、師匠の杖の先に現れた魔法陣は、郵便屋さんにかけられた魔法の構造を表しているというわけです。

「さっきまで、この子の体には、疲労抑制の魔法がかけられてた。この子が倒れちゃったのは、その魔法の効果が切れたからだね」

 疲労抑制の魔法。魔法をかけられた者は、いかに疲労し、体が動かない状態であったとしても、それを忘れて体を動かすことができます。また、体に感じる痛みやその他の苦しみも軽減してくれるのです。とても便利な魔法。だからこそ、僕自身も使ったことがあります。

 ですが、当然、デメリットも存在します。それは、疲労を回復するわけではないということ。魔法が切れると、溜まっていた疲労、痛み、苦しみが一気に押し寄せてくるのです。

「で、でも、魔法が切れただけでこんなふうになりますかね。僕だって同じ魔法を使ったことありますけど、さすがに倒れたりまではしませんでしたよ。せいぜい、体が重くなって頭痛がする程度で……」

 僕の言葉に、師匠は首を左右に振りました。僕は、何か間違ったことを言ってしまったのでしょうか。

「一回だけならね」

 師匠が放った一言。それが何を意味しているのか、僕にはすぐに分かりました。

「……師匠」

「なに?」

「この魔法、一日二回以上かけると、効果が切れた時に危険って聞いたことあります」

「そうだよ」

「郵便屋さんの体、何回、魔法がかかってるんですか?」

 師匠は、魔法陣をじっと見つめます。そして数秒の沈黙の後、こう告げました。

「今日だけで四回」
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