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第二章 シャインブレイド

3:イーサンと草原にて①

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アダムとお茶をした日の午後、アシュリーはセリーナに尋ねた。

「セリーナ様、イーサン殿下はいつがお手すきなのでしょうか?」

「!? ゴホホッ……」

「だっ、大丈夫ですか!?」

急なアシュリーの問いに、セリーナは慌てすぎて盛大に自分の唾液でむせた。

「ゴホッ……なっ、何故私に聞くの!?」

「あっ、申し訳ありません。セリーナ様ならご存知かと思いまして……」

「だから何故!?」

顔を真っ赤にしているセリーナに、アシュリーは(しまった)と思う。

(つい、イーサン殿下のことはセリーナ様が詳しいかと思って尋ねてしまったわ……)

「えっと……セリーナ様は、色々と物事にお詳しいので……」

アシュリーは苦し紛れにそう言ったが、セリーナはそれ以上突っ込んでくることはなくホッとした。

「……イーサン殿下は、一日中城内に居る日は昼食は空いた時間に一人で、訓練場の近くの小高い草原で召し上がられることが多いわ……。12~14時の間に……」

ほんのり頬を赤らめてそう言うセリーナに、アシュリーの心もほんのり温かくなる。

(きっと何度も、こっそり覗きに行かれたのね……)

「そうなんですね! ありがとうございます」

アシュリーは深く問うことはせずに、お礼だけを伝えたのだった。




エリザベスに、イーサンが近々一日城内に居る日がわかれば教えて欲しい旨を伝えた。
すると、翌日がその日だということがわかった。



翌日、アシュリーは快晴の空を見て呟く。

「良い天気ね。きっと、いつも通り草原で昼食をとられるわよね」

アシュリーは再びセリーナに尋ねた。

「セリーナ様、陛下からのおつかいがあってイーサン殿下に会いに行きたいのです。昨日教えていただいた場所を、具体的に教えていただけますか?」

顔を強張らせているセリーナを見て、アシュリーは慌ててつけ足す。

「あっ、本当にただのおつかいです! セリーナ様の危惧されているようなことは、100%生じておりません!!!」

真っ直ぐにセリーナの目を見て言うアシュリーに、セリーナはホッと息を吐いてから、場所を教えてくれたのだった。

セリーナは更に、その場所の様子が伺いやすい場所まで教えてくれた。
城の西部に見渡しの良いバルコニーがあり、そこからその草原が見えるのだ。

きっとイーサンも気づいてはいないだろう。
セリーナは時折、その場所でイーサンを見つめているであろうことに……

アシュリーは12時前から、そのバルコニーからジッと草原を眺めていた。
すると13時を回った頃、イーサンが姿を現したのだ。
アシュリーは全力で走った。
その草原まで、走っても15分ほどかかるのだ。

(どうか、ゆっくり召し上がっていて下さい!)

そう願いながら、走ったのだった。
幸い城の外れで人に見られることはなかったため、城内を走っていることに注意を受けることはなかった。

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