34 / 63
第四章 会えない時間
8:スターリンとの再会(sideキャサリン)
しおりを挟むスターリンはリリカを見送り踵を返すと、30m程先にキャサリンが立っていた。
スターリンは思わず、口角をフッと上げた。
「……久しぶりだな」
スターリンの声はキャサリンの耳に届いたが、眉を下げてショックを受けているキャサリンには、内容は届かなかった。
そしてつい先程の、自分へ向けられた笑顔も見逃していた……
「何故ですか?」
「何がだ?」
微動だにせずに固まったまま、瞬きも忘れて言うキャサリンの第一声に、スターリンは険しい表情となる。
(せっかく久しぶりに会えたのに、このようなことを言ってはいけないわ……)
キャサリンはそう思いながらも、スターリンの顔を見ていると、口が勝手に言葉を紡ぐのだ。
「……何故、私よりも先にお姉様と会って、そのように楽しそうに会話をなさっているのですか?」
「えっ……? 偶然会っただけだが?」
「それでもです!」
(もう嫌……。ずっと我慢していたのに、止まらないわ……)
キャサリンは目からハラハラと涙を零しながら、大声で言った。
「……本当は、私よりもお姉様のほうが良いと思っているのではありませんか? ウィリアム様との話がなくなったお姉様のことを、良いと思っているのではありませんか!?」
「……そのようなことがある訳ないだろう?」
「本当はこっそり、手紙のやり取りをしていたのではありませんか!?」
「……していない」
仲の良いリリカとスターリンの姿に不安を抱いていた時に流行病が流行り出し、キャサリンは密かにずっとスッキリしない日々を過ごしていた。
一年に渡るそんな日々は、キャサリンの心を疲弊させ蝕んだ。
久しぶりにスターリンに会えると楽しみにしていたキャサリンは、馬車が到着するのを、今か今かと窓から覗きながら待ち詫びていたのだ。
そして到着するとすぐに、小走りで出迎えに行った。
すると、そこにいた久しぶりに見るスターリンは、リリカに優しい顔で話し掛けているではないか。
リリカから聞いた、手紙のやり取りはしていないと言う言葉を信じていたキャサリンは、流行病により2人の接点が無くなったことを喜んでいたのに……
(スターリン様、笑っていたわ……)
今キャサリンの目の前にいるスターリンは、先程リリカと話していた時よりも随分と表情が固い。
それはもちろん今の会話内容が原因なのだが、キャサリンにはそのようなことを考える余裕はない。
疑心暗鬼に陥っていたキャサリンは、今まで我慢していた不安や嫉妬心が一気に爆発してしまったのだ……
こうなるともう、誰にも……自分自身にも、手が付けられない。
「キャサリン! 一体どうしたと言うの!」
キャサリンの大声を聞きつけて、ローズが走って来た。
「放っておいて!」
キャサリンはローズを振り切り、走り去る。
あとを追おうとしたスターリンの前には、ローズが立ちはだかる。
「キャサリンを泣かせた者に、あとなど追わせません! すぐにこの屋敷から出て行きなさい!」
「キャサリンの誤解を解かなければなりません。追わせて下さい。お願いします」
「なりません!!! ここは私の屋敷です。今すぐ立ち去りなさい!」
ローズに鋭い目つきで睨まれたたスターリンは、警備に両脇を抱えられ、退散するほかなかった……
"コンコン"
「キャサリン、大丈夫?」
ローズは部屋に籠っているキャサリンを訪室するも、部屋にすら入れて貰えなかったのだった……
107
あなたにおすすめの小説
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。
冷淡姫の恋心
玉響なつめ
恋愛
冷淡姫、そうあだ名される貴族令嬢のイリアネと、平民の生まれだがその実力から貴族家の養子になったアリオスは縁あって婚約した。
そんな二人にアリオスと同じように才能を見込まれて貴族家の養子になったというマリアンナの存在が加わり、一見仲良く過ごす彼らだが次第に貴族たちの慣習や矜持に翻弄される。
我慢すれば済む、それは本当に?
貴族らしくある、そればかりに目を向けていない?
不器用な二人と、そんな二人を振り回す周囲の人々が織りなすなんでもない日常。
※カクヨム・小説家になろう・Talesにも載せています
最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。
幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。
一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。
ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。
お姉様のお下がりはもう結構です。
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。
慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。
「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」
ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。
幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。
「お姉様、これはあんまりです!」
「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」
ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。
しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。
「お前には従うが、心まで許すつもりはない」
しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。
だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……?
表紙:ノーコピーライトガール様より
好きでした、婚約破棄を受け入れます
たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……?
※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。
Short stories
美希みなみ
恋愛
「咲き誇る花のように恋したい」幼馴染の光輝の事がずっと好きな麻衣だったが、光輝は麻衣の妹の結衣と付き合っている。その事実に、麻衣はいつも笑顔で自分の思いを封じ込めてきたけど……?
切なくて、泣ける短編です。
背徳の恋のあとで
ひかり芽衣
恋愛
『愛人を作ることは、家族を維持するために必要なことなのかもしれない』
恋愛小説が好きで純愛を夢見ていた男爵家の一人娘アリーナは、いつの間にかそう考えるようになっていた。
自分が子供を産むまでは……
物心ついた時から愛人に現を抜かす父にかわり、父の仕事までこなす母。母のことを尊敬し真っ直ぐに育ったアリーナは、完璧な母にも唯一弱音を吐ける人物がいることを知る。
母の恋に衝撃を受ける中、予期せぬ相手とのアリーナの初恋。
そして、ずっとアリーナのよき相談相手である図書館管理者との距離も次第に近づいていき……
不倫が身近な存在の今、結婚を、夫婦を、子どもの存在を……あなたはどう考えていますか?
※アリーナの幸せを一緒に見届けて下さると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる