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第五章 キャサリンとスターリン

2:病に伏すキャサリン

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リリカはすぐにスターリンへ会いに行き、ことの顛末を説明した。
スターリンはこれから仕事のため、翌日の仕事終わりに訪問すると言った。

しかしその翌日、キャサリンは高熱を出して寝込んでしまい、二人が会うことは叶わなかったのだ……




使用人の体調不良が、キャサリンにうつってしまったのだった。
最近、華奢な体が更に細くなりやつれていたキャサリンは、それでなくても病弱なのにも関わらず、更に身体の抵抗力が落ちていた。

原因不明の高熱が三日間続き、医者はある薬を試した。
すると、症状は徐々に軽快へ向かったのだ。

「ブルーム伯爵家のウィリアムとは、懇意にされていましたよね?」

「えっ? ええ、まあ……」

父リチャードは、急に出て来た名前に戸惑いながらリリカを見る。
リリカは何も言わずに、目の前のベッドに横になっているキャサリンを心配そうに見ていた。
そのベッド横には、膝をついてキャサリンの手を握っているローズがいる。

「この薬は、ウィリアムが研究所へ就職してすぐに手掛けたものだそうです。この病は二年前までは薬がなくて、自然に症状がおさまるのを待つしかなかったのです。その過程で力尽きる者もいました……」

医者の言葉にレッドフィールド伯爵家一同は驚いた。
リリカは目を見開き、大きくあいた口を両手で塞いでいる。

(ウィリアム様……!? 凄い、凄すぎます……! やはり、研究を続けられるべきです!!!)

目を潤ませているリリカの横で、リチャードはボソッと言った。

「ウィリアムに感謝せんとな……」

「ええ、感謝しないと。そして、キャサリンとの婚姻を認めましょう? キャサリンの命を救ってくれたのですもの。ねえ、あなた」

「ああ、ウィリアムも望むのならば、そうしよう。ウィリアムが帰国次第、こちらから出向こう」

リリカの感動の涙は一気に引っ込む。

「お父様、待って下さい! キャサリンがこの間言っていたことは、キャサリンの本心ではありません!」

「リリカ、見苦しいわよ。あなたがスターリンを横取りしたのでしょう? ウィリアムに捨てられたからって、本当に……」

「ローズやめないか。人の心はどうにもならないさ。それに、キャサリンがウィリアムと結婚したいと言っているのなら、別に良いではないか」

ローズから話を聞かされたリチャードとローズの間では、スターリンはリリカのことが好きで、キャサリンはウィリアムが好きだということになってしまっていた。

(駄目だわ。私の話は一切聞いて貰えない……)

リリカは、キャサリンの回復を待つより他なかった。

こうしてウィリアムの知らないところで、そしてリリカのことは一切無視で、勝手にこのような話の流れになってしまっていたのだった……




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