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第三章 決意と変化
9:嫉妬 (sideキャサリン)
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「スターリン様、お久しぶりです。最近は何か変わったことはありませんでしたか?」
スターリンは、リリカを訪問した10日後にキャサリンを訪ねて来た。
キャサリンと会うのは約二週間ぶりだった。
「いや、特に変わったことはない。キャサリンは何かあったか?」
スターリンのその返答にキャサリンの顔は一瞬曇ったが、すぐに笑顔を浮かべる。
「……私自身には変わったことはありませんが、最近、姉の様子が変なのです」
「リリカが?」
キャサリンは、スターリンの表情が興味の色を示したのを見逃さなかった。
スターリンが他人にこのような反応を示すのは、とても珍しいことだった……
「……はい。毎食後に散歩をしたり、他にも運動をしたりもしているようです。失恋をしたはずなのに、なぜか以前よりも活き活きとしているように見えます」
「ははっ、そうか。それは良いことだ」
キャサリンは目を見開く。
スターリンが少し笑ったのだ。
「……随分と楽しそうですね……?」
キャサリンはそう聞いてから、「しまった!」というような顔で、咄嗟に下を向いて口元を抑えた。
(嫌味ったらしい、嫌な女になってしまう!!!)
スターリンは、そんなキャサリンの様子には気付かずに答える。
「いや、そのようなことはない。失恋がきっかけだとしても、変わろうと努力をするのは良いことだと思う」
穏やかな表情で言うスターリンに、キャサリンは再び目を見開く。
キャサリンは”ギュッ”と唇を噛んだ。
そして、言うつもりのなかったことが口を突いて出てしまった。
「先日、スターリン様がお姉様と、随分と親しそうに話をされているのを見ました」
「ああ、見られていたのか。ならば声を掛ければ良かったな。あの日は時間がなかったのだ。キャサリンに声を掛けずに帰ってしまい、すまなかった」
「時間がない中、お姉様に会いに来られたのですか?」
キャサリンは自分の声が冷たいことに気付いてはいたが、どうにも出来なかった。
「ああ、用があったのだ」
「お姉様に用事があったのですか?」
「ああ、そうだ」
「それは、何ですか?」
「……」
スターリンが無言になったことで、押し問答がそこで一旦止まる。
いつも笑顔のキャサリンが珍しく塞ぎ込んだ表情をしていることに、鈍いスターリンはようやく気づく。
「あ、すまない。ただ個人的なことだから、言っても良いものなのか……」
スターリンのその言葉は納得できる。
(ああ、本当に真面目なのだから……)
しかし、キャサリンは悲しい気持ちになった。
スターリンが、キャサリン以外の異性に興味を抱いているのを初めて見たのだ。
何も言わずに暗い顔をしているキャサリンに、スターリンは言う。
「……嫉妬というやつか?」
その言葉にキャサリンは、真っ白な肌を一気に赤く染めて狼狽えた。
「えっ……ちがっ……」
咄嗟に出た否定の言葉だったが、全く説得力はない。
「キャサリンのお姉さんだから、大切にしたいと思ったのだが?」
「えっ?」
驚いてスターリンの顔を見たキャサリンは、更に驚く。
先程リリカに向けていた笑顔と同じ程度の微笑みだが、キャサリンを真っ直ぐに見るその瞳は、とても穏やかで優しかった。
キャサリンは胸が高鳴るのを感じる。
「……コホンッ。そうですか。これからも、姉妹ともどもよろしくお願いいたします」
キャサリンはひとつ咳払いをし、恥じらいを誤魔化すようにそう言ったのだった。
しかしキャサリンは、すぐに自分のこの言葉を後悔することとなる……
スターリンは、リリカを訪問した10日後にキャサリンを訪ねて来た。
キャサリンと会うのは約二週間ぶりだった。
「いや、特に変わったことはない。キャサリンは何かあったか?」
スターリンのその返答にキャサリンの顔は一瞬曇ったが、すぐに笑顔を浮かべる。
「……私自身には変わったことはありませんが、最近、姉の様子が変なのです」
「リリカが?」
キャサリンは、スターリンの表情が興味の色を示したのを見逃さなかった。
スターリンが他人にこのような反応を示すのは、とても珍しいことだった……
「……はい。毎食後に散歩をしたり、他にも運動をしたりもしているようです。失恋をしたはずなのに、なぜか以前よりも活き活きとしているように見えます」
「ははっ、そうか。それは良いことだ」
キャサリンは目を見開く。
スターリンが少し笑ったのだ。
「……随分と楽しそうですね……?」
キャサリンはそう聞いてから、「しまった!」というような顔で、咄嗟に下を向いて口元を抑えた。
(嫌味ったらしい、嫌な女になってしまう!!!)
スターリンは、そんなキャサリンの様子には気付かずに答える。
「いや、そのようなことはない。失恋がきっかけだとしても、変わろうと努力をするのは良いことだと思う」
穏やかな表情で言うスターリンに、キャサリンは再び目を見開く。
キャサリンは”ギュッ”と唇を噛んだ。
そして、言うつもりのなかったことが口を突いて出てしまった。
「先日、スターリン様がお姉様と、随分と親しそうに話をされているのを見ました」
「ああ、見られていたのか。ならば声を掛ければ良かったな。あの日は時間がなかったのだ。キャサリンに声を掛けずに帰ってしまい、すまなかった」
「時間がない中、お姉様に会いに来られたのですか?」
キャサリンは自分の声が冷たいことに気付いてはいたが、どうにも出来なかった。
「ああ、用があったのだ」
「お姉様に用事があったのですか?」
「ああ、そうだ」
「それは、何ですか?」
「……」
スターリンが無言になったことで、押し問答がそこで一旦止まる。
いつも笑顔のキャサリンが珍しく塞ぎ込んだ表情をしていることに、鈍いスターリンはようやく気づく。
「あ、すまない。ただ個人的なことだから、言っても良いものなのか……」
スターリンのその言葉は納得できる。
(ああ、本当に真面目なのだから……)
しかし、キャサリンは悲しい気持ちになった。
スターリンが、キャサリン以外の異性に興味を抱いているのを初めて見たのだ。
何も言わずに暗い顔をしているキャサリンに、スターリンは言う。
「……嫉妬というやつか?」
その言葉にキャサリンは、真っ白な肌を一気に赤く染めて狼狽えた。
「えっ……ちがっ……」
咄嗟に出た否定の言葉だったが、全く説得力はない。
「キャサリンのお姉さんだから、大切にしたいと思ったのだが?」
「えっ?」
驚いてスターリンの顔を見たキャサリンは、更に驚く。
先程リリカに向けていた笑顔と同じ程度の微笑みだが、キャサリンを真っ直ぐに見るその瞳は、とても穏やかで優しかった。
キャサリンは胸が高鳴るのを感じる。
「……コホンッ。そうですか。これからも、姉妹ともどもよろしくお願いいたします」
キャサリンはひとつ咳払いをし、恥じらいを誤魔化すようにそう言ったのだった。
しかしキャサリンは、すぐに自分のこの言葉を後悔することとなる……
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