気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

文字の大きさ
上 下
112 / 129
閑話

112 辺境伯会議・前編

しおりを挟む
 というわけで、辺境伯会議だ。
 俺の前には北東・北西・西・南の4人の辺境伯がテーブルについている。
 ちなみに辺境伯会議は王都で開催ということで、連れてきたレナはローズマリー嬢のところに置いてきた。
 というか、ローズマリー嬢が離さなかったので、泣く泣く置いてきたという方が正しいか?

「ほうほう、新しく南東辺境伯に叙されたのは随分と可愛らしいお子様じゃの」

 真っ先に声をかけてきたのは北西辺境伯のヴァルター・フォン・ハーヴェイ。
 御年50の男性で、四辺境伯……いや、俺も加わったから五辺境伯か……の中では最高齢だ。

「いやいや、ハーヴェイ老。舐めてはなりませんよ。彼はこれでもダンジョン攻略者ですから」

 次は北東辺境伯のノルベルト・フォン・レナー。メーリング領を挟んでいたとはいえ、ウチとはお隣さんの辺境伯領だな。
 レナー辺境伯には息子がいて、エルメライヒ公爵に聞いた話によるとローズマリー嬢の婚約者候補筆頭なのだとか。

「辺境伯の中では最年少だったのに、お株を奪われたわね」

「いや~、そもそも僕は何の実績もないですからね~。最底辺は変わらず僕でしょう」

 先に話したのが南辺境伯のクラウディア・フォン・リーゲル。五辺境伯の中で唯一の女性辺境伯で、ゲルハルディ家の元々の主家だった辺境伯だ。
 南辺境伯は元々ゲルハルディ領にいたが、南大陸と接している土地のほうが有効だとして、ゲルハルディ領をご先祖様に託して、現在の南辺境伯領に移ったとされている。

 で、そのリーゲル辺境伯に話しかけられたのが、西辺境伯のエーリッヒ・フォン・シュミット。
 陛下から聞いた限りでは最近、西辺境伯を継いだばかりということで、まだまだ実績というものがないらしい。

「皆様はじめまして。この度、南東辺境伯に就任しましたマックス・フォン・ゲルハルディです」

「あまり固くなるな。それよりも大きくなったな」

「お久しぶりです、ノルベルト様」

「様付けもいらん。これまでは下位だったが、これからは同格だ。ハーヴェイ老はともかく、若手3人は名で呼び捨てだ」

「いや~、僕はハーヴェイ老はもちろん、ノルベルトさんもクラウディアさんも呼び捨てにできませんけどね」

「ノルベルトはともかく、私なんて6歳しか違わないし、呼び捨てでもいいじゃない。……あと、マックス。丁寧な話し方もしなくていいから」

 は~、最初からあっけに取られてしまうな。
 まあ、親交のあるノルベルトが父上とざっくばらんに話していたことがあるから、衝撃とまではいかないが、辺境伯同士はこんな感じみたいだな。

「は~、わかりまし……わかった。若輩というか、何も知らないから面倒をかけると思うが、よろしく」

「ああ、そんな感じでいいぞ」

「儂はそろそろ引退じゃから、そう長くはないがよろしくの」

「よろしくね」

「こちらこそよろしく~」

「で、ペーペーの新人からお土産というか、お近づきのしるしを持ってきたので、受け取ってもらえるか?」

「ほう。陛下からゲルハルディ領は特産品が出来てるという話は聞いてるんだよな」

「じゃあ、持ってきてもらおうか」

 俺が合図をすると、それぞれの侍従や侍女が入ってきて、それぞれの前にウイスキーボンボンとカレーを提供していく。
 ざっくばらんな態度な辺境伯だが、流石に提供されたものにいきなり手を出すということはなく、俺の説明を待っている。

「平たい皿に乗っているのがウイスキーボンボン、平たく言えばウイスキーが中に入ったチョコレートだ。深皿の方が香辛料を使ったスープで、付け合わせのパンと一緒に食べてほしい」

 説明だけだと不十分というか、毒味がいるので俺が真っ先に手を付けることになる。
 家族や……なぜか陛下や宰相閣下も毒味なしで食べていたが、あれは例外だ。

「カレーの方は普通に食べるが、ウイスキーボンボンの方の毒味は1つで勘弁してほしい」

「? なぜだ?」

「未成年なので。そこまでの量は入っていないが、成長期に入る前に酒はあんまり体に入れたくない」

「「「「あっ!」」」」

 ? なんか皆して「そうだった!」みたいな顔になってるんだが?

「そういや、未成年だったな」

「儂らの無茶ぶりにも直ぐに対応してきたからの」

「体は確かに未成年よね」

「いや~、なんか年上のような気がするんすよね~」

「はあ、まあ何でもいいが、そういうことだから」

 まったく、みんなは俺をなんだと思ってるんだか。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

乙女ゲームはエンディングを迎えました。

章槻雅希
ファンタジー
卒業パーティでのジョフロワ王子の婚約破棄宣言を以って、乙女ゲームはエンディングを迎えた。 これからは王子の妻となって幸せに贅沢をして暮らすだけだと笑ったゲームヒロインのエヴリーヌ。 だが、宣言後、ゲームが終了するとなにやら可笑しい。エヴリーヌの予想とは違う展開が起こっている。 一体何がどうなっているのか、呆然とするエヴリーヌにジョフロワから衝撃的な言葉が告げられる。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様・自サイトに重複投稿。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

落ちこぼれ公爵令息の真実

三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。 設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。 投稿している他の作品との関連はありません。 カクヨムにも公開しています。

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

処理中です...