気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

文字の大きさ
78 / 140
幼少期

78 レナを連れてきた理由

しおりを挟む
 ゲルハルディ領周辺を周る旅が始まるのだが、まずはゲルハルディ領の北東にあるカレンベルク、そしてその東のエンケ、その後にエンケの南にあるバルディ、最後にバルディの南にあるヒッペに行くことになっている。
 周る領は4つだから、ちょうど季節ごとに周っていく感じで、春にはカレンベルク、夏にはエンケ、秋にはバルディ、冬にはヒッペに行くことになる。

 中ボス悪役令息になる未来を変えるだけならば、バルディ領に行くだけでいいのでは? と思う人もいるだろうが、破滅を回避した後も俺の人生は続くんだ。
 ゲルハルディ領の領主になることを考えれば、他の領を蔑ろにすることは避けたいし、そもそもバルディ領の領主一族であるレナと婚約した時点で他の領は不満に思っているはず。
 だからこそ、こういう時にはすべての領を平等に周って、ゲルハルディ領はすべての領に対して平等だとアピールする必要があるわけだな。

「で、マックス様、どうしてレナ様を一緒に連れて行くのですか?」

「私も不思議に思っていました、どうしてですか?」

 クルトとレナが俺に質問してくるが、なんでって出発前に教えただろうが。

「レナを連れて行くのはハニートラップを避けるためだって。ゲルハルディ領内ではある程度、敬われているが、他じゃ何をされるかわからないからな」

「でも、それ建前ですよね?」

「マックス様なら簡単にかわしそうですけど」

 クルトもレナも俺の本心はそうじゃないだろうと、決めつけて話してくるが酷くないか?
 俺にだって裏表のない気持ちで行動することがあってもいいじゃないか!
 ま、今回に関しては裏の思惑はあるにはあるんだがな。

「……本当に本音を聞きたいのか?」

「「はい」」

 ま、二人も覚悟が決まっているようだから答えるか。

「最近レナがフィッシャー嬢の影響を受けすぎだから隔離の意味を込めて連れていくことにしたんだよ」

「レナ様?」

「私……ですか?」

「そう! 別にレナとフィッシャー嬢が仲良くすることに問題はないけど、最近はボディータッチとか令嬢らしからぬ距離感の態度が増えてきてたからね」

 そう、フィッシャー嬢は平民だから貴族よりも距離感が近くて、その影響を受けたレナも俺との距離感がおかしくなってきているのだ。
 前世の記憶のある俺にとっては別に問題ないっちゃないが、将来貴族学園に入学することを考えたら貴族としての距離感も再認識してもらわないと困る。

「距離感……近かったでしょうか?」

「そこで、疑問に思う時点で相当フィッシャー嬢の影響を受けていると思うよ。最近じゃお茶会の度に俺を挟んで二人が両隣に座ってくるけど有り得ないから」

「……」

「私的なお茶会とはいえ未婚の男女がテーブルの上で手を重ねるのもないから」

「……」

「ふむ、その通りなら確かにマックス様の言う通り距離感が近いですね」

「だろ? 平民ならそれくらいは普通かもしれないけど、俺とレナは貴族だからね。他の貴族の前でもそういう態度を取ったら排斥されかねないし」

「まあ、お二人ともまだ小さいですからほほえましい目で見られるかもしれませんが……」

「だとしても、政敵にとってはまたとないチャンスだからね。そういう隙は減らすようにしないと」

「……申し訳ありません、マックス様。……浮かれていたようです」

「うん、俺もレナにそこまで強く怒るつもりはないけどね。この旅で貴族としての態度を思い出してくれれば大丈夫だよ」

「はいっ」

 まあ、レナも元々7歳にして領主夫人としての教育をほとんど終えているくらい優秀だから、直ぐに態度は戻るだろう。
 それに本当の理由はまた別にあるしな。

 俺がレナを旅に連れてきた本当の理由は、バルディ領が襲われることと関係がある。
 ゲーム上では王都にいるレナに対して手紙を出そうとしたレナの伯父が、ゲルハルディ領に赴いているときにバルディ領が襲われる。
 領主不在の隙をついたということと、領主がいないことによる伝達の不備でバルディ領への救援が遅くなったというわけだ。

 俺はシナリオの修正力なんて信じていないが、仮にレナをゲルハルディ領に置いてきた場合、レナの伯父である領主が襲撃直前にゲルハルディ領に来るかもしれない。
 そうなった場合に、バルディ領は劣勢に立たされる危険性が高くなるから、あえてレナも一緒に旅に連れていくことでレナの伯父がバルディ領から離れないようにしたってわけだ。

 まあ、未来は不確定だから、ここまでしても思いもよらないことで予定が狂うこともあるだろうが、打てる手はすべて打っておかないとな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

処理中です...