気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

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幼少期

34 現状把握

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「で、何か言い訳はあるのでしょうね?」

 クルトたちを解散させた後、母上とレナと共に執務室までやってきた俺だが、目の前には静かな怒りを滾らせた母上がいる。
 俺にとっては必要なことだったし、こうして無事なのだからそこまで怒らなくても……という思いと、100年も未踏破だったダンジョンに自分の息子が勝手に挑めばこうなるか……という思いがある。

「……言い訳というか、本当に成り行きだったのですよ。たまたま、野営場所の周囲を見回っていたらダンジョンを発見したという」

「それでも、貴方ひとりが危険を冒す必要はなかったでしょう」

「もちろん、私の力で踏破できないと判断した場合には即座に戻るつもりでした。……ですが、手持ちのアイテムの相性も良く、踏破できたので、した。それだけですよ」

「……アイテム、ですか?」

「はい、アイテムの入手はクルトたちも知っています。途中に立ち寄った町で売っていた殺虫剤なのですが、その街の近辺では虫型モンスターが多発していて強力なものを試作していたそうです」

「……試作品」

「道中の野営などで試すこともあるからと、使用後にレポートを送るという条件で在庫の半分ほどを譲ってもらいました。……あ、もちろん、代金は支払っていますよ」

「それは当然です。……で、効いたのですか?」

「ダンジョン内には虫型のモンスターしか出現しなく、私が出会ったモンスター全てに効果が確認できました」

「なるほど……踏破後の処理は?」

「攻略者の情報、内部モンスターの情報は冒険者組合経由で公表、攻略報酬は秘匿……ダンジョンの講評基準はゲルハルディ領内の者はレベル25以上、それ以外は30となっています」

「ふむ、妥当……ですね」

「というより、こういう話は父上がいる場ですべきでは?」

 母上がこの領の実質的な支配者となってはいるが、それでも領主は父上だ。
 父上抜きで話を進めても仕方がないという一面もあるのだが……。

「はあ、クラウスは貴方のせいで王都から戻っていませんよ」

「ん? というか、父上はダンジョン攻略時に王都にいたのですか?」

「ええ、陛下にミネッティ伯爵家との婚約が成らなかった件と、レナと婚約した件を報告にね」

 ああ、なるほど。そりゃ、ここに父上がいないのもうなずける話だ。
 この国ではダンジョン攻略は100年ぶり、だからこそゲーム内で主人公がダンジョンを攻略した際には勇者として祭り上げられるのだが、その立役者の父親が王都にいればいろいろとやらなければならないことが多いのだろうな。

「父上から何か連絡は?」

「マックスが戻ったら早馬で知らせるようにと。マックスが帰る報せを送ってきた段階で知らせているので、2、3日中には返事が来るでしょう」

「……ということは、もしかして王都に」

「ええ、召喚されるでしょうね。準備を怠らないように」

「はあ……クルトは流石に使えませんから、誰に頼みましょうか」

「副団長が残っているので副団長に頼んでいますよ。領内の方はお義父様に頼んでいますから、安心していきなさい」

「……はい」

「行きたくない。いやいやだと、顔に書いてありますが、自分の行いが返ってきているだけですからね、母は知りません。王都へ行きたくないのなら、ダンジョンなど攻略しなければよかったのです」

 ま、母上の言い分も最もだ。こうなることがわかっていながら、ダンジョンを攻略したのだから王都行きも受け入れるべきだ……受け入れるなんだけどな。
 あ~、やっぱめんどいなぁ。帰ってきたばかりだぞ? レナとも顔を合わせたばかりだというのに、また旅の空とか。

「わかっております。こうなることも織り込み済みでダンジョンを攻略したのですから、きちんと責任はとります」

「ええ、ゲルハルディ伯爵を継ぐ者としてとれる責任はきちんととるように」

「わかっております。……レナは母上にまた預けても?」

「ええ、まだまだ教育が終わっていませんからね。王都には連れていけないでしょう」

 レナは伏し目がちになっているが、1ヶ月やそこらで伯爵家の婚約者教育が終わるとは思っていないし、当たり前のことだ。
 というか、5歳にして伯爵家としての教育を終わらせ、7歳でほぼほぼ次期伯爵としての教育が終わっている俺がおかしいのだ。
 もちろん、前世の記憶が功を奏しているのは当然だが、そもそもとしてマックスの能力が高すぎる。
 知らない単語や文法も1度調べてしまえばすぐに覚えるし、応用が利くようにもなる。
 ま、悪役令息とはいえ基礎能力は高いキャラクターだったし、こんなもんかと思っているが、苦労している周りを見るといささかチート臭くて悪い気にもなるな。
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