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幼少期
09 ゲルハルディ伯爵家の婚約話(国王視点)
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「陛下、ゲルハルディ伯爵から書類が届いております」
「ふむ、クラウスからか」
我が貴族学園に通っていた頃から交流のあるクラウスには、何かと頼みごとを頼んでしまっているが、正式な書類が来るとは珍しいな。
ふむふむ……。
「宰相、ゲルハルディ伯爵から嫡男の婚約に関する書類のようだ」
「そういえば、先日、ミネッティ伯爵家にゲルハルディ伯爵が来訪したとの知らせがありましたな」
「ああ、我が派閥の強化を依頼した故、王家派の切り崩しのためにミネッティ伯爵家との婚約に踏み切ったようだが、そちらは失敗したようだ」
「……失敗?」
ふふ、クラウスは我がだした依頼には相応の成果を出し続けてきた過去があるから、宰相も失敗したと聞けば不思議に思うか。
「ああ、どうやらミネッティ伯爵家の嫡女はこの婚約の意味も分からず、ゲルハルディ伯爵の嫡男に会ったと同時に婚約しないと喚きたてたそうだ」
「……伯爵令嬢……ですよね?」
「にわかには信じがたいが、ゲルハルディ伯爵がそういう嘘を言わないのは知っているだろう。これでは派閥の強化どころか失態を起こしかねないと思って、婚約話は最初からなかったことにしたそうだ」
「……確かにそこまでのうつけならば手元に置く意味はありませんな。ですが、婚約に関する書類が来たのでは?」
「ああ、それだが、バルディのところの令嬢と婚約するそうだ」
「……バルディ……確か長男が男爵家を継いだ家ですか……ですが、子供に恵まれなかったと聞いておりますが」
「クラウスの護衛をしている次男のところの令嬢だな。このまま長男の方に子供が出来なければ次男に男爵位が移譲され、男爵令嬢になる」
「ということは、今は騎士爵の令嬢ですか。後々に男爵になるのなら、問題はない……ですかな」
「ああ、内々では男爵位の移譲は確定事項らしいからな。男爵領の領政に関してはこれまで通り長男が行うが、代官という形になると話している」
「仕方がないことですが、横やりが入りそうですな」
「だからこその、この年齢からの婚約だろう」
婚約もせずに結婚することも多い平民とは違って、貴族は1年以上の婚約期間を置くのが普通だ。
だが、幼少期から婚約するのは次期王や、次期公爵などの高位貴族の跡取りを除いてほとんどいない。
これは、1度婚約してしまうと解消や破棄には相応の理由が必要で、簡単には婚約者の交換などできないからだ。
まあ、だからこそ、幼少期から婚約しておけば、他からの横やりを簡単に防げるのだがな。
「陛下が裁可してしまえば、確かに横やりは防げますが……よろしいのですか?」
「ん? さっきも言ったが我が依頼したのは派閥の強化……やり方自体はゲルハルディ伯爵に一任したからな。同派閥の令嬢を迎えるというのも、立派な一手だろう」
「国王派の貴族が騒ぎそうですがな」
「ふんっ! 依頼した我が言うのもなんだが、ゲルハルディ伯爵に期待しすぎだ。最上とは言わずとも、良好な手を打ったのに騒がれる謂れもないだろう」
「まあ、辺境伯あたりは大丈夫でしょうが、王都住まいの子爵や士爵が」
「自分の娘をと? バカバカしい。そもそも王都住まいの者に辺境での暮らしなど無理だろう。いくら他国からの侵略がないとはいえ、ダンジョンの数も荒くれものの数も王都とは違うのだぞ」
「爵位でしか物事が見れないもの、自分の利益になれば子供を利用するのをためらわないものは一定数いますからな」
「言わせておけばいい。我としてはゲルハルディ家とバルディ家の婚約には賛成だ」
「わかりました。ではこちらで両家の調査を終え次第、書類の返送、及び全貴族家への通達を行います」
「ああ、それでいい」
行きずりのものや、他国からのスパイをあぶりだすためにも貴族家の婚約に際しては、それぞれに調査が入るが、今回は両家とも古参貴族だから軽い調査で終わるだろう。
それにしても、あのクラウスの息子がもう婚約か。
これは、王都に来た際にはゲルハルディ伯爵令息とバルディ男爵令嬢に直接会ってみなければな。
「ふむ、クラウスからか」
我が貴族学園に通っていた頃から交流のあるクラウスには、何かと頼みごとを頼んでしまっているが、正式な書類が来るとは珍しいな。
ふむふむ……。
「宰相、ゲルハルディ伯爵から嫡男の婚約に関する書類のようだ」
「そういえば、先日、ミネッティ伯爵家にゲルハルディ伯爵が来訪したとの知らせがありましたな」
「ああ、我が派閥の強化を依頼した故、王家派の切り崩しのためにミネッティ伯爵家との婚約に踏み切ったようだが、そちらは失敗したようだ」
「……失敗?」
ふふ、クラウスは我がだした依頼には相応の成果を出し続けてきた過去があるから、宰相も失敗したと聞けば不思議に思うか。
「ああ、どうやらミネッティ伯爵家の嫡女はこの婚約の意味も分からず、ゲルハルディ伯爵の嫡男に会ったと同時に婚約しないと喚きたてたそうだ」
「……伯爵令嬢……ですよね?」
「にわかには信じがたいが、ゲルハルディ伯爵がそういう嘘を言わないのは知っているだろう。これでは派閥の強化どころか失態を起こしかねないと思って、婚約話は最初からなかったことにしたそうだ」
「……確かにそこまでのうつけならば手元に置く意味はありませんな。ですが、婚約に関する書類が来たのでは?」
「ああ、それだが、バルディのところの令嬢と婚約するそうだ」
「……バルディ……確か長男が男爵家を継いだ家ですか……ですが、子供に恵まれなかったと聞いておりますが」
「クラウスの護衛をしている次男のところの令嬢だな。このまま長男の方に子供が出来なければ次男に男爵位が移譲され、男爵令嬢になる」
「ということは、今は騎士爵の令嬢ですか。後々に男爵になるのなら、問題はない……ですかな」
「ああ、内々では男爵位の移譲は確定事項らしいからな。男爵領の領政に関してはこれまで通り長男が行うが、代官という形になると話している」
「仕方がないことですが、横やりが入りそうですな」
「だからこその、この年齢からの婚約だろう」
婚約もせずに結婚することも多い平民とは違って、貴族は1年以上の婚約期間を置くのが普通だ。
だが、幼少期から婚約するのは次期王や、次期公爵などの高位貴族の跡取りを除いてほとんどいない。
これは、1度婚約してしまうと解消や破棄には相応の理由が必要で、簡単には婚約者の交換などできないからだ。
まあ、だからこそ、幼少期から婚約しておけば、他からの横やりを簡単に防げるのだがな。
「陛下が裁可してしまえば、確かに横やりは防げますが……よろしいのですか?」
「ん? さっきも言ったが我が依頼したのは派閥の強化……やり方自体はゲルハルディ伯爵に一任したからな。同派閥の令嬢を迎えるというのも、立派な一手だろう」
「国王派の貴族が騒ぎそうですがな」
「ふんっ! 依頼した我が言うのもなんだが、ゲルハルディ伯爵に期待しすぎだ。最上とは言わずとも、良好な手を打ったのに騒がれる謂れもないだろう」
「まあ、辺境伯あたりは大丈夫でしょうが、王都住まいの子爵や士爵が」
「自分の娘をと? バカバカしい。そもそも王都住まいの者に辺境での暮らしなど無理だろう。いくら他国からの侵略がないとはいえ、ダンジョンの数も荒くれものの数も王都とは違うのだぞ」
「爵位でしか物事が見れないもの、自分の利益になれば子供を利用するのをためらわないものは一定数いますからな」
「言わせておけばいい。我としてはゲルハルディ家とバルディ家の婚約には賛成だ」
「わかりました。ではこちらで両家の調査を終え次第、書類の返送、及び全貴族家への通達を行います」
「ああ、それでいい」
行きずりのものや、他国からのスパイをあぶりだすためにも貴族家の婚約に際しては、それぞれに調査が入るが、今回は両家とも古参貴族だから軽い調査で終わるだろう。
それにしても、あのクラウスの息子がもう婚約か。
これは、王都に来た際にはゲルハルディ伯爵令息とバルディ男爵令嬢に直接会ってみなければな。
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