最強の魔帝の少年〜魔力がゼロの無能と思われているが実は最強。落ちこぼれの令嬢を守る為に力を奮い無双する

黒詠詩音

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51話 ユウナとクロ

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何か音が聞こえる。それに妙に温かい。
そういえば私どうしたんだけ? あ! クロ君は!? 体を横にずらそうとした。その時、何かが私を支える。
瞼が重い、気を抜けばまたすぐに意識を失う。
でも、支えているのが何か、正体を見る為には開けないと。
目を開くとまず最初に、眩しい光が襲う。
思わず目を細めてしまう、それでも私を支える何かは分かった。
見慣れた手が私を支える。それにこの大きく見えて案外小さい背中。

「クロ君……ここは?」
「起きたと思ったら、急に落ちようとするのは勘弁して下さい!」

呆れた声でクロ君は言う。
落ちようとしないで? 私は今の状況を冷静に見る。
周りを見渡すと、明らか様に空の上にいる。

「えっ? なんで空にいるの!?」
「だから! 落ちるから暴れないで下さい」

私の体は横にずれ落ちそうになった。それでもクロ君の腕が支えてくれた。
私はその腕にしがみつく。
すると、クロ君が声を荒げて言う。

「せめて背中にして下さい! 腕が腕が攣る」

クロ君の焦りの声に従う、背中に抱き着く。
なんで今空に浮いてるの? クロ君の魔法? それにしては何か乗っている。

「ねぇ今どういう状況?」
「学園に帰っている途中です。本当に暴れないで下さいね。ワイバーンの背中に乗っていますから」

ワイバーンの背中? あ、アルトリアか。彼奴がクロ君に貸してくれた。
帰っている途中、つまりクロ君は……。

「勝ったって事?」
「はい勝ちました」

そっか! 勝ったのかクロ君は! 嬉しい。私が魔人を倒した訳ではない。
それでもクロ君が生きて、無事に帰れてるのか一番嬉しい。
何より魔帝の力に覚醒した、それだけでも結構成果は大きい。
まぁ私は肝心な所を見られなかった。

「ユウナさん。彼奴──リグは物凄く強かったです。決してボク一人では勝ってなかったです」

クロ君の思わぬ一言に胸がグッときた。
私は何の役にも立てず、彼のお荷物だ。そう自分自身で思っていた。それなのに彼は一人で戦ってはいなかった。

「私は何も動けなかった。ただ君を見守る事しかできなかった」
「それは少し違います。最後のあれでボクはリグに勝てました」

最後のあれ? 私は思い出す。顔が熱くなるのが分かる。
そうだ私クロ君とキスした!? 思い出しただけで、顔は熱いし恥ずかしい。

「そういえば何であんな事したんすか? 一つ間違えれば連れ去られても可笑しくない」

クロが言っている事は間違いない、一つ間違えれば私は連れて行かれた。
それも目的である、魔帝の剣も目の前に合った。
腑とあの時の事を回想する。
         ◇

「これでお前を助ける者はいない。さぁ魔帝の剣と共に来て貰おうか」

魔人がジリジリと近付こうとしてくる。
クロ君の意識はゼロ、腹を貫かれたけど、血は出てない所を見るとまだ死んではいない。
治癒魔法を使えば、クロ君は助かるかもしれない。でもどうやって魔人の中を、掻い潜ってクロ君の下に行く? 私にそんな力はない。
じゃあクロ君を見捨てる?

「そんな事できる訳がない!」
「あ? 頭でも可笑しくなったか?」

魔人は嘲笑う。
好きなだけ嘲笑えばいい! 地を蹴り疾走する。
少しの攻撃の被弾覚悟で、クロ君の下へ走った。
魔人は攻撃のモーションを取った、けれどそれを辞めた。隙が生まれる。
足を止めず、クロ君の下まで辿り着けた。
魔人がニヤリと口角を上げたのを、見逃さなかった。

「お前はつくづくバカだなリステリ! これこそがオレ様の狙いだ」

私はまんまと魔人に誘導された、でも! そのお陰でクロ君を助けれる。
魔法を使うのは苦手だ、それでも治癒魔法は誰よりも得意。
お願いクロ君戻って来て! 

「バカが! 回復する前に連れ去る」

魔人の手が私に差し掛かる。次の瞬間。
魔人の体に鎖が巻かれ、捕縛状態になっている。何処から鎖が出ている? 尻目で探す。
と、ヴァニタスの魔導書が現れ、鎖を出している。
じゃあクロ君は? 意識が戻ったのか、確認をするが、まだ戻ってない様子。

「くそが!! なんだこの鎖!? 剥がれろ!」

魔人は声を荒げ、雄叫びを上げる。けれど鎖は離れない。
どうやったらクロ君は意識を取り戻す? 考えろ、治癒魔法は施した。
後はクロ君が意識を取り戻すだけだ。
次に私はどうすればいいか分からない。
次の刹那、脳裏に言葉が過った。
『力を使え。己の力を』
力? 私の力……!! 魔人が言っていた。『禁羅支配ヴァルナノヴァ』それしかない。
でもあれは謂わば反射攻撃。クロ君を助けるに至らない。
いや本当にそうか? 

「……これならば君は復活できる!」

ごめんねクロ君。君は私にされて嫌かもしれない。それでもする。
クロ君の顔に手を置き私はキスをした。

         ◇

「なんか直感だね。自分の力を使えば君を復活できると思った」
「まぁ実際復活できて、リグに勝てました。全部ユウナさんのお陰です」

ううん違うよ、私はただきっかけを上げたに過ぎない。後は君の実力さ。
まだ誰も知らず、私だけが知っている。
『ここに現代へと甦った新たなる魔帝』
君は今間違いなく、誰よりも強いよ。


















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