初恋の味はチョコレート【完結】

初恋の味はチョコレート・アイス

〖最終話〗第１部───完

惟臣の笑ったときの笑窪は変わらないね。ずっと、待たせてごめんね。 

『ラスト１口。由梨にあげるよ』

『おいしい、おいしいよ』

 私はそう言いながら泣いてしまった。 

「大丈夫？由梨。美味しくなかった？」

 「美味しいよ。幸せだよ。でもね幸せで怖いの」

 あなたとの別れを思い出すのよ。
 
小さいあなたが胸を押さえて地面に倒れ込んで。もうあなたに会えないと思ってた。もう一度、あなたを見つけた私には、あなた無しでの幸せはないの。

幸せは甘いアイスクリームよ。
虫歯に気をつけながら、
美味しさを食はむの。

永遠の幸せなんて信じられないけど、 今だけは本当。
あなただけは本当。 


今日も誰かに祈りましょう。全てに感謝を。誰に感謝を？日々の幸せをくれる私はあなたに。
あなたとのもう一度の出会いを許してくれた、神様に。
  
私は社務所でお守りを売って、あなたは参道を、箒で掃いて。

おみくじの発注と、神社のホームページの更新はお願いします。

お夕飯に稲荷寿司でも作ろうか。 お風呂の後は、アイスクリームを食べよう。
箱で買ってきたから、皆で食べよう。

ばあちゃんも、これハマッちゃったのよね。

 チョコレートアイスはあなたとのキスの味がする。穏やかな毎日は、何よりも愛しい。

普通であり続けたい。
勿論、今私は幸せ。
幸せなんて信じられなかった。

永遠なんてないと思っていた。
怖かった。あなたがいなくなることが。どんな平穏も、いつか終わりが来ることが。

それでも、あなたの傷痕が、
私の不安を眠らせた。

愛して愛されて、腕の中に柔らかで紅葉のような手のひらの、可愛らしい男の子がいる。 

あの子のために、
オミのために、
家族の為に、
私の永遠を幸せを捧ぐ。

それが私の幸せだから。 

巫女の袴、そろそろクリーニング出さなきゃ。




───────第１部【FIN】