初恋の味はチョコレート【完結】

カシューナッツ

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初恋の味はチョコレート・アイス

〖第7話〗

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嘘が見え見えの『勉強会』

やけに、いそいそとお洒落な服と下着を選んで、薄化粧をするに母は

『誰の家に行くの?』

とだけ聞いた。私は素直に言った。

「オミくん。見つけたの。会えたの。生きてたの」

 「由梨、ずっと、忘れられなかったもんね………生きて、たのね」 

母は『行ってらっしゃい』とだけ言い、笑っていた。 



──────────

「あのさ、激しい運動はダメなんじゃなかったの?」 

「今日くらい、いいじゃない?」

 気怠い情事の後──なんて小説では書いてあるけれど。私も息が整わない。オミはまだ呼吸が整ってない。

気怠くなるまでには、
二人で過ごす時間が今よりも増やしていく必要があるかもしれない。

「傷痕、手術の痕痛い?うっすらピンク色になってる」

 「もう塞がってるよ。平気」

 ちょっと待っていて、
と言ってシーツの隙間で、触れるだけのキスをする。惟臣はサッと軽装に、と言ってもハーフパンツとTシャツに着替えた。

 「暖房弱いんだ。風邪引くとつらいから。僕ので良ければ、着て」

 ポンと、置かれたTシャツと、ジャージのズボン。

Tシャツから、惟臣の匂いがした。清々しい、シトラス。惟臣は、小さな冷蔵庫を漁っていた。

 「あー、二個ないな。アイスクリームのストック。あれ、中のミルクなめらかだし、チョコもうまいんだよね。一緒に食べよ」

 一齧りづつ、二人で一つのストックのアイスクリームを食べるのも悪くない。なめらかなチョコレート。

購買のは珍しく売り切れていた。だからいつもとは違うアイスクリーム。購買の前で、惟臣が、

『あれ、一番好き。家にいつもあるよ』

って言ったアイスクリームに焼きもちを焼いた。一番好きで、いつも家にあるなんて。だから、売り切れでもいい。私は心が狭い。惟臣の一番は私の面影くらいでいい。


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