7 / 16
初恋の味はチョコレート・アイス
〖第7話〗
しおりを挟む嘘が見え見えの『勉強会』
やけに、いそいそとお洒落な服と下着を選んで、薄化粧をするに母は
『誰の家に行くの?』
とだけ聞いた。私は素直に言った。
「オミくん。見つけたの。会えたの。生きてたの」
「由梨、ずっと、忘れられなかったもんね………生きて、たのね」
母は『行ってらっしゃい』とだけ言い、笑っていた。
──────────
「あのさ、激しい運動はダメなんじゃなかったの?」
「今日くらい、いいじゃない?」
気怠い情事の後──なんて小説では書いてあるけれど。私も息が整わない。オミはまだ呼吸が整ってない。
気怠くなるまでには、
二人で過ごす時間が今よりも増やしていく必要があるかもしれない。
「傷痕、手術の痕痛い?うっすらピンク色になってる」
「もう塞がってるよ。平気」
ちょっと待っていて、
と言ってシーツの隙間で、触れるだけのキスをする。惟臣はサッと軽装に、と言ってもハーフパンツとTシャツに着替えた。
「暖房弱いんだ。風邪引くとつらいから。僕ので良ければ、着て」
ポンと、置かれたTシャツと、ジャージのズボン。
Tシャツから、惟臣の匂いがした。清々しい、シトラス。惟臣は、小さな冷蔵庫を漁っていた。
「あー、二個ないな。アイスクリームのストック。あれ、中のミルクなめらかだし、チョコもうまいんだよね。一緒に食べよ」
一齧りづつ、二人で一つのストックのアイスクリームを食べるのも悪くない。なめらかなチョコレート。
購買のは珍しく売り切れていた。だからいつもとは違うアイスクリーム。購買の前で、惟臣が、
『あれ、一番好き。家にいつもあるよ』
って言ったアイスクリームに焼きもちを焼いた。一番好きで、いつも家にあるなんて。だから、売り切れでもいい。私は心が狭い。惟臣の一番は私の面影くらいでいい。
10
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる