4 / 16
初恋の味はチョコレート・アイス
〖第4話〗あなたが好きなのはオミに似ているから
しおりを挟む告白の最高のシチュエーションと呼ばれる、バレンタインデー。
そこそこ好きな子はいる。
でも、あの強烈な思い出にかなうものはない。
きっと、オミは………もう私の空想のキャンバスに記憶を元に描くだけしかできないんだろうと思う。
多分会うことは、もう二度とない。
オミは、もういない。
『お話ししたいことがあるんで、放課後図書準備室に来てください』
我ながら陳腐だな。
もっとセンスのある文章は書けないのか、と思いつつ、一年から同じクラスの光太郎くんの下駄箱に凝ったカードを置いた。そして、チョコを袋にいれて、置いた。
──────────
『どうして光太郎くんにチョコなんて買ったの?』
心の中の私が問いかけた。
「嫌いじゃないから」
『じゃあ、好きなの?』
「好きだよ。だってオミに似てるよ」
『何処が似てる?』
「一番好きな笑った顔が似てて、笑窪の位置がオミと同じなの………もうすぐ、恋愛なんて出来なくなってくるから」
そう言えば、図書準備室の下の階の今改装中の、保健室、幽霊がでるらしい。
言っても保健室登校の蒼白い顔をした『幽霊』とあだ名された男子生徒のことらしいのだが詳しいことは知らない。
──────────
光太郎くんにあげるのに用意したのは、ちょっと財布に痛いゴディバのチョコレート、下手な字のメッセージカード。
放課後、図書準備室に誰かがいた。窓から外をみていた。私は、後ろ姿に話しかけた。
『ずっと好きでした。付き合って下さい』
伝えたい言葉はこんなにも簡単なのに、どうして喉につまったように、普段は声にならないんだろう。口に出来るのはバレンタインだから?
──本当じゃないから?
──嘘だから?
『あなたに似た人が忘れられないんです。苦しいんです。付き合って下さい』
そんなこと、言えるわけがない。そんなとき、逆光で顔が見えにくいけれど色が白い、線の細い──。
「何で、僕じゃないの?」
「へ?」
「バレンタインのチョコ」
「僕は一目で解った。この高校に来てから、ユリ──」
10
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
深海の星空
柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」
ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。
少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。
やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。
世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる