僕の宿命の人は黒耳のもふもふ尻尾の狛犬でした!【完結】

カシューナッツ

文字の大きさ
62 / 115

拭えない劣等感〖第30話〗──②

しおりを挟む

    早朝、と言っても寅の刻前、目を覚ますと隣の布団から転がったらしく懐に空がいた。温かい。起こさないようにそっと布団から出ようとしたはずなのに、空は蒼の寝衣を掴み、

「少しだけ、待って」

    と言った。あまりに切ない声に振り向くと、空がじっと見つめていた。

「怖い夢でも、見たのか」

「ううん」

「どうしたんだ」

「ずっと夢だったの。大好きなひとと一緒に寝て、そのひとに優しく起こしてもらうの」

    蒼は空に唇に触れるだけの口づけをした。

「朝だよ、空。でも少し早いな。もう一度眠るか?」

    空は嬉しそうに笑うと、ぎゅっと蒼を抱きしめた。

「今日、大変なんでしょ?うっすら聴こえたよ。頑張って。負けないでそうにいちゃん。それと『空に想われる自信が、俺にはない』ってどういうこと?どうして?何があったら信じてくれるの?」

    ちょこんと座り、空は蒼を見つめる。空が逸らすことなく見つめる透明な瞳にみっともない自分が映されている気がした。

「僕が、出来ることはないの?何でもするよ。そうにいちゃんのためなら、何でも」

    じっと見つめる無垢な視線に、目を逸らす。

「空は、何で俺なんだ?何で俺が好きなんだ?」

「理由はないの。ただ、そうにいちゃんが好きなの。自分でも、解らないよ。どうしようもないの。理屈じゃないの。好きに理由が必要なの?ただ好きじゃいけないの?」

   好きに、理由。考えたことなんか無かった。自分が空を好きな理由。ふと目をやると、大きな瞳はクシャッと笑う。理由なんて、ない。それに、空に望むこと……ただ『そうにいちゃん』そう、自分を呼んで笑ってくれるだけでいい。

「もう一度、布団で寝ていろ。気になるようだったら襖を開けておけばいい」

    恥ずかしくなり、取り繕う代わりに冷たい物言いをする自分が嫌になる。

「あ、あの……まだ、早いから、刺繍をしようと思って」

「そうか」

    少しだけ乱れた寝衣が初々しい色香を感じさせた。

「そ、そうにいちゃん。お願いがあるんだけど」

「何だ」

「あの、黒の、神獣の毛並みの姿になってほしいの。鉛筆で写して、刺繍にしたくて。翠くんは寝てるし、爺やさんは外で見張りをしてるから………」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

記憶喪失のふりをしたら後輩が恋人を名乗り出た

キトー
BL
【BLです】 「俺と秋さんは恋人同士です!」「そうなの!?」  無気力でめんどくさがり屋な大学生、露田秋は交通事故に遭い一時的に記憶喪失になったがすぐに記憶を取り戻す。  そんな最中、大学の後輩である天杉夏から見舞いに来ると連絡があり、秋はほんの悪戯心で夏に記憶喪失のふりを続けたら、突然夏が手を握り「俺と秋さんは恋人同士です」と言ってきた。  もちろんそんな事実は無く、何の冗談だと啞然としている間にあれよあれよと話が進められてしまう。  記憶喪失が嘘だと明かすタイミングを逃してしまった秋は、流れ流され夏と同棲まで始めてしまうが案外夏との恋人生活は居心地が良い。  一方では、夏も秋を騙している罪悪感を抱えて悩むものの、一度手に入れた大切な人を手放す気はなくてあの手この手で秋を甘やかす。  あまり深く考えずにまぁ良いかと騙され続ける受けと、騙している事に罪悪感を持ちながらも必死に受けを繋ぎ止めようとする攻めのコメディ寄りの話です。 【主人公にだけ甘い後輩✕無気力な流され大学生】  反応いただけるととても喜びます!誤字報告もありがたいです。  ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載中。

壊すほどに、俺はお前に囚われている

氷月
BL
【後輩と先輩、交錯する心と体】 春、新学期の大学キャンパス。 4年の蓮(レン)は、人気者らしく女子に囲まれながらも、なぜか新入生・七瀬巧(タクミ)の姿を探してしまう自分に気づいていた。 彼は去年の秋、かつて蓮が想いを寄せていた男の恋人の友人として出会った相手。 ――まさか、この俺様が、また男に惹かれるなんて。 否定しようとすればするほど、目はタクミを追ってしまう。 無邪気に笑う顔。ふと見せる真剣な横顔。 先輩と後輩、互いに抗えない感情に囚われながら、夏の学園を駆け抜けていく――。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?

藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。 なんで?どうして? そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。 片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。 勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。 お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。 少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。 (R4.11.3 全体に手を入れました) 【ちょこっとネタバレ】 番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。 BL大賞期間内に番外編も完結予定です。

処理中です...