僕の宿命の人は黒耳のもふもふ尻尾の狛犬でした!【完結】

カシューナッツ

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神獣の姿〖第19話〗──①

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    暁の家に早朝、蒼からの伝書鳥が来た。書いてあったのは蒼と空の失われた半年のすべて、そして今の蒼の気持ちだ。それがなかったら今、口づけの一つや二つしてしまいそうだ。空に傷がなければ空の純潔すらも奪いかねない。
    
 何がそうさせるのかは解らないが、今日の空は触れたくなる。自分の中の邪が顔を出すようだ。初めて会って、一緒に温泉に入って、遊んだときはただ、いたいけなものに目を細め、守ってやりたい気持ちだけだった。

    小さな可愛らしい、身体の弱い弟を持った兄になった気持ち。守らなければならない雛を持った親鳥のような気分だったのに。雑炊を食べさせるのに抱きかかえる空の華奢な背中の熱が暁の手の平に伝わる。

「ご馳走さまでした。美味しかった。ありがとう、あきにいちゃん」

「どういたしまして」

    どうしようもない気持ちでいっぱいの暁は、そそくさと空の部屋を後にした。空は首にかけられた笛を見る。障子の隙間から差し込む朝の光が金の笛に反射した。

「そうにいちゃん………」

   金の笛を吹いた。音はしない。力一杯吹いても。待っても、来ない。誰もいない。空は家での毎日を思い出す。話相手は、たまに来る眼鏡の蒼に似てるおじさんと、髪の長い綺麗なおじさん。

 毎日本を読んで、ご飯を作って、お風呂に入る。それだけ。寂しいと泣いても誰もいない空の家。誰も来ない空の家。

    思い出だけは綺麗に取っておこうと、忘れないように、空は毎日思い出してきた。けれど、約束の年になるのに蒼は来ない。夢だったのではないかと思えてくる。空を可哀想に思った山神さまの見せてくれた夢なのかもしれないと。

    それでも、空は蒼の唇の温度も、一緒に寝た時の蒼の匂いも覚えている。蒼のことを想った気持ちも。紅葉を見に行ってお別れを告げたとき、泣きながら縋るように蒼に抱きしめられて、守ってあげたいと、蒼は自分を必要としていると、切なくて苦しくなった気持ちも。

   
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