36 / 115
もう一度、恋に落ちたら〖第18話〗──②
しおりを挟む「え? まだ食う気なん? しかも、高級なとこ?」
「勿論♪それに、一人で食べ切れないなら味見やら毒見と称してお裾分けすりゃいいのよ」
「いいのか、それ? 食べ残し押し付けてるってことになるんじゃ……」
「いいのいいの。というか、始めから味見目的で買うんだし」
むしろ、「食べてくれますか?」って聞くと、なぜか喜ばれる気もするし。というか、事前に毒見がされた食べ物を食べるのも、ある意味では食べ残しになると思うのよねー? 王族としての安全対策を考えれば、しょうがないことかもだけどさ? 但し、衛生面は至極大事! 食器の使い回しは認めていません!
まぁ、人によっては・・・他人の使用済み食器の方が毒物の危険性が低いと言って、わざわざ使用済み食器を使うこともあるらしいけど。ただ、それも虫歯や病気、食中毒のリスクもあるから、やっぱり完璧なリスク回避方法なんて無いのかもしれない。
「さあ、いざ行かん、美味しい物を見付けに!」
「ええっ!? 美味しい物を探しに行くんですかっ!?」
「そう。今日の目的は、美食! 故に、美味しい物を徹底追及するのよ!」
宣言すると、びっくりしているグレンを余所に、護衛や侍従のおじさま達が頷き合う。どうやら、あたしの言いたいことがちゃんと伝わっているようだ。ナイス、察しの良さ。さすが、アストレイヤ様直属の人達ね!
『徹底追及、な? 王室御用達のものなら、美食というのも間違っちゃいねぇ』
ぼそりと呟く蒼。
『ふっ、品質比較も忘れちゃいけないわ』
アストレイヤ様の正妃宮に卸されている献上された品物と、現地で王室御用達と称されている品物。運ぶ過程での劣化はある程度しょうがないことではあるけど・・・
品質の差異があったり、全くの別物を提供をしていたと判明した時点で黒決定! しかも、その品質分の差額を、どこぞの誰かが横領していることも確実!
げっへっへ……証拠さえ押さえりゃ、こっちのもんよ。
王城へ卸している領地の特産品。領主が関わっていることは明白。白を切るか……もしくは、ガチで領主が関わっていない場合でも、監督責任の追及はできるというもの!
弱みを握る為にも、是非とも不正の証拠を挙げてもらいたいものだわ。
と、ルンルン気分で高級レストランへ向かったら――――
見て、しまった。というか、とうとう発見っ!! 眩く輝く金髪の、神々しいとさえ思えるような美少年っ!!
「ん? どしたよ、ね……じゃなかった。レイシー?」
ひょいとあたしを覗き込んだ蒼が、その視線の先を辿って……
「おおっ、なんかものっそい美少年がいるっ!」
「え? あ、本当に綺麗な人ですね」
「なんだよ、見とれてんのか?」
ニヤニヤ笑う蒼を引っ掴んで、
『アーリー発見よ』
小さく囁く。
『はあっ?』
『おそらくはまだ、十代前半。まさか、こんなところにいたとは……王都近郊を幾ら探しても見付からないワケだわ』
『いや、ちょっ、待って! アーリーって確か、サイコパス異端審問官だったよな?』
慌てる蒼に頷く。
『ええ。そのフラグは、一応折ったと思うけど』
ド変態外道神官を社会的に抹殺してやった件だ。ネロたんこと第三王子への暴行未遂。加えて、王族への脅迫、殺人未遂罪も現行犯で捕縛された為、国家転覆罪で死刑は確定。更にはトカゲの尻尾切りとして神殿から破門までされた。様々な意味でに加え・・・ガチで奴の人生を終わらせてやったぜ☆
とは言え、外道野郎には他にも児童買春や人身売買容疑などの余罪あり捲りな為、その犯した罪を詳らかに、全て公にして、公開裁判を開く予定だから、死刑執行まで年単位での猶予はあるけどね。
『なんでそのサイコパスがここにいんだよっ?』
『さあ? 多分だけど、実家がこっちの方なんじゃない?』
『適当な答え! ……つか、見付けたからってどうするつもりなんだよ?』
『とりあえず、保護するつもりだけど?』
『はあっ!? サイコパス野郎をかっ?』
『ん~……一応、そうなるにはなるだけの理由があったのよ。あたしがそれを潰したけど……ほら? ゲームスタートまでの十年程の間に、物語の強制力的な作用が働かないとも限らないし。だったら、手許で経過観察してた方がいいでしょ』
『それは……そうかもしれねぇけど……』
渋い顔で押し黙る蒼。
どうやら、とっても不服らしい。
『……な、ねーちゃん。どこぞのお偉いさんが奴って可能性は?』
『その可能性は低いんじゃないかしら?』
『なんでだよ』
『そうね……彼は、むしろ権力者に人生を狂わされた方だから……というか、可能性としては彼が誰ぞに狙われている可能性の方が高いかもしれないわ。だって、あの美貌だもの! 美しさというものは、ある種の力が無いとその美貌を持つ人の周囲にとっては毒としかならないんだから! 急いで保護しなきゃ!』
『はあ? なに言ってんの?』
『あら、アンタ知らない? ある程度の文化習熟度が無いと、酒、美食、美女が権力者の象徴なのよ?』
『美女なんだろ』
『ふっ、甘いわね! 言ったでしょ? 文化習熟度が低ければ、男女の別なんて関係無いわ。古代ローマとか、同性愛、近親相姦なんでもござれ。欲しい相手を手に入れる為なら、難癖付けて戦争だってしちゃってたんだから。むしろ、アンタの方こそ忘れてるの? ここは、【BLゲーム】の世界なのよ』
『ぐはっ!?』
と、なぜかあたしの言葉にダメージを受ける蒼。
「ど、されましたっ? し、シェン?」
胸を押さえたシエロたんを、慌てて覗き込むグレン。
「い、いや……なんでもねぇ……」
「ね……レ、イシー? シェンになにを言ったんですか?」
「お互い、誘拐には気を付けようね、って言ったの。ほら? あのお兄ちゃん、とっても綺麗でしょ?」
「そう、でしたか。確かに、そうですね。俺も気を引き締めます」
「あの、レイシーお嬢様」
「なぁに?」
あたしと蒼のひそひそを見守っていた侍女が、
「あの子が気になることを言っているのですが……」
と、例の……お忍び旅行の護衛争奪戦に参加していた戦闘侍女が言っていたと、気になることを教えてくれた。なにやら、町にカモフラージュしながら点在している誰ぞの護衛には、隣国の言葉訛りがあるらしい。
「ふむ……これって、もしかしてビンゴだったりするのかしら?」
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

【書籍化・取り下げ予定】あなたたちのことなんて知らない
gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。書籍化予定です。取り下げになります。詳しい情報は決まり次第お知らせいたします。

【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる