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《第31話》久々の二人の情事

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涼は丁寧にボタンを外す。 うなじに首筋に口づける。

涼が胸に口づけるとそこだけ紅くなり、奏は甘い声をあげた。 突起を舌先で転がされ、なぞられ、指でつままれ、その執拗な刺激だけで達しそうだった。

さなか、下着の中にするりと手を入れられ、弄ばれるように身体に触れられる。 

「奏、反応して濡れてる。可愛い。後ろも。前も。感じた?」

 奏は、熱に浮かされたような、とろりとした瞳で、言う。 

「……感じたよ。もっと涼を感じさせて……何も考えられなくなるくらい、僕を涼でいっぱいにして……」

 ──奏の中に涼が埋め込まれていく。奏の身体は涼をゆっくりと受け入れていく。 

「ああ………っああぁ」

 「大丈夫?……やめようか?」

 「やめないで……お願い」

 ゆっくりと行われる抽挿。繋がりから洩れるお互いの体液の擦れる音が部屋に響く。それだけで、涼も奏も感じてしまう。


まだ、うら若さを残す涼と奏の身体には、催淫剤のようなものだった。



見つめあい、吐息を重ねる。
額に汗し、涼は身体を動かしながら口づけた。そして、何故か涙がとまらない奏の瞳から溢れた涙にも、涼は口唇でその涙を拭った。

足をはしたなく開かされ段々と涼の加速していく身体を奏は甘い叫びに近い喘ぎとともに受けとめる。

身体を揺さぶられながら、前を擦られ、弱いところを突かれ、
奏は頭が快楽で霞む。伝えたい甘い言葉は途切れ途切れの単語になる。
絡めた指に奏は力を込めた。 

「苦しい?大丈夫?」 

「りょ、涼……あいして、る……あいして……僕を、あいして……ずっと……」 

「あいして…るよ……ずっと奏だけ──」
 ─────────────────── 

涼は久々に抱きあった愛しいひとを、奏を見つめる。 兄弟なんて、いない。

知らない。 この部屋に弟なんていない。

ここにいるのは、初めて好きになった、愛しい恋人。 



涼は眠りについた奏の髪を撫でる。ただ、奏が愛しいと思う。 

「君を守るよ。奏、君を守るためなら俺は何でもする。ずっと、傍にいるよ。好きだよ。愛して、いるんだ」

倫理、そんなの要らない。
ここにいるのは愛しい恋人と、大切な期限つきの小さないのち。 
奏さえ居ればいい。他は何も要らない。 

出産は奏の身体には堪えられないと、楓さんに言われた。奏の命はもたないと。 

「なら、奏をとります。奏が生きていればいい。もう、俺は、奏を失うのは嫌だ。怖いんです」

 


消えゆく灯火のようないのちが、悲しい。 

「ごめんね。君を愛してる。けれど君の駄目な父さんは、君のもう一人の父さんを失えない。ごめんよ……俺は、君を……殺すんだね。こんなに、奏の次に大切な君を」 

眠る奏を抱きしめて泣く。 下腹部をやさしく撫でて。

涼は涙こらえて心の中で話しかける。愛しているよ。惨い父親を許して欲しい。 君は、君だけは天国に行って。幸せにおなり。 それでも、君を愛していたよ。ただ君の父さんは、ただ一人を見つけてしまった。 ごめんよ───。 

「泣いて、るの?」 

奏の小さな声。 

「ごめん、起こしたね。何でもないよ」

「涼、うんと泣いていいから。泣いて。我慢しないでいいよ」 

奏は全て解っているようだった。涼は奏にしがみつき泣いた。込み上げる涙は次々に溢れた。子供のように泣いた。涼の震える背中を、奏はずっと撫でてくれた。


──────────続
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