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1.ヴァルプルギスの夜③
しおりを挟む周囲の魔女達もそろそろ選別の時間だと気付いたのか、香炉を持ち出しはじめた。焚き火の爆ぜた被害など、何もなかったかのように観衆達は静まりかえっている。
風が吹いた。幻惑の香があたりに漂い、魔女以外はこの中でまともな意識を保っていられない。
魔女達は思い思いに男を連れ出し、幻惑にかかった人々は夢うつつで広場から離れていった。選ばれなかった者達は一晩飲み明かして眠りにつき、この夜のことはおぼろげにしか覚えていないはずだ。
魔女の作る幻惑の香はこのためにある。意識を混濁させ、その夜がふんわりと心地良かったものだと認識する、それ以上の記憶は残さない。
そして魔女に連れ込まれた男にとっては、催淫剤のような役割も果たした。長く嗅いでいれば本能を解放し欲のままに動く獣にしてしまう効果がある。
『シャナ、がんばって』
先輩の魔女ひとりが、囁くように言葉を残して村人の男と共に天幕に消えていった。
シャナは香を使うのが初めてだったが、効果は間違いなくあった。覗き込んだブルーグレーの瞳は光を失い焦点が定まっていないように見えた。
『騎士さま、天幕へ』
シャナを抱き上げたままの騎士は、促されて魔女達の天幕に移動し、幕で仕切られた寝台に彼女を下ろした。丁寧で、優しく、紳士的な手つきだった。獣じみた貪られ方をすると聞いていたので身構えていたシャナは拍子抜けしてしまったが、ホッと安堵もしていた。
シャナは男というものに免疫がない。
大きい身体には萎縮してしまうし、大きな怒声など聞こえようものなら一区画離れていてもビクついてしまう。
力が強いのも嫌だ。カオが怖いのも嫌だ。
子種を貰うのは魔女の務めなのでここまできたが、シャナは本能的に、むかしから男が怖かったし嫌いだった。物心ついた頃から父親はおらず魔女との交流ばかりで過ごしていたので当たり前の感覚ではある。
枕元の香炉に幻惑の香を足し、シャナは踊りの衣装を脱ぎはじめた。
この男ならと思ったのには、よく考えれば理由があった。
騎士団がこの街についたとき彼が代表で魔女達の元に挨拶にきて、魔女ひとりひとりにまで細やかに声をかけてきた。
十数人いる魔女は、みな長い黒髪をしていて似通った格好をしている。それでも『ナネサスの森の魔女殿』『セシュファの森の魔女殿』『大魔女殿』と、彼は魔女達を見分けてみせた。
そしてシャナには、『小さな魔女殿、どちらの森の方ですか』と優しく問い掛けてくれた。
この中で最年少の魔女だったシャナは、華奢で小さく、確かに一番幼く見えただろう。
それを揶揄されたのかと一瞬敵意を剥き出しにして睨み上げたが、男は穏やかな表情で笑っているだけだった。他意はないのだなと毒気を抜かれ、シャナは俯いて答えなかった。
だからその騎士は、シャナのことをただ『魔女殿』と呼んだ。
騎士は、アズレト・グランメルと名乗っていた。
初対面のあの時から、シャナは恐らく決めていたのだ。今回のヴァルプルギスの夜はこの男を選ぶと。先輩の魔女達もそれを察したらしく、アズレトを標的とする魔女はシャナ以外にいなかった。
『俺にやらせてくれないか』
アズレトは震える手で服を脱ごうとしているシャナに、そう声をかけてきた。
挨拶の時など、アズレトはずっと『私』と言っていた。普段はそんな喋り方をするのか、とシャナは意外な気持ちで視線を上げた。
見上げた先には、情欲に濡れたブルーグレーの瞳と、僅かに上気した肌、男の色気をまき散らしたアズレトがいる。ドキリと心臓が跳ねた。予想以上に、顔の良い男の閨での表情というのは、すごいものなのだ。先輩の魔女達に言われたことを思い出して、シャナは真っ赤になって服から手を離した。ドクドクと激しく打つ心臓の音が聞こえてくるようだった。恐ろしさは、いつの間にか羞恥と少しの好奇心に覆い隠されている。
『ああ、耳まで染まって、食べてしまいたいくらい可愛らしいな』
アズレトの言葉は蜜のようで、低く甘くシャナの耳をくすぐった。胸の内側がぎゅうっとするようなこそばゆさを感じる。心臓がまた不自然に跳ねた。
器用な指先に服を乱され、装飾類も壊されることなく外されて、真っ白な肌を晒すとアズレトの喉がごくりと動いた。
シャナは太腿に当てられる硬い感触に赤面してそれどころではなく、胸を吸われて泣き、優しく揉まれても泣き、潤んだ場所を指で擦られるだけでイヤイヤと頭を橫に振った。
アズレトは忍耐強く愛撫し、シャナを解していった。処女のシャナが今回ヴァルプルギスの夜を迎えるとあって、大魔女からは膣に入れる拡張用の道具が支給されている。それにコツリと指が当たると、アズレトは目を見開いていた。
ゆっくりとそれを引き抜かれる。シャナは泣きながら顔を覆った。恥ずかしさで死んでしまいそうだと思った。中からとぷりと香油が流れ出す。それはシャナのそこをしとどに濡らしていた。
『どうか、俺を見てくれ。魔女殿』
甘く切ない声に促されて手を退けると、アズレトは苦しそうな顔をしたまま色濃く情欲を滾らせていて、指で開いたシャナの中へ押し入ってきた。
悲鳴を上げる余裕もなかった。処女のシャナには無茶な熱が押し込まれ、ゆっくりと奥へ進んでいく。は、は、と短い息をしてシャナは背を逸らした。中がひどく傷ついたような痛みはない。
アズレトは慎重に、猛る自身を進め、シャナの身体を抱き締めた。
逞しく温かい、大きな腕に抱き締められてシャナはまた泣きじゃくった。
辛いわけではない、苦しいわけでもない、僅かに痛みはあったが圧倒的に心地良さが勝った。
悲鳴ではなくシャナも今度は甘い嬌声で応える。
気を遣いながら動いていたアズレトは、シャナの乱れた様子にまた自身を滾らせ、抱き締めてきた。
貪るように口付けられ、何度も何度も舌を吸われ甘噛みされる。口の中を蹂躙されながら、このまま食べられてしまうみたい、とシャナは思った。
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