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第五話-3

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 なるほど、陛下のいつもの堂々とした立ち振る舞いは、そうしなければならないという使命感からか。

 それでは辛いだろう。先王と似た色をして生まれてきたのは彼のせいではない。それで自由を縛るのは周囲の大人の我儘だ。

「しかも王となるにはいささか性癖に問題が」
「……せいへき?」
「殿下は強い者にのが大好きなんです」
「は?」

 くしゃりと顔を歪めたオーギュスト殿下は、俯いて肩を震わせていた。打ち拉がれた哀れな様子で断罪を受け入れているように見える。
 いや、被虐趣味なら実はこれが悦んでいる姿なんだろうか?

「私も慰める程度なら出来るのですが、基本的には剣の腕は殿下の方が上なのです。殿下は強者でなければ食指が動くこともないので、その性癖はいつもなら抑制可能なのですが――貴方が入学してきてしまったので、今朝は我慢が出来なかったようで」
「――俺が?」

 はい、とにこやかに笑みながらエルヴェが応える。
 
 曰く、俺の破格の強さというのは王都で既に広がっているらしい。

 転生者の妹の事は父がしっかり隠蔽していたが、俺は正真正銘この世界産の人間だ。そもそも隠す必要がないと判断されていた。
 ただ、鍛えに鍛え抜いて翼竜を仕留められるような子供になってしまったのは誤算だった。気付いた時には討伐依頼が舞い込むようになっていたから、父も内心では焦っていたのかも知れない。

 うちの領地近くを統括する、冒険者ギルドに頼み込まれて大規模な討伐隊にも参加していた。最初に参加したのは確か12歳の頃だ。そういうのも地味に目立っていたんだろう。回りが気さくな冒険者ばかりだったので油断していた。

 極めつけはあの騎士団長だ。ちょっと落ち込んでて聞き流していたが、『魔神級の強さのジラール家公子』とか言われた気がする。本人を前にして言うのだから、王都でもたびたび口にしていたに違いない。

 下手をすると今学期この学園に剣術を教えにきたのだって、俺との繋ぎが目当てという可能性もある。
 『スカウトに気をつけろよ』と父からは入学前に言い含められていた。これは自意識過剰なのではなく、真面目にとらえるべきことだ。

 俺一人の戦力で騎士団ひとつ壊滅させる事もできる。国内の勢力図を書き換えてしまう可能性があった。

「――俺に従いたいのか」
「ッ……」

 びく、とオーギュスト殿下の肩が揺れた。

 ふらりと猫足バスタブの側まできて、切なげな目で俺を見下ろしてくる。その目を見てようやく実感した。オーギュスト殿下は、存外可愛らしい。

 ――ゾクリと背に走ったのは、疼くような支配欲だった。

 妹のアデライードが言うにはこの殿下も攻略対象だ。俺のスキルさえ高ければ、手管で快楽墜ちさせることも可能なんだろう。

 しかし今は、全くと言って良いほどレベルやスキルが足りていない。はぁ、と小さくため息をついてバスタブの外に片足を引っかけた。ぽた、ぽた、と湯を滴らせる足先がオーギュスト殿下の前に晒される。

「舐めろ」
「……!」

 途端、オーギュスト殿下の瞳孔がスウッと僅かに開いた。興奮、しているようだ。

 すぐさま彼は床に膝を突いて俺の足先に顔を寄せる。そして震える唇を開いて舌を出し、雫の落ちる親指をぴちゃ、ぴちゃ、と音を立てて舐め始めた。



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