38 / 56
第三十九話……ジュノー男爵と老将官
しおりを挟む
「男爵様、それはあまりの仰せかと……」
惑星ジュノーの将官らが、男爵を諫めるも、
「うるさい! このような人外の奇妙なカラクリの助けなどいらんわ! こやつを早々に追い出せ!」
「すいませんが、こちらへ……」
男爵に怒鳴られ、立派な館を辞した後。
お詫びということで、この惑星の防衛を預かっているであろう老将官の招きを受けた。
「カーヴ殿、ブルー殿、この星を助けてくれたのに、誠に申し訳ない限りです」
「いやいや、お気になさらず」
「いいってことですよ!」
男爵の言を全然気にしない訳でもなかったが、老齢の域に達した将官の恐縮具合に同情する。
上司が大変だと、苦労も多いだろうなぁと……。
「……されど、実はですね、この星は遠い昔、機械化された兵団の反乱に遭いましてな。男爵を初め多くの者が機械化された者を信じないのです……」
老将官の話を聞くと、この世界の人類は、マーダと戦う前は機械化された人類や、亜人種たちと戦っていたらしい。
どうりで惑星アーバレストでも生身の人間しか見ない訳だ。
……しかし、この世界の人たちを笑えない。
我々地球文明も、同じような騒乱を起こし、純正人類とそれ以外が戦った。
その想像を超えた戦火から、全機械化された兵器は地球条約で全廃された。
そのために、私のような半機械のバイオロイドの兵士が生み出された経緯があったのだ。
「……まぁ、そういうこともありましてな。是非ともご機嫌を直していただきたい」
「そういうことなら、わかりました」
多くの若い兵士の上に立っているであろう老齢の将官にペコペコされては、『わかりました』というしかない。
その後、私とブルーは老将官に、惑星ジュノーを浮上型自動車で観光案内された。
どこも岩がゴロゴロしているだけで、見栄えが良いわけではない。
取り立てて風光明媚なところもなかった。
……が、しかし、老将官は『我が故郷は偉大である』とばかりに自慢して回るのだ。
「どうです、この大きな玄武岩などは、すばらしいでしょう?」
「ええ、そうですね……」
こういうのに慣れた星間ビジネスマンや政治家を、この時ほど尊敬したことは無かった。
友邦との友好親善など『戦場は前線だけではない』のだと……。
☆★☆★☆
その後の夕食は、老将官が手配してくれた高級レストランでとる。
内張りが落ち着いた木造りで、落ち付いた温かい照明の店だった。
「どうぞ、ご賞味ください! 惑星ジュノーの自然の幸を集めました!」
「いただきます!」
どんな小難しい珍味が出て来るかと思ったら、海鮮オードブルの後に出てきたのはハンバーグステーキであった。
熱せられた石皿の上で肉汁が蒸発し、味覚をくすぐる音が鳴る。
「いやあ、これは美味ですな!」
観光地巡りにウンザリしていたブルーも生気を取り戻す。
「そうでしょうとも、我が惑星の鳥鹿のミンチ肉でございます!」
「鳥鹿ってなんですか!?」
聞きなれない動物の名前に疑問を持つと、老将官がパネルにて映像で説明してくれた。
それは、鹿の背中に翼の生えた、幻想的な生き物の姿だった。
……いろいろな生き物がいるなぁ。
宇宙は広い、これからも見たことも聞いたこともない生き物と出会うのだろう……。
☆★☆★☆
「お!? お湯が沢山ですな!」
「湯気が凄いなぁ!」
更には、貴重な水を沢山浸かったお風呂にも招待してもらった。
この星もアーバレストと同じく水は貴重だ。
戦闘で傷ついた部位に石鹸が染みたが、ブルーと至福の時間を過ごしたのだった。
その後、私は医務室で、若い女性の看護師さんに戦闘で受けた体の手当てをしてもらう。
人工皮膚を消毒し、亀裂に傷薬を塗り込み、包帯を巻いてもらう。
人間より遥かに回復力の優れた体であったが、温かい治療は心も癒してくれるようであった。
「カーヴ殿、この度は有難うございました。この恩を忘れはしませぬぞ!」
「あはは、お互い様ですよ!」
私は老将官のお礼の言葉に笑って返す。
その後、満面の笑みで老将官が見送る中、私たちの乗るクリシュナは、星が瞬く夜空に舞い上がった。
☆★☆★☆
『カーヴ殿、その色々お疲れ様でした……。その……、少し変わった男爵で申し訳ない』
通信スクリーンに顔を出すフランツさんの顔は険しい。
男爵が私を差別したことを気遣ってのことだった。
「いえいえ、よくある話です」
そう笑って返すと、
「そう言って頂けると嬉しい。……でな、カーヴ殿には一度惑星アーバレストに戻ってほしいのだ」
「えっ? 大丈夫なのですか?」
『……いや、大丈夫というわけではない。カーヴ殿が王家に対して不敬であった旨は、いまもアーバレストの有力者たちの心に燻り続けている。よって極秘裏に帰ってきてほしい』
「はっ、分かりました」
『心苦しいが、頼んだぞ!』
申し訳なさそうなフランツさんの顔が映る通信モニターの電源を落とす。
この案件も、多分、私が人間ではないことがあるていど起因にしているに違いない。
そんなことを思いつつ、クリシュナを増速させる。
クリシュナは惑星ジュノーの重力圏を離れ、惑星アーバレストのあるユーストフ星系を目指した。
惑星ジュノーの将官らが、男爵を諫めるも、
「うるさい! このような人外の奇妙なカラクリの助けなどいらんわ! こやつを早々に追い出せ!」
「すいませんが、こちらへ……」
男爵に怒鳴られ、立派な館を辞した後。
お詫びということで、この惑星の防衛を預かっているであろう老将官の招きを受けた。
「カーヴ殿、ブルー殿、この星を助けてくれたのに、誠に申し訳ない限りです」
「いやいや、お気になさらず」
「いいってことですよ!」
男爵の言を全然気にしない訳でもなかったが、老齢の域に達した将官の恐縮具合に同情する。
上司が大変だと、苦労も多いだろうなぁと……。
「……されど、実はですね、この星は遠い昔、機械化された兵団の反乱に遭いましてな。男爵を初め多くの者が機械化された者を信じないのです……」
老将官の話を聞くと、この世界の人類は、マーダと戦う前は機械化された人類や、亜人種たちと戦っていたらしい。
どうりで惑星アーバレストでも生身の人間しか見ない訳だ。
……しかし、この世界の人たちを笑えない。
我々地球文明も、同じような騒乱を起こし、純正人類とそれ以外が戦った。
その想像を超えた戦火から、全機械化された兵器は地球条約で全廃された。
そのために、私のような半機械のバイオロイドの兵士が生み出された経緯があったのだ。
「……まぁ、そういうこともありましてな。是非ともご機嫌を直していただきたい」
「そういうことなら、わかりました」
多くの若い兵士の上に立っているであろう老齢の将官にペコペコされては、『わかりました』というしかない。
その後、私とブルーは老将官に、惑星ジュノーを浮上型自動車で観光案内された。
どこも岩がゴロゴロしているだけで、見栄えが良いわけではない。
取り立てて風光明媚なところもなかった。
……が、しかし、老将官は『我が故郷は偉大である』とばかりに自慢して回るのだ。
「どうです、この大きな玄武岩などは、すばらしいでしょう?」
「ええ、そうですね……」
こういうのに慣れた星間ビジネスマンや政治家を、この時ほど尊敬したことは無かった。
友邦との友好親善など『戦場は前線だけではない』のだと……。
☆★☆★☆
その後の夕食は、老将官が手配してくれた高級レストランでとる。
内張りが落ち着いた木造りで、落ち付いた温かい照明の店だった。
「どうぞ、ご賞味ください! 惑星ジュノーの自然の幸を集めました!」
「いただきます!」
どんな小難しい珍味が出て来るかと思ったら、海鮮オードブルの後に出てきたのはハンバーグステーキであった。
熱せられた石皿の上で肉汁が蒸発し、味覚をくすぐる音が鳴る。
「いやあ、これは美味ですな!」
観光地巡りにウンザリしていたブルーも生気を取り戻す。
「そうでしょうとも、我が惑星の鳥鹿のミンチ肉でございます!」
「鳥鹿ってなんですか!?」
聞きなれない動物の名前に疑問を持つと、老将官がパネルにて映像で説明してくれた。
それは、鹿の背中に翼の生えた、幻想的な生き物の姿だった。
……いろいろな生き物がいるなぁ。
宇宙は広い、これからも見たことも聞いたこともない生き物と出会うのだろう……。
☆★☆★☆
「お!? お湯が沢山ですな!」
「湯気が凄いなぁ!」
更には、貴重な水を沢山浸かったお風呂にも招待してもらった。
この星もアーバレストと同じく水は貴重だ。
戦闘で傷ついた部位に石鹸が染みたが、ブルーと至福の時間を過ごしたのだった。
その後、私は医務室で、若い女性の看護師さんに戦闘で受けた体の手当てをしてもらう。
人工皮膚を消毒し、亀裂に傷薬を塗り込み、包帯を巻いてもらう。
人間より遥かに回復力の優れた体であったが、温かい治療は心も癒してくれるようであった。
「カーヴ殿、この度は有難うございました。この恩を忘れはしませぬぞ!」
「あはは、お互い様ですよ!」
私は老将官のお礼の言葉に笑って返す。
その後、満面の笑みで老将官が見送る中、私たちの乗るクリシュナは、星が瞬く夜空に舞い上がった。
☆★☆★☆
『カーヴ殿、その色々お疲れ様でした……。その……、少し変わった男爵で申し訳ない』
通信スクリーンに顔を出すフランツさんの顔は険しい。
男爵が私を差別したことを気遣ってのことだった。
「いえいえ、よくある話です」
そう笑って返すと、
「そう言って頂けると嬉しい。……でな、カーヴ殿には一度惑星アーバレストに戻ってほしいのだ」
「えっ? 大丈夫なのですか?」
『……いや、大丈夫というわけではない。カーヴ殿が王家に対して不敬であった旨は、いまもアーバレストの有力者たちの心に燻り続けている。よって極秘裏に帰ってきてほしい』
「はっ、分かりました」
『心苦しいが、頼んだぞ!』
申し訳なさそうなフランツさんの顔が映る通信モニターの電源を落とす。
この案件も、多分、私が人間ではないことがあるていど起因にしているに違いない。
そんなことを思いつつ、クリシュナを増速させる。
クリシュナは惑星ジュノーの重力圏を離れ、惑星アーバレストのあるユーストフ星系を目指した。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
子供って難解だ〜2児の母の笑える小話〜
珊瑚やよい(にん)
エッセイ・ノンフィクション
10秒で読める笑えるエッセイ集です。
2匹の怪獣さんの母です。12歳の娘と6歳の息子がいます。子供はネタの宝庫だと思います。クスッと笑えるエピソードをどうぞ。
毎日毎日ネタが絶えなくて更新しながら楽しんでいます(笑)
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる