宇宙打撃空母クリシュナ ――異次元星域の傭兵軍師――

黒鯛の刺身♪

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第三十九話……ジュノー男爵と老将官

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「男爵様、それはあまりの仰せかと……」

 惑星ジュノーの将官らが、男爵を諫めるも、


「うるさい! このような人外の奇妙なカラクリの助けなどいらんわ! こやつを早々に追い出せ!」

「すいませんが、こちらへ……」

 男爵に怒鳴られ、立派な館を辞した後。
 お詫びということで、この惑星の防衛を預かっているであろう老将官の招きを受けた。


「カーヴ殿、ブルー殿、この星を助けてくれたのに、誠に申し訳ない限りです」

「いやいや、お気になさらず」
「いいってことですよ!」

 男爵の言を全然気にしない訳でもなかったが、老齢の域に達した将官の恐縮具合に同情する。
 上司が大変だと、苦労も多いだろうなぁと……。


「……されど、実はですね、この星は遠い昔、機械化された兵団の反乱に遭いましてな。男爵を初め多くの者が機械化された者を信じないのです……」

 老将官の話を聞くと、この世界の人類は、マーダと戦う前は機械化された人類や、亜人種たちと戦っていたらしい。
 どうりで惑星アーバレストでも生身の人間しか見ない訳だ。

 ……しかし、この世界の人たちを笑えない。
 我々地球文明も、同じような騒乱を起こし、純正人類とそれ以外が戦った。

 その想像を超えた戦火から、全機械化された兵器は地球条約で全廃された。
 そのために、私のような半機械のバイオロイドの兵士が生み出された経緯があったのだ。


「……まぁ、そういうこともありましてな。是非ともご機嫌を直していただきたい」

「そういうことなら、わかりました」

 多くの若い兵士の上に立っているであろう老齢の将官にペコペコされては、『わかりました』というしかない。

 その後、私とブルーは老将官に、惑星ジュノーを浮上型自動車で観光案内された。

 どこも岩がゴロゴロしているだけで、見栄えが良いわけではない。
 取り立てて風光明媚なところもなかった。

 ……が、しかし、老将官は『我が故郷は偉大である』とばかりに自慢して回るのだ。


「どうです、この大きな玄武岩などは、すばらしいでしょう?」

「ええ、そうですね……」

 こういうのに慣れた星間ビジネスマンや政治家を、この時ほど尊敬したことは無かった。
 友邦との友好親善など『戦場は前線だけではない』のだと……。



☆★☆★☆

 その後の夕食は、老将官が手配してくれた高級レストランでとる。
 内張りが落ち着いた木造りで、落ち付いた温かい照明の店だった。


「どうぞ、ご賞味ください! 惑星ジュノーの自然の幸を集めました!」

「いただきます!」

 どんな小難しい珍味が出て来るかと思ったら、海鮮オードブルの後に出てきたのはハンバーグステーキであった。
 熱せられた石皿の上で肉汁が蒸発し、味覚をくすぐる音が鳴る。


「いやあ、これは美味ですな!」

 観光地巡りにウンザリしていたブルーも生気を取り戻す。


「そうでしょうとも、我が惑星の鳥鹿のミンチ肉でございます!」

「鳥鹿ってなんですか!?」

 聞きなれない動物の名前に疑問を持つと、老将官がパネルにて映像で説明してくれた。
 それは、鹿の背中に翼の生えた、幻想的な生き物の姿だった。

 ……いろいろな生き物がいるなぁ。
 宇宙は広い、これからも見たことも聞いたこともない生き物と出会うのだろう……。



☆★☆★☆

「お!? お湯が沢山ですな!」

「湯気が凄いなぁ!」

 更には、貴重な水を沢山浸かったお風呂にも招待してもらった。
 この星もアーバレストと同じく水は貴重だ。
 戦闘で傷ついた部位に石鹸が染みたが、ブルーと至福の時間を過ごしたのだった。

 その後、私は医務室で、若い女性の看護師さんに戦闘で受けた体の手当てをしてもらう。
 人工皮膚を消毒し、亀裂に傷薬を塗り込み、包帯を巻いてもらう。
 人間より遥かに回復力の優れた体であったが、温かい治療は心も癒してくれるようであった。


「カーヴ殿、この度は有難うございました。この恩を忘れはしませぬぞ!」

「あはは、お互い様ですよ!」

 私は老将官のお礼の言葉に笑って返す。
 その後、満面の笑みで老将官が見送る中、私たちの乗るクリシュナは、星が瞬く夜空に舞い上がった。



☆★☆★☆

『カーヴ殿、その色々お疲れ様でした……。その……、少し変わった男爵で申し訳ない』

 通信スクリーンに顔を出すフランツさんの顔は険しい。
 男爵が私を差別したことを気遣ってのことだった。


「いえいえ、よくある話です」

 そう笑って返すと、


「そう言って頂けると嬉しい。……でな、カーヴ殿には一度惑星アーバレストに戻ってほしいのだ」

「えっ? 大丈夫なのですか?」

『……いや、大丈夫というわけではない。カーヴ殿が王家に対して不敬であった旨は、いまもアーバレストの有力者たちの心に燻り続けている。よって極秘裏に帰ってきてほしい』

「はっ、分かりました」

『心苦しいが、頼んだぞ!』

 申し訳なさそうなフランツさんの顔が映る通信モニターの電源を落とす。
 この案件も、多分、私が人間ではないことがあるていど起因にしているに違いない。

 そんなことを思いつつ、クリシュナを増速させる。
 クリシュナは惑星ジュノーの重力圏を離れ、惑星アーバレストのあるユーストフ星系を目指した。

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