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ep26.第二幕【日南芽衣子の真実】
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星川先生は、今週末で塾を辞めるそうです。理由は転職の為とおっしゃっていました。これは困ります。彼が塾を辞めるという事は、もう自然と会えなくなるという事。私は送ってもらう帰り道で頭がいっぱいになるほど考えました。どうしたら、会う頻度を落とさずにいられるのか。どうしたら、星川先生を手に入れられるのか。いっぱい考えました。いっぱい考えました。ですが、何も出てきません。私はこれほど頭が悪かったのでしょうか?
「じゃあ、また塾で」
家に着いて、別れる時です。私はこの時も頭を回して答えを探していました。
その時でした。
「あれ、お帰り。姉さんにしては遅かったね」
玄関先で、同級生との遊びから帰ってきた弟と鉢合わせたのです。
私は弟の顔を見て閃きました。弟は決して優秀ではございません。テストの点数など目も当てられないほどです。確かもうすぐテストで勉強期間だったはず。その勉強期間に遊びに行っている、という事自体あり得ない事なのですが、弟は頭が足りないので仕方がないでしょう。ああ、そんなことはどうでもいいのです。考えるべきなのはこの弟を利用できるかできないかだけ。
「さっむ、先、家入ってるからね」
星川先生のことは目に入っていないのでしょう。弟はそう言うと家の中に入っていきました。弟の苦手科目は理数系。星川先生の受け持ち科目も理数系。これは利用しない方が馬鹿でしょう。
「今の、弟くん?」
彼は弟に興味を示してくれたようでした。私は「弟を案じる姉」の仮面を被ります。
「弟、なんですけど……。ちょっと困った子で……」
「いい子そうだったけど?」
「いい子はいい子なんです。でも、成績が、その……」
理数系がどうしても苦手みたいで。そう言って私は彼の様子を見ます。お人好しの星川先生はさっき会ったばかりの弟の事を案じてくれているようでした。
「塾にも行きたくないみたいで……、家庭教師でも雇おうかとも思ったんですけど、大事な弟を任せられるくらい信頼できる人なんて……」
そこで彼と目が合います。かかった、と私は内心で笑みをこぼしました。
「そうだ、星川先生! 弟の家庭教師をやっていただけませんか⁉ 勿論報酬はお支払いします!」
「年下の子にお金貰うなんてできないよ」
「お願いしたお仕事に金銭を支払うのは当然の事です! あの子、今回のテストで赤点取ったら両親にすっごく怒られちゃうんで……、どうか、お願いできませんか……?」
星川先生は少し悩むんだ後「困ってる人がいたら見捨てられないもんなあ」と了承してくれました。
私はそれをきっかけに、星川先生と連絡先を交換することが出来ました。「今日じゃなくて昨日連絡先交換するべきだったね」そう笑う星川先生に私の胸は高鳴りました。やっぱり、彼が私の配偶者に相応しいのです。そうあるべきなのです。
私は星川先生と別れた後、少し間を置いて彼を尾行しました。もっと彼の事が知りたい。でも、歳の差からか、大人はみんな自分の話をしないものなのか。彼は全く自分の情報を吐きません。だったら、こちらから歩み寄るしかないでしょう。そうして私は彼の家をつきとめました。ここに住所をメモしておきましょう。忘れないように。
それから、私は星川先生と弟が会っている間、部屋に入って色々調べました。鍵は二人が集中している間に荷物からお借りして、合鍵を作りました。あまりお片付けは得意ではないようです。私の役目ですね。私は少しずつ、彼の部屋を片付けることにしました。私はカモミールが嫌いなので、飾られていた花は捨てました。
家主が不在の間色々調べて、私は彼の事をたくさん知りました。
彼が探偵業をしている事もわかりました。あのブスのブタは監視対象だっただけなのです。何もなくて安心しました。
そんな時、トラブルが起きたのです。、弟と会わせて二日目の夜、私に電話をかけてきました。
『芽衣子さん、疑って申し訳ないんだけど……、もしかして僕の家に入った?』
彼は私が部屋を片付けるのをよく思っていないようでした。私は私の生活に寄せてもらういい機会だと思い、正直に言いました。部屋が汚いのは良くない、という事。私はカモミールが嫌いだから部屋に置かないで欲しい、という事。その他、思った事全部。
彼は言いました。
『今回は警察沙汰にはしないけど、もう来ないでほしい』
私は意味が解りませんでした。どうして、私は彼女で、これから一緒に暮らすのに、恋人の家に上がってはいけないのでしょう?
星川先生は、明日限りで私とは会わないとも言いましたが、照れ隠しでしょう。そう思っていました。
そうしたら、弟からカモミールのハーブティを星川先生から、と渡されました。
私は彼にすぐに連絡しました。どういうことかと。私達は付き合っているのにと。
彼はそんな事実はないと言いました。
私は、彼にもう一度会うことにしました。
そこで言われました。迷惑だと。
なので、私は彼を試すことにしました。もし、彼が思い通りにならないのなら、私にも考えがあります。
この記録の続きが無ければ、私はアレを実行したのでしょう。もし、そうであるならば、私はそれはそれで幸せなのかもしれません。
――だって、もし実行して上手くいけば、私は彼とずっと一緒にいられるのでしょうから。
「じゃあ、また塾で」
家に着いて、別れる時です。私はこの時も頭を回して答えを探していました。
その時でした。
「あれ、お帰り。姉さんにしては遅かったね」
玄関先で、同級生との遊びから帰ってきた弟と鉢合わせたのです。
私は弟の顔を見て閃きました。弟は決して優秀ではございません。テストの点数など目も当てられないほどです。確かもうすぐテストで勉強期間だったはず。その勉強期間に遊びに行っている、という事自体あり得ない事なのですが、弟は頭が足りないので仕方がないでしょう。ああ、そんなことはどうでもいいのです。考えるべきなのはこの弟を利用できるかできないかだけ。
「さっむ、先、家入ってるからね」
星川先生のことは目に入っていないのでしょう。弟はそう言うと家の中に入っていきました。弟の苦手科目は理数系。星川先生の受け持ち科目も理数系。これは利用しない方が馬鹿でしょう。
「今の、弟くん?」
彼は弟に興味を示してくれたようでした。私は「弟を案じる姉」の仮面を被ります。
「弟、なんですけど……。ちょっと困った子で……」
「いい子そうだったけど?」
「いい子はいい子なんです。でも、成績が、その……」
理数系がどうしても苦手みたいで。そう言って私は彼の様子を見ます。お人好しの星川先生はさっき会ったばかりの弟の事を案じてくれているようでした。
「塾にも行きたくないみたいで……、家庭教師でも雇おうかとも思ったんですけど、大事な弟を任せられるくらい信頼できる人なんて……」
そこで彼と目が合います。かかった、と私は内心で笑みをこぼしました。
「そうだ、星川先生! 弟の家庭教師をやっていただけませんか⁉ 勿論報酬はお支払いします!」
「年下の子にお金貰うなんてできないよ」
「お願いしたお仕事に金銭を支払うのは当然の事です! あの子、今回のテストで赤点取ったら両親にすっごく怒られちゃうんで……、どうか、お願いできませんか……?」
星川先生は少し悩むんだ後「困ってる人がいたら見捨てられないもんなあ」と了承してくれました。
私はそれをきっかけに、星川先生と連絡先を交換することが出来ました。「今日じゃなくて昨日連絡先交換するべきだったね」そう笑う星川先生に私の胸は高鳴りました。やっぱり、彼が私の配偶者に相応しいのです。そうあるべきなのです。
私は星川先生と別れた後、少し間を置いて彼を尾行しました。もっと彼の事が知りたい。でも、歳の差からか、大人はみんな自分の話をしないものなのか。彼は全く自分の情報を吐きません。だったら、こちらから歩み寄るしかないでしょう。そうして私は彼の家をつきとめました。ここに住所をメモしておきましょう。忘れないように。
それから、私は星川先生と弟が会っている間、部屋に入って色々調べました。鍵は二人が集中している間に荷物からお借りして、合鍵を作りました。あまりお片付けは得意ではないようです。私の役目ですね。私は少しずつ、彼の部屋を片付けることにしました。私はカモミールが嫌いなので、飾られていた花は捨てました。
家主が不在の間色々調べて、私は彼の事をたくさん知りました。
彼が探偵業をしている事もわかりました。あのブスのブタは監視対象だっただけなのです。何もなくて安心しました。
そんな時、トラブルが起きたのです。、弟と会わせて二日目の夜、私に電話をかけてきました。
『芽衣子さん、疑って申し訳ないんだけど……、もしかして僕の家に入った?』
彼は私が部屋を片付けるのをよく思っていないようでした。私は私の生活に寄せてもらういい機会だと思い、正直に言いました。部屋が汚いのは良くない、という事。私はカモミールが嫌いだから部屋に置かないで欲しい、という事。その他、思った事全部。
彼は言いました。
『今回は警察沙汰にはしないけど、もう来ないでほしい』
私は意味が解りませんでした。どうして、私は彼女で、これから一緒に暮らすのに、恋人の家に上がってはいけないのでしょう?
星川先生は、明日限りで私とは会わないとも言いましたが、照れ隠しでしょう。そう思っていました。
そうしたら、弟からカモミールのハーブティを星川先生から、と渡されました。
私は彼にすぐに連絡しました。どういうことかと。私達は付き合っているのにと。
彼はそんな事実はないと言いました。
私は、彼にもう一度会うことにしました。
そこで言われました。迷惑だと。
なので、私は彼を試すことにしました。もし、彼が思い通りにならないのなら、私にも考えがあります。
この記録の続きが無ければ、私はアレを実行したのでしょう。もし、そうであるならば、私はそれはそれで幸せなのかもしれません。
――だって、もし実行して上手くいけば、私は彼とずっと一緒にいられるのでしょうから。
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