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第三十話
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「謁見の間の封印には侵入者警報の魔法を仕込んでいますと書いておいてあげましたのに、読まなかった様ですわね」
魔力のオーラを背負っているルーメンがゆっくりとテルラ達に近付いて来る。
慌てて隊列を整えてルーメンと対峙するレイ。相手の迫力に押されて思わず抜刀し掛けたが、すんでのところで思い留まる。こんな状況とは言え、他国の王女が謁見の前で王女に剣を向ける訳には行かない。
「申し訳ございません。不勉強でリビラーナ文字が読めませんでしたわ」
「おっと、私とした事が。皆様が来る事を予想していたんですから、エルカノート文字で書けば良かったですね」
足を止めたルーメンが笑みを作った。背負っているオーラはそのままなので、テルラ達は気を抜けない。
「私の落ち度も有りましたので、ここでの事を忘れ、即刻退城して頂けるなら、不法侵入は不問と致しましょう」
「しかし――」
テルラが反論しようとしたが、ルーメンは一際大きな声を出し、右手を横一文字に振ってそれを遮った。
「問答無用ですわ。出て行きなさい」
「……!」
レイの両手が虹色に光り、プリシゥアが無意識にテルラに抱き付いた。
「潜在能力が勝手に発動してるっス! 私、透明なバリアを張ってるっスよ!」
「ええ? バリアなんて使えましたか? プリシゥア」
力一杯抱かれてちょっと苦しいテルラが驚く。
その横で拳銃を構えたまま冷や汗を垂らすグレイ。
「問題はバリアとかじゃない。カレン、ルーメンの攻撃力を奪え。迷ったら殺されるぞ今すぐやれ!」
「分かった!」
おでこにダブルピースを当てたカレンによって発射された光線がルーメンを照らす。
痛くも熱くもない光線に不思議そうな顔をするオレンジ髪の王女。思い付いた様に中空を見詰めた後、納得した風に頷く。
「攻撃力を奪え、とおっしゃりましたね。確かに私のステータスに変化が。なるほど、これなら規格外の力を持つ転生者とも戦えますね。この世界の女神もひとくせあります」
不利な状況である事を理解してもルーメンは怯まない。
「しかし――君達が世界を救うと言う大義名分を笠に着るのなら、私も国と父を守ると言う譲れない想いのために戦います。最終警告です。出て行きなさい」
プリシゥアに抱き上げられているテルラも怯まない。
「不法侵入は全面的に謝ります。しかし、不死の魔物を全て倒さなければ300年後にこの世界が終わるんです。僕達も引けません。王と思われる物を調べるだけです。危害を加えるつもりは有りません」
「調べるだけ?」
王女らしくない巻き舌で言うルーメン。
思わず地が出た事を恥じたルーメンは、咳払いしてから元の口調で続ける。
「カレンは錬金術を嗜んでいますわよね。なら、調べればとある可能性のひとつに辿り着くと思います。いえ、もう解決方法を思い付いているかしら? そのお顔は図星?」
ルーメンは射貫く様な瞳でカレンを見詰める。
カレンはレイの後ろに隠れながら頷く。
「思い付いては、いる。って言うか、ルーメンがお父さんを守る守る言ってるから、ルーメンは殺すしかない――それしかないと思ってるんだろうな、って感じ」
「あら、私が答えを導いてしまったとおっしゃりたい訳?」
「まぁ、うん。そうなるかな。ただ、ちゃんと調べれば他の方法も思い付くと思うんだ。調べさせてよ」
いきなり炎魔法を撃つルーメン。
火の玉がカレンの肩に当たり、花びらの様に散った。それなりの熱が空気に干渉しているが、カレンの服に焦げ目は無い。
「本当に攻撃力が無くなっていますわね。厄介ね……」
氷魔法、雷魔法と的を絞らずに撃つが、テルラ達に被害は無い。
「やられたからやりかえすぞ」
「ちょ――」
レイが止めようとしたが、それより先にグレイの拳銃が火を噴いた。威嚇射撃のつもりでルーメンの耳を掠めるくらいに外したが、目に見えない何かに弾かれた。
「防御魔法は機能してる。と言う事は、能力ダウンではなく、光を浴びた者の攻撃力のみを奪うだけって感じか」
そう呟いたルーメンはレイの手を見た。未だに虹色に光っている。カレンの技と同じくらい厄介な物と予想する。
「テルラくん達に恨みは有りませんが、力尽くで排除します」
ルーメンの殺気が膨れ上がったので、さすがにレイも剣を抜いた。
直後、金属音が謁見の間に響き渡る。
「あっぶないですわ。これは……ナイフ?」
食事に使うナイフがレイの足元に落ちた。
ルーメンは何も動いていないが、レイが剣を振る度にフォークやら皿やらが赤絨毯に落ちる。
対象が小さいので全てを落とせず、レイの鎧に当たって弾かれたり、ラベンダー色のスカートを破いたりしている。
「おかしいぞ。攻撃力を奪っているはずなのにレイが傷付いている!」
銃を一発ずつ撃ちながらルーメンの横に移動しているグレイが不思議に思うと、カレンがすぐに気付いた。
「……そうか! ストレージだ! コテージとか入ってるとこ! あそこから出した物は私の光を浴びていないから、普通に攻撃出来るんだ!」
カレンが再びおでこの光線を発射する。これでルーメンから飛んで来る食器を無効化出来ると思われたが、食器は横や後ろからも飛んで来る様になった。おでこが向いている方向にしか光線を発射出来ない事を見抜き、それを弱点としたらしい。
「くそっ、これは――薪か。何でも有りで厄介だな転生者!」
グレイの方にも木の棒が飛んで行くので、銃を撃っているヒマが無くなった。
百科事典クラスの大きい本がテルラに向けて落ち、プリシゥアのバリアに当たる。重い本はバリアを突き抜けてプリシゥアの背中に当たった。
「あいたっ。――私のバリアは、重量と勢いが有れば簡単に貫通する程度の弱さっス。ストレージとやらにどれだけ入ってるかは分からないっスが、このまま続くなら地味に危険っスよ!」
「むむむ! テルラに危害を与えると言うなら、わたくしも本気にならざるをえませんわよッ!」
テルラのピンチに反応して、レイの両手が発している虹色の光量が増えて行く。
「本気を出す前にここから出て行きなさい! このまま戦うとお父様が危ないわ!」
ルーメンの魔力のオーラも大きくなる。
ふたつの力がぶつかって、全員の視界がホワイトアウトした。
魔力のオーラを背負っているルーメンがゆっくりとテルラ達に近付いて来る。
慌てて隊列を整えてルーメンと対峙するレイ。相手の迫力に押されて思わず抜刀し掛けたが、すんでのところで思い留まる。こんな状況とは言え、他国の王女が謁見の前で王女に剣を向ける訳には行かない。
「申し訳ございません。不勉強でリビラーナ文字が読めませんでしたわ」
「おっと、私とした事が。皆様が来る事を予想していたんですから、エルカノート文字で書けば良かったですね」
足を止めたルーメンが笑みを作った。背負っているオーラはそのままなので、テルラ達は気を抜けない。
「私の落ち度も有りましたので、ここでの事を忘れ、即刻退城して頂けるなら、不法侵入は不問と致しましょう」
「しかし――」
テルラが反論しようとしたが、ルーメンは一際大きな声を出し、右手を横一文字に振ってそれを遮った。
「問答無用ですわ。出て行きなさい」
「……!」
レイの両手が虹色に光り、プリシゥアが無意識にテルラに抱き付いた。
「潜在能力が勝手に発動してるっス! 私、透明なバリアを張ってるっスよ!」
「ええ? バリアなんて使えましたか? プリシゥア」
力一杯抱かれてちょっと苦しいテルラが驚く。
その横で拳銃を構えたまま冷や汗を垂らすグレイ。
「問題はバリアとかじゃない。カレン、ルーメンの攻撃力を奪え。迷ったら殺されるぞ今すぐやれ!」
「分かった!」
おでこにダブルピースを当てたカレンによって発射された光線がルーメンを照らす。
痛くも熱くもない光線に不思議そうな顔をするオレンジ髪の王女。思い付いた様に中空を見詰めた後、納得した風に頷く。
「攻撃力を奪え、とおっしゃりましたね。確かに私のステータスに変化が。なるほど、これなら規格外の力を持つ転生者とも戦えますね。この世界の女神もひとくせあります」
不利な状況である事を理解してもルーメンは怯まない。
「しかし――君達が世界を救うと言う大義名分を笠に着るのなら、私も国と父を守ると言う譲れない想いのために戦います。最終警告です。出て行きなさい」
プリシゥアに抱き上げられているテルラも怯まない。
「不法侵入は全面的に謝ります。しかし、不死の魔物を全て倒さなければ300年後にこの世界が終わるんです。僕達も引けません。王と思われる物を調べるだけです。危害を加えるつもりは有りません」
「調べるだけ?」
王女らしくない巻き舌で言うルーメン。
思わず地が出た事を恥じたルーメンは、咳払いしてから元の口調で続ける。
「カレンは錬金術を嗜んでいますわよね。なら、調べればとある可能性のひとつに辿り着くと思います。いえ、もう解決方法を思い付いているかしら? そのお顔は図星?」
ルーメンは射貫く様な瞳でカレンを見詰める。
カレンはレイの後ろに隠れながら頷く。
「思い付いては、いる。って言うか、ルーメンがお父さんを守る守る言ってるから、ルーメンは殺すしかない――それしかないと思ってるんだろうな、って感じ」
「あら、私が答えを導いてしまったとおっしゃりたい訳?」
「まぁ、うん。そうなるかな。ただ、ちゃんと調べれば他の方法も思い付くと思うんだ。調べさせてよ」
いきなり炎魔法を撃つルーメン。
火の玉がカレンの肩に当たり、花びらの様に散った。それなりの熱が空気に干渉しているが、カレンの服に焦げ目は無い。
「本当に攻撃力が無くなっていますわね。厄介ね……」
氷魔法、雷魔法と的を絞らずに撃つが、テルラ達に被害は無い。
「やられたからやりかえすぞ」
「ちょ――」
レイが止めようとしたが、それより先にグレイの拳銃が火を噴いた。威嚇射撃のつもりでルーメンの耳を掠めるくらいに外したが、目に見えない何かに弾かれた。
「防御魔法は機能してる。と言う事は、能力ダウンではなく、光を浴びた者の攻撃力のみを奪うだけって感じか」
そう呟いたルーメンはレイの手を見た。未だに虹色に光っている。カレンの技と同じくらい厄介な物と予想する。
「テルラくん達に恨みは有りませんが、力尽くで排除します」
ルーメンの殺気が膨れ上がったので、さすがにレイも剣を抜いた。
直後、金属音が謁見の間に響き渡る。
「あっぶないですわ。これは……ナイフ?」
食事に使うナイフがレイの足元に落ちた。
ルーメンは何も動いていないが、レイが剣を振る度にフォークやら皿やらが赤絨毯に落ちる。
対象が小さいので全てを落とせず、レイの鎧に当たって弾かれたり、ラベンダー色のスカートを破いたりしている。
「おかしいぞ。攻撃力を奪っているはずなのにレイが傷付いている!」
銃を一発ずつ撃ちながらルーメンの横に移動しているグレイが不思議に思うと、カレンがすぐに気付いた。
「……そうか! ストレージだ! コテージとか入ってるとこ! あそこから出した物は私の光を浴びていないから、普通に攻撃出来るんだ!」
カレンが再びおでこの光線を発射する。これでルーメンから飛んで来る食器を無効化出来ると思われたが、食器は横や後ろからも飛んで来る様になった。おでこが向いている方向にしか光線を発射出来ない事を見抜き、それを弱点としたらしい。
「くそっ、これは――薪か。何でも有りで厄介だな転生者!」
グレイの方にも木の棒が飛んで行くので、銃を撃っているヒマが無くなった。
百科事典クラスの大きい本がテルラに向けて落ち、プリシゥアのバリアに当たる。重い本はバリアを突き抜けてプリシゥアの背中に当たった。
「あいたっ。――私のバリアは、重量と勢いが有れば簡単に貫通する程度の弱さっス。ストレージとやらにどれだけ入ってるかは分からないっスが、このまま続くなら地味に危険っスよ!」
「むむむ! テルラに危害を与えると言うなら、わたくしも本気にならざるをえませんわよッ!」
テルラのピンチに反応して、レイの両手が発している虹色の光量が増えて行く。
「本気を出す前にここから出て行きなさい! このまま戦うとお父様が危ないわ!」
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