さればこそ無敵のルーメン

宗園やや

文字の大きさ
227 / 277
第二十六話

5

しおりを挟む
 グラシラドの港町は木造平屋が密集していて、全体的に下町に近い雰囲気だった。
 防波堤の向こうで暮らす住人はミマルンと同じ褐色肌の黒髪ばかりで、テルラ達の薄い色の髪に白い肌は目立っていた。
 南国が初体験のテルラ、カレン、プリシゥアの三人はお上りさんの様に観光を楽しんだ。その一方で補給はしっかりと行い、翌日の夜明けと共に宿を引き払った。
「大陸の南側は基本男尊女卑なので、戦時中と合わせて、エルカノートとは比べ物にならないくらい女子供の旅は厳しい物となります。必要以上に気を付けて街道を北上しましょう」
 レイと並んで隊列の先頭を担当しているミマルンが厳しく言った。
 治安が悪いので、護衛を雇えるクラスの商人でも王都まで一本道になっている大街道以外は歩かないそうだ。商人が寄り道しないので小さな村に物資が行き渡らず、そんな村から武装した買い出し部隊が出る。その人達は警戒してピリピリしているから余計に治安が悪くなる、と言う悪循環が発生しているらしい。
「逆を言えば大街道は人通りだけは多いので、弱い野盗や魔物は近寄らないでしょう。無害そうな人からの不意打ちや飛び道具に気を付けていれば大丈夫でしょう。――それでは港から出ますよ」
 どんな攻撃魔法にも耐えられそうな頑丈な門は、夜明けと共に半開きにされた。鮮魚や干物を運ぶ馬車がひっきりなしに通っている横を、テルラ達は徒歩で進む。
「鮮魚は氷魔法で冷やされてるんスね。馬車から冷気が漏れてるっスよ」
 隊列のしんがりを担当しているプリシゥアがのんきに言う。同じくしんがりを歩いているグレイは、久しぶりの歩き旅に緊張して無言になっていた。
「散々治安が悪いと言われているので、野宿せずに宿を取りましょう」
 リーダーであるテルラに従い、村が有れば迷わず寄って宿を取った。
 ミマルンは王都と国境以外の地理に疎く、村と村の間隔が分からなかったので、用心のために村が有れば午前中でも宿を取った。
 金も日数も掛かる状況で街道を北上していると、テルラ達と同じ肌色の二人が前方から歩いて来た。黒髪褐色肌の人としかすれ違わなかったので、その二人はとても目立っていた。
「ミマルン!」
「ルロンド! ラカラ!」
 その二人が手を振ってミマルンの名を呼ぶと、ミマルンも同じ様に手を振って返した。
「お知り合いですか?」
 テルラが訊くと、ミマルンは今まで見た事の無い屈託の無い笑顔になった。
「はい、私の部下であり友人です」
「ご無事で何よりです、ミマルン! 手紙を受け取りましたので、お迎えに上がりました!」
「良く来てくれました、ルロンド」
 兜無しの全身鎧を着た金髪の女性がミマルンと握手をする。
 彼女と一緒に居た紫髪の女性がテルラ達に一礼した。こちらは動き易く身軽な服装で、大きな弓を背負っている。
「そちらがエルカノートの王女様と女神から直接能力を頂いた少年ですか。初めまして、私はラカラ・ルセーリ。ミマルンと三人部隊を組んでいる者です」
「同じく三人部隊、ルロンド・ニャシーです。ここより皆様の護衛をさせていただきます!」
 二人の女性が姿勢を正して名乗ったので、テルラ達も各々で名乗った。
「黒くないお二人はこの国の人なんですか? 特にラカラさんみたいな紫色の髪の人は初めて見ました」
 カレンが失礼な事を聞くと、ラカラは自分の髪を撫でながら微笑んだ。
「ああ、北の国では魔法が盛んではありませんでしたね。それなら知らないのも仕方が有りませんね」
「戦場に出られるレベルの強い魔力を持つ者は、魔力に合った色に変化する事が良く有るんです。ラカラは遠見と風魔法の両方が得意なのでこの色になっています。私は身体能力増強の魔法が得意なので、肌も髪も北の人みたいな薄い色になってしまいました」
 ルロンドに続いて言うミマルン。
「私は魔力を持っていないので、一般の人と同じ黒肌黒髪なんです」
「へぇ~。私が黒髪なのも、魔法が使えないからなのかな」
 自分の髪を撫でるカレンのおでこを見るミマルン。
「人間の色は様々な要素が組み合わさって発現する物です。肌の色は地域性の方が強く出るので、北でも強い魔力を持っていれば両親と違う色で育つ人も居たでしょう。――さぁ、先に進みましょう」
 大剣を持っている全身鎧のルロンドが前衛、弓を背負っているラカラがしんがりに加わって北上を再開した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

処理中です...