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第二十六話
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グラシラドの港町は木造平屋が密集していて、全体的に下町に近い雰囲気だった。
防波堤の向こうで暮らす住人はミマルンと同じ褐色肌の黒髪ばかりで、テルラ達の薄い色の髪に白い肌は目立っていた。
南国が初体験のテルラ、カレン、プリシゥアの三人はお上りさんの様に観光を楽しんだ。その一方で補給はしっかりと行い、翌日の夜明けと共に宿を引き払った。
「大陸の南側は基本男尊女卑なので、戦時中と合わせて、エルカノートとは比べ物にならないくらい女子供の旅は厳しい物となります。必要以上に気を付けて街道を北上しましょう」
レイと並んで隊列の先頭を担当しているミマルンが厳しく言った。
治安が悪いので、護衛を雇えるクラスの商人でも王都まで一本道になっている大街道以外は歩かないそうだ。商人が寄り道しないので小さな村に物資が行き渡らず、そんな村から武装した買い出し部隊が出る。その人達は警戒してピリピリしているから余計に治安が悪くなる、と言う悪循環が発生しているらしい。
「逆を言えば大街道は人通りだけは多いので、弱い野盗や魔物は近寄らないでしょう。無害そうな人からの不意打ちや飛び道具に気を付けていれば大丈夫でしょう。――それでは港から出ますよ」
どんな攻撃魔法にも耐えられそうな頑丈な門は、夜明けと共に半開きにされた。鮮魚や干物を運ぶ馬車がひっきりなしに通っている横を、テルラ達は徒歩で進む。
「鮮魚は氷魔法で冷やされてるんスね。馬車から冷気が漏れてるっスよ」
隊列のしんがりを担当しているプリシゥアがのんきに言う。同じくしんがりを歩いているグレイは、久しぶりの歩き旅に緊張して無言になっていた。
「散々治安が悪いと言われているので、野宿せずに宿を取りましょう」
リーダーであるテルラに従い、村が有れば迷わず寄って宿を取った。
ミマルンは王都と国境以外の地理に疎く、村と村の間隔が分からなかったので、用心のために村が有れば午前中でも宿を取った。
金も日数も掛かる状況で街道を北上していると、テルラ達と同じ肌色の二人が前方から歩いて来た。黒髪褐色肌の人としかすれ違わなかったので、その二人はとても目立っていた。
「ミマルン!」
「ルロンド! ラカラ!」
その二人が手を振ってミマルンの名を呼ぶと、ミマルンも同じ様に手を振って返した。
「お知り合いですか?」
テルラが訊くと、ミマルンは今まで見た事の無い屈託の無い笑顔になった。
「はい、私の部下であり友人です」
「ご無事で何よりです、ミマルン! 手紙を受け取りましたので、お迎えに上がりました!」
「良く来てくれました、ルロンド」
兜無しの全身鎧を着た金髪の女性がミマルンと握手をする。
彼女と一緒に居た紫髪の女性がテルラ達に一礼した。こちらは動き易く身軽な服装で、大きな弓を背負っている。
「そちらがエルカノートの王女様と女神から直接能力を頂いた少年ですか。初めまして、私はラカラ・ルセーリ。ミマルンと三人部隊を組んでいる者です」
「同じく三人部隊、ルロンド・ニャシーです。ここより皆様の護衛をさせていただきます!」
二人の女性が姿勢を正して名乗ったので、テルラ達も各々で名乗った。
「黒くないお二人はこの国の人なんですか? 特にラカラさんみたいな紫色の髪の人は初めて見ました」
カレンが失礼な事を聞くと、ラカラは自分の髪を撫でながら微笑んだ。
「ああ、北の国では魔法が盛んではありませんでしたね。それなら知らないのも仕方が有りませんね」
「戦場に出られるレベルの強い魔力を持つ者は、魔力に合った色に変化する事が良く有るんです。ラカラは遠見と風魔法の両方が得意なのでこの色になっています。私は身体能力増強の魔法が得意なので、肌も髪も北の人みたいな薄い色になってしまいました」
ルロンドに続いて言うミマルン。
「私は魔力を持っていないので、一般の人と同じ黒肌黒髪なんです」
「へぇ~。私が黒髪なのも、魔法が使えないからなのかな」
自分の髪を撫でるカレンのおでこを見るミマルン。
「人間の色は様々な要素が組み合わさって発現する物です。肌の色は地域性の方が強く出るので、北でも強い魔力を持っていれば両親と違う色で育つ人も居たでしょう。――さぁ、先に進みましょう」
大剣を持っている全身鎧のルロンドが前衛、弓を背負っているラカラがしんがりに加わって北上を再開した。
防波堤の向こうで暮らす住人はミマルンと同じ褐色肌の黒髪ばかりで、テルラ達の薄い色の髪に白い肌は目立っていた。
南国が初体験のテルラ、カレン、プリシゥアの三人はお上りさんの様に観光を楽しんだ。その一方で補給はしっかりと行い、翌日の夜明けと共に宿を引き払った。
「大陸の南側は基本男尊女卑なので、戦時中と合わせて、エルカノートとは比べ物にならないくらい女子供の旅は厳しい物となります。必要以上に気を付けて街道を北上しましょう」
レイと並んで隊列の先頭を担当しているミマルンが厳しく言った。
治安が悪いので、護衛を雇えるクラスの商人でも王都まで一本道になっている大街道以外は歩かないそうだ。商人が寄り道しないので小さな村に物資が行き渡らず、そんな村から武装した買い出し部隊が出る。その人達は警戒してピリピリしているから余計に治安が悪くなる、と言う悪循環が発生しているらしい。
「逆を言えば大街道は人通りだけは多いので、弱い野盗や魔物は近寄らないでしょう。無害そうな人からの不意打ちや飛び道具に気を付けていれば大丈夫でしょう。――それでは港から出ますよ」
どんな攻撃魔法にも耐えられそうな頑丈な門は、夜明けと共に半開きにされた。鮮魚や干物を運ぶ馬車がひっきりなしに通っている横を、テルラ達は徒歩で進む。
「鮮魚は氷魔法で冷やされてるんスね。馬車から冷気が漏れてるっスよ」
隊列のしんがりを担当しているプリシゥアがのんきに言う。同じくしんがりを歩いているグレイは、久しぶりの歩き旅に緊張して無言になっていた。
「散々治安が悪いと言われているので、野宿せずに宿を取りましょう」
リーダーであるテルラに従い、村が有れば迷わず寄って宿を取った。
ミマルンは王都と国境以外の地理に疎く、村と村の間隔が分からなかったので、用心のために村が有れば午前中でも宿を取った。
金も日数も掛かる状況で街道を北上していると、テルラ達と同じ肌色の二人が前方から歩いて来た。黒髪褐色肌の人としかすれ違わなかったので、その二人はとても目立っていた。
「ミマルン!」
「ルロンド! ラカラ!」
その二人が手を振ってミマルンの名を呼ぶと、ミマルンも同じ様に手を振って返した。
「お知り合いですか?」
テルラが訊くと、ミマルンは今まで見た事の無い屈託の無い笑顔になった。
「はい、私の部下であり友人です」
「ご無事で何よりです、ミマルン! 手紙を受け取りましたので、お迎えに上がりました!」
「良く来てくれました、ルロンド」
兜無しの全身鎧を着た金髪の女性がミマルンと握手をする。
彼女と一緒に居た紫髪の女性がテルラ達に一礼した。こちらは動き易く身軽な服装で、大きな弓を背負っている。
「そちらがエルカノートの王女様と女神から直接能力を頂いた少年ですか。初めまして、私はラカラ・ルセーリ。ミマルンと三人部隊を組んでいる者です」
「同じく三人部隊、ルロンド・ニャシーです。ここより皆様の護衛をさせていただきます!」
二人の女性が姿勢を正して名乗ったので、テルラ達も各々で名乗った。
「黒くないお二人はこの国の人なんですか? 特にラカラさんみたいな紫色の髪の人は初めて見ました」
カレンが失礼な事を聞くと、ラカラは自分の髪を撫でながら微笑んだ。
「ああ、北の国では魔法が盛んではありませんでしたね。それなら知らないのも仕方が有りませんね」
「戦場に出られるレベルの強い魔力を持つ者は、魔力に合った色に変化する事が良く有るんです。ラカラは遠見と風魔法の両方が得意なのでこの色になっています。私は身体能力増強の魔法が得意なので、肌も髪も北の人みたいな薄い色になってしまいました」
ルロンドに続いて言うミマルン。
「私は魔力を持っていないので、一般の人と同じ黒肌黒髪なんです」
「へぇ~。私が黒髪なのも、魔法が使えないからなのかな」
自分の髪を撫でるカレンのおでこを見るミマルン。
「人間の色は様々な要素が組み合わさって発現する物です。肌の色は地域性の方が強く出るので、北でも強い魔力を持っていれば両親と違う色で育つ人も居たでしょう。――さぁ、先に進みましょう」
大剣を持っている全身鎧のルロンドが前衛、弓を背負っているラカラがしんがりに加わって北上を再開した。
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