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第二十六話
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長い船旅は雑談かカードゲームくらいしかやる事が無かった。
数日経ってそれに飽きると、今度は釣りをした。釣りも数日で飽きたが、良い魚を釣り上げられれば次の食事で皿がひとつ増えるので、何もしないよりマシと釣り糸を垂れる。
釣りをするのは、プリシゥアとカレンとグレイ。
テルラはリーダーとしての書類仕事が有るらしく、この機会に纏めて片付けている。
レイは今更ながらも日焼けを気にしていて、船室内でテルラの仕事を手伝っている。
「そう言えば、銃って潮風で錆びないのかな。海に浸かった後は勿論分解掃除をしたけど、潮風でも必要なのかな」
グレイが羽織っている黒コートの陰からチラチラ見える長銃に気付いたカレンがふと疑問に思う。銃も鉄製品だなぁと思った時、海の近くでは農具やリヤカー等の鉄製品がすぐ錆びて困ると言う話を港町で聞いていたのを思い出したのだ。
「潮風でも錆が浮くから必要だ。毎日毎朝手入れをしているぞ」
「じゃ、私もしないといけないんだな」
「私も? って事は、カレンも銃を持ってるのか?」
「荷物持ちでも攻撃出来たらなぁって思って買ったんだ。ホラ、これ」
服の深いところに有るポケットから拳銃を取り出すカレン。海に落とさない様に厳重に押し込んでいたので、少々時間が掛かった。
「リボルバーだが、小さいな。護身用か?」
「え? いや、普通に武器のつもりだけど。グレイの真似で」
「って事は、店の人に言われるままに買ったな。その口径じゃ魔物どころか人も殺せないぞ」
「え? じゃ、私騙された?」
「騙されたってほどじゃないな。カレンを素人だと判断しての選択なら、店主は正しい。人間相手なら脅しに使えるし、腕を磨けば魔物も殺せなくもないしな。どれ、ちょっと貸してみろ」
釣り竿を椅子に固定してフリーハンドになったグレイは、カレンの拳銃を手に取ってみた。
色んな角度から確認する様に眺める。
「装弾数5か。って言うか、全然手入れしてないな。買った時に玉や油の説明をされなかったか?」
「説明されたまま手入れしているつもりだったけど」
「手入れをしてないんじゃなくて、やり方が甘いのか。こう言う甘さは痛い目見ないと分からないもんだが、武器で痛い目見たらあの世行だぞ。釣りの後で教えてやるから、今度は死ぬ気で覚えろよ」
そんな話をしているグレイにオペレッタが車椅子で近付いて来た。
「大事な話が有るんですが、構いませんか? グレイ」
「ん? なんだ?」
「グレイには選択をして頂きます。このまま船に乗り続けるか、テルラパーティに戻るか、の」
「……どう言う事だ?」
拳銃をカレンに返したグレイは、厳しい顔付きになってオペレッタに向き直った。
「勇ましい顔のグレイは海賊らしくて大好きですわ! って、おふざけしている場合ではありませんでした」
コホンと咳払いひとつしたオペレッタも真面目な顔付きになって理由を説明した。
本当はこのまま一人海賊を続けたいのだが、それではいけないと考え直した。
その切っ掛けは、テルラ達の再会の歓喜。
信じ合い、結束しているパーティを目の当たりにして、仲間って良いなと思った。
グレイが以前言っていた、船員は家族と言う考えが正しいと思う様になった。
だから、国に戻って仲間を探したい。
「いきなり国に帰るって言い出したのはそのせいか」
「ええそうです、グレイ。このオペレッタ号の船員は、あらくれ物やならず者ではいけません。そんな人間を私の仲間にしたくありません。なので、国に帰ってちゃんとした方を探す必要が有るんです」
「海賊としては間違った判断だが、考えや言ってる事は間違いじゃない。好きにすれば良いさ、船長」
「本音はグレイには船に残って頂きたいんですが、次の出航まで教わる事は無い。つまり、給料は出せない。船底で漕ぎ手をしている奴隷達も、退職金を渡して解放します。仲間探しがどれくらい掛かるか分からないので」
動かない自分の脚を見るオペレッタ。
「再び奴隷に戻って漕ぎ手になりたいと言うなら受け入れようと思っています。勿論、グレイも無給でも残りたいとおっしゃるのなら残って頂いても構いません。ですが、折角以前の仲間がいらっしゃるのですから、選択して頂く事にしました」
話を聞いていたカレンが目を輝かせて笑顔になる。
「戻って来なよ! テルラとレイも戻って来て欲しいはずだよ! ね、プリシゥア?」
少し離れたところで釣り糸を垂らしているプリシゥアが海を見詰めながら頷く。
「カミナミアのグレイの部屋もそのままっスからね。グレイが望めばふたつ返事でオッケーっスよ」
「はぁ~……」
溜息を吐きつつ自分の釣り竿を見るグレイ。引いている気がしたので、釣り竿を手に取った。
「答えを誘導されている気がするが、オペレッタの言う事は正しい。なにより、俺はタダ働きをしたくない。だから、テルラが許可したら、また陸でハンターしてみるよ」
グレイの釣り針には、名前の知らない小魚が掛かっていた。
おかずにはならなさそうだったので、そのままリリースした。
数日経ってそれに飽きると、今度は釣りをした。釣りも数日で飽きたが、良い魚を釣り上げられれば次の食事で皿がひとつ増えるので、何もしないよりマシと釣り糸を垂れる。
釣りをするのは、プリシゥアとカレンとグレイ。
テルラはリーダーとしての書類仕事が有るらしく、この機会に纏めて片付けている。
レイは今更ながらも日焼けを気にしていて、船室内でテルラの仕事を手伝っている。
「そう言えば、銃って潮風で錆びないのかな。海に浸かった後は勿論分解掃除をしたけど、潮風でも必要なのかな」
グレイが羽織っている黒コートの陰からチラチラ見える長銃に気付いたカレンがふと疑問に思う。銃も鉄製品だなぁと思った時、海の近くでは農具やリヤカー等の鉄製品がすぐ錆びて困ると言う話を港町で聞いていたのを思い出したのだ。
「潮風でも錆が浮くから必要だ。毎日毎朝手入れをしているぞ」
「じゃ、私もしないといけないんだな」
「私も? って事は、カレンも銃を持ってるのか?」
「荷物持ちでも攻撃出来たらなぁって思って買ったんだ。ホラ、これ」
服の深いところに有るポケットから拳銃を取り出すカレン。海に落とさない様に厳重に押し込んでいたので、少々時間が掛かった。
「リボルバーだが、小さいな。護身用か?」
「え? いや、普通に武器のつもりだけど。グレイの真似で」
「って事は、店の人に言われるままに買ったな。その口径じゃ魔物どころか人も殺せないぞ」
「え? じゃ、私騙された?」
「騙されたってほどじゃないな。カレンを素人だと判断しての選択なら、店主は正しい。人間相手なら脅しに使えるし、腕を磨けば魔物も殺せなくもないしな。どれ、ちょっと貸してみろ」
釣り竿を椅子に固定してフリーハンドになったグレイは、カレンの拳銃を手に取ってみた。
色んな角度から確認する様に眺める。
「装弾数5か。って言うか、全然手入れしてないな。買った時に玉や油の説明をされなかったか?」
「説明されたまま手入れしているつもりだったけど」
「手入れをしてないんじゃなくて、やり方が甘いのか。こう言う甘さは痛い目見ないと分からないもんだが、武器で痛い目見たらあの世行だぞ。釣りの後で教えてやるから、今度は死ぬ気で覚えろよ」
そんな話をしているグレイにオペレッタが車椅子で近付いて来た。
「大事な話が有るんですが、構いませんか? グレイ」
「ん? なんだ?」
「グレイには選択をして頂きます。このまま船に乗り続けるか、テルラパーティに戻るか、の」
「……どう言う事だ?」
拳銃をカレンに返したグレイは、厳しい顔付きになってオペレッタに向き直った。
「勇ましい顔のグレイは海賊らしくて大好きですわ! って、おふざけしている場合ではありませんでした」
コホンと咳払いひとつしたオペレッタも真面目な顔付きになって理由を説明した。
本当はこのまま一人海賊を続けたいのだが、それではいけないと考え直した。
その切っ掛けは、テルラ達の再会の歓喜。
信じ合い、結束しているパーティを目の当たりにして、仲間って良いなと思った。
グレイが以前言っていた、船員は家族と言う考えが正しいと思う様になった。
だから、国に戻って仲間を探したい。
「いきなり国に帰るって言い出したのはそのせいか」
「ええそうです、グレイ。このオペレッタ号の船員は、あらくれ物やならず者ではいけません。そんな人間を私の仲間にしたくありません。なので、国に帰ってちゃんとした方を探す必要が有るんです」
「海賊としては間違った判断だが、考えや言ってる事は間違いじゃない。好きにすれば良いさ、船長」
「本音はグレイには船に残って頂きたいんですが、次の出航まで教わる事は無い。つまり、給料は出せない。船底で漕ぎ手をしている奴隷達も、退職金を渡して解放します。仲間探しがどれくらい掛かるか分からないので」
動かない自分の脚を見るオペレッタ。
「再び奴隷に戻って漕ぎ手になりたいと言うなら受け入れようと思っています。勿論、グレイも無給でも残りたいとおっしゃるのなら残って頂いても構いません。ですが、折角以前の仲間がいらっしゃるのですから、選択して頂く事にしました」
話を聞いていたカレンが目を輝かせて笑顔になる。
「戻って来なよ! テルラとレイも戻って来て欲しいはずだよ! ね、プリシゥア?」
少し離れたところで釣り糸を垂らしているプリシゥアが海を見詰めながら頷く。
「カミナミアのグレイの部屋もそのままっスからね。グレイが望めばふたつ返事でオッケーっスよ」
「はぁ~……」
溜息を吐きつつ自分の釣り竿を見るグレイ。引いている気がしたので、釣り竿を手に取った。
「答えを誘導されている気がするが、オペレッタの言う事は正しい。なにより、俺はタダ働きをしたくない。だから、テルラが許可したら、また陸でハンターしてみるよ」
グレイの釣り針には、名前の知らない小魚が掛かっていた。
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