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第十二話
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青い空に白い雲の下、待機組は退屈な空気に包まれ始めた。魔物の襲撃が無く、戦闘の音も聞こえて来ないので、楽しみの無いピクニックに来た様な気分になる。
「このまま何も起こらずに済めば楽なんスけどねぇ」
しゃがみ込んで真っ先に気を緩めたプリシゥアがのんびりと言う。
「でも、不死の魔物は最低三匹は居るんだよね。ねぇ、カワモト。その報告をしたのはカワモトでしたよね。一匹はオニで、もう一匹は泡ですよね? 残りはどんなのなの?」
カレンも下ろしたリュックの横で座っているが、こちらはまだ少しは気を張っている。
「そう言えば、その事を聞いていませんでしたね。僕としたことがウッカリしてました。ぜひお聞かせください、カワモトさん」
テルラも聞く体勢になったので、立ったままのカワモトは腰に差した刀の柄に手を置いて応える。
「三匹目は『食い物の魔物』だ。食い物に擬態して、食おうとする人間を逆に食う。テルラには見えたかな。鬼の親分の横にポテトサラダの山が居ただろう。アレがそうだ」
「え、なにそれ怖い」
カレンとプリシゥアが揃って引く。
「確かに白いスライムみたいな物体が居ましたね。アレは不死の魔物ではなかったので気に留めていませんでしたが、アレは食べ物だったんですか」
「恐らく、俺が助けたいと思っている女が作り出した物だ。この世界に無い食材が使われてたからな。だから、アレには親分が居ないかも知れない。テルラは俺に潜在能力が無いって言ったろ? そんな感じで、特別な存在だと思われる」
テルラは眉間に皺を寄せて難しい顔をした。
「有り得る話ですね。三匹目はハズレである可能性を留意しておきましょう。どちらにせよ、要塞内に食べ物が残っていたとしても、絶対に手を付けてはいけないんですね」
「何日も無人だった要塞に残っている食い物に手を伸ばすマヌケは居ないだろうから、まぁ大丈夫だろう。……食うなよ?」
目を見て釘を刺されたプリシゥアはムッとした。
「なんスか。私が拾い食いする人間に見えるって言うんスか」
「いやぁ、君だけじゃなくて、全員が注意する事だから気を悪くしないで。って言うか、中は毒の泡だらけだから、そもそも忠告する意味が無いんだけど、話の流れ的にね」
若くて筋肉質な女性に詰め寄られ、早口で言い訳するカワモト。
テルラは話を戻す。
「報告では五匹居るかも? と言う事でしたが、後二匹居ると思われた根拠は?」
「一匹は、食い物の魔物を生み出した俺の女だ。なんとかって言う王子に魔物として召喚されたって女神ラトが言ってたからな。でも、それを確実な存在にすると色々と面倒なんで、あやふやにした。テルラ達は話が通じるから良かったけど、普通、魔物退治を仕事にしてる奴なんか魔物を見たら即殺す様な荒くれだろうしな」
「なるほど――って、女神ラト様の事を忘れていました!」
慌てて周囲を見渡すテルラ。
のっぺらぼう仮面の女神は、少し離れたところで立っていた。
視線を向けられている事に気付いた女神ラトは、フランクな仕草で手を振った。
「私が神気を出しているとみなさんの邪魔になりますので、気配を消しておりましたの。ですのでお気になさらず。用が無ければ忘れて頂いても構いません。私はこの世界の女神ではありませんから」
「そ、そうですか。では、申し訳ありませんが仕事を続けます」
「はい」
「それで、カワモトさん。残りの一匹は?」
「石床の下から気配がした。あの要塞には地下が有るらしく、そこからの気配で間違いは無い。魔物じゃなくて避難に遅れた人間では? と言われたら否定は出来ない。だからこっちは本当にあやふやなんだ。でも数が異様に多かったから人間とは思えないんだよな。親分が数匹居ても不思議じゃないくらいの数だった。そんな感じだ」
「分かりました。街に帰ったら騎士様達と情報を共有しましょう」
話が終わったので、再び退屈な空気に包まれた。
話題探しも無い沈黙の中、大勢の騎士兵士達が鳥の鳴き声を聞き続けた。
「このまま何も起こらずに済めば楽なんスけどねぇ」
しゃがみ込んで真っ先に気を緩めたプリシゥアがのんびりと言う。
「でも、不死の魔物は最低三匹は居るんだよね。ねぇ、カワモト。その報告をしたのはカワモトでしたよね。一匹はオニで、もう一匹は泡ですよね? 残りはどんなのなの?」
カレンも下ろしたリュックの横で座っているが、こちらはまだ少しは気を張っている。
「そう言えば、その事を聞いていませんでしたね。僕としたことがウッカリしてました。ぜひお聞かせください、カワモトさん」
テルラも聞く体勢になったので、立ったままのカワモトは腰に差した刀の柄に手を置いて応える。
「三匹目は『食い物の魔物』だ。食い物に擬態して、食おうとする人間を逆に食う。テルラには見えたかな。鬼の親分の横にポテトサラダの山が居ただろう。アレがそうだ」
「え、なにそれ怖い」
カレンとプリシゥアが揃って引く。
「確かに白いスライムみたいな物体が居ましたね。アレは不死の魔物ではなかったので気に留めていませんでしたが、アレは食べ物だったんですか」
「恐らく、俺が助けたいと思っている女が作り出した物だ。この世界に無い食材が使われてたからな。だから、アレには親分が居ないかも知れない。テルラは俺に潜在能力が無いって言ったろ? そんな感じで、特別な存在だと思われる」
テルラは眉間に皺を寄せて難しい顔をした。
「有り得る話ですね。三匹目はハズレである可能性を留意しておきましょう。どちらにせよ、要塞内に食べ物が残っていたとしても、絶対に手を付けてはいけないんですね」
「何日も無人だった要塞に残っている食い物に手を伸ばすマヌケは居ないだろうから、まぁ大丈夫だろう。……食うなよ?」
目を見て釘を刺されたプリシゥアはムッとした。
「なんスか。私が拾い食いする人間に見えるって言うんスか」
「いやぁ、君だけじゃなくて、全員が注意する事だから気を悪くしないで。って言うか、中は毒の泡だらけだから、そもそも忠告する意味が無いんだけど、話の流れ的にね」
若くて筋肉質な女性に詰め寄られ、早口で言い訳するカワモト。
テルラは話を戻す。
「報告では五匹居るかも? と言う事でしたが、後二匹居ると思われた根拠は?」
「一匹は、食い物の魔物を生み出した俺の女だ。なんとかって言う王子に魔物として召喚されたって女神ラトが言ってたからな。でも、それを確実な存在にすると色々と面倒なんで、あやふやにした。テルラ達は話が通じるから良かったけど、普通、魔物退治を仕事にしてる奴なんか魔物を見たら即殺す様な荒くれだろうしな」
「なるほど――って、女神ラト様の事を忘れていました!」
慌てて周囲を見渡すテルラ。
のっぺらぼう仮面の女神は、少し離れたところで立っていた。
視線を向けられている事に気付いた女神ラトは、フランクな仕草で手を振った。
「私が神気を出しているとみなさんの邪魔になりますので、気配を消しておりましたの。ですのでお気になさらず。用が無ければ忘れて頂いても構いません。私はこの世界の女神ではありませんから」
「そ、そうですか。では、申し訳ありませんが仕事を続けます」
「はい」
「それで、カワモトさん。残りの一匹は?」
「石床の下から気配がした。あの要塞には地下が有るらしく、そこからの気配で間違いは無い。魔物じゃなくて避難に遅れた人間では? と言われたら否定は出来ない。だからこっちは本当にあやふやなんだ。でも数が異様に多かったから人間とは思えないんだよな。親分が数匹居ても不思議じゃないくらいの数だった。そんな感じだ」
「分かりました。街に帰ったら騎士様達と情報を共有しましょう」
話が終わったので、再び退屈な空気に包まれた。
話題探しも無い沈黙の中、大勢の騎士兵士達が鳥の鳴き声を聞き続けた。
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