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第十二話
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「全軍停止!」
先頭のオカロ・ダインが叫ぶ。
列の中心付近に居るテルラパーティには彼の声は聞こえなかったが、前を行く騎士達が止まったので、自分達も自然と立ち止まった。
「順調ですね。では、作戦通りに待機しましょう」
林の中で地面が湿っているので、テルラはリュックを下ろしてシートを出した。
リーダーが休憩の支度を始めたので、他の仲間達も楽な姿勢を取った。
しかし周囲の騎士達は木々の陰に隠れているかも知れない魔物の襲来を警戒して気を抜かない。
「これからお隣の国の兵士が要塞内に入って泡退治をするのか」
テルラの横に座ったカワモトが確認する様に言う。
「彼等が言うには、軍事要塞なので、出入り口以外に人が通れる隙間は無いそうです。それはつまり、大量の泡が中に沢山残っていると言う事。そこに全員で入ったら、あっと言う間に全滅ですからね」
「簡単に出入り出来たら国境警備にならないからな」
「前回の鬼退治で壁が大きく崩れているので目に見えて泡の数は減っていますが、奥の方は残っているでしょう。どの様な形で進むにせよ、露払いは必要です」
泡退治のやり方の説明は全員が受けている。
まず手練れの騎士が崩れた地点から侵入する。
魔物の姿が無ければ、弓兵と先頭を交代して進む。
泡を発見次第、弓兵が遠距離攻撃で破壊。矢じりが無く、矢羽のみの低コストな矢を撃つので、いくら撃っても矢は無くならない。撃った矢を拾えば再利用も出来るが、相手は毒の泡なので、その取扱いは注意する。
万が一のために解毒の魔法が使える魔法使いが同行するが、北軍と南軍合わせても数人程度しか居ないため、本番では回復魔法が使えるテルラの出番も有るだろう。
泡が矢で壊せないほど頑丈だった場合は、その時点で全軍撤退。グレイの長銃で壊せる事は事前の狙撃で確認済みなので、再侵攻の場合は弓兵に代わって鉄砲兵が先頭に立つ事になる。ただし、鉄砲の数を揃えるには相当の時間と費用が必須なので、再侵攻は当分先になる。
「しかし、人間が通れる様な隙間は無い……か。火事が起こったら大惨事になりそうだが、そこは俺が心配する事じゃないな。それよりも、最初に俺が侵入した時は泡の数が少なくて、鬼が大量に居たんだがなぁ。状況が変わったんだろうか」
「変わったんだろ。オニが外に村を作ったのも、泡に追い出されたからじゃないのか? 昨日の戦いでも、オニ達はやたらと泡をビビっていた。アレは泡の毒性に懲りていると見た」
真っ先にシートに座ったグレイが言う。銃弾を持てるだけ持っているのでコートが重い。
「そうかもな。俺は人探しに一生懸命で鬼や泡の動きなんか良く見ていなかったから、現場の人間がそう言うならそうなんだろう。今俺達が心配しなきゃならないのは、万が一の時の退路だな」
カワモトが神妙に言うと、テルラも唇を引き締めて頷いた。
「はい。しばらく屋内での戦闘が続くでしょうから、そちらも注意しましょう」
先頭のオカロ・ダインが叫ぶ。
列の中心付近に居るテルラパーティには彼の声は聞こえなかったが、前を行く騎士達が止まったので、自分達も自然と立ち止まった。
「順調ですね。では、作戦通りに待機しましょう」
林の中で地面が湿っているので、テルラはリュックを下ろしてシートを出した。
リーダーが休憩の支度を始めたので、他の仲間達も楽な姿勢を取った。
しかし周囲の騎士達は木々の陰に隠れているかも知れない魔物の襲来を警戒して気を抜かない。
「これからお隣の国の兵士が要塞内に入って泡退治をするのか」
テルラの横に座ったカワモトが確認する様に言う。
「彼等が言うには、軍事要塞なので、出入り口以外に人が通れる隙間は無いそうです。それはつまり、大量の泡が中に沢山残っていると言う事。そこに全員で入ったら、あっと言う間に全滅ですからね」
「簡単に出入り出来たら国境警備にならないからな」
「前回の鬼退治で壁が大きく崩れているので目に見えて泡の数は減っていますが、奥の方は残っているでしょう。どの様な形で進むにせよ、露払いは必要です」
泡退治のやり方の説明は全員が受けている。
まず手練れの騎士が崩れた地点から侵入する。
魔物の姿が無ければ、弓兵と先頭を交代して進む。
泡を発見次第、弓兵が遠距離攻撃で破壊。矢じりが無く、矢羽のみの低コストな矢を撃つので、いくら撃っても矢は無くならない。撃った矢を拾えば再利用も出来るが、相手は毒の泡なので、その取扱いは注意する。
万が一のために解毒の魔法が使える魔法使いが同行するが、北軍と南軍合わせても数人程度しか居ないため、本番では回復魔法が使えるテルラの出番も有るだろう。
泡が矢で壊せないほど頑丈だった場合は、その時点で全軍撤退。グレイの長銃で壊せる事は事前の狙撃で確認済みなので、再侵攻の場合は弓兵に代わって鉄砲兵が先頭に立つ事になる。ただし、鉄砲の数を揃えるには相当の時間と費用が必須なので、再侵攻は当分先になる。
「しかし、人間が通れる様な隙間は無い……か。火事が起こったら大惨事になりそうだが、そこは俺が心配する事じゃないな。それよりも、最初に俺が侵入した時は泡の数が少なくて、鬼が大量に居たんだがなぁ。状況が変わったんだろうか」
「変わったんだろ。オニが外に村を作ったのも、泡に追い出されたからじゃないのか? 昨日の戦いでも、オニ達はやたらと泡をビビっていた。アレは泡の毒性に懲りていると見た」
真っ先にシートに座ったグレイが言う。銃弾を持てるだけ持っているのでコートが重い。
「そうかもな。俺は人探しに一生懸命で鬼や泡の動きなんか良く見ていなかったから、現場の人間がそう言うならそうなんだろう。今俺達が心配しなきゃならないのは、万が一の時の退路だな」
カワモトが神妙に言うと、テルラも唇を引き締めて頷いた。
「はい。しばらく屋内での戦闘が続くでしょうから、そちらも注意しましょう」
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