さればこそ無敵のルーメン

宗園やや

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第八話

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 それぞれのペースで聞き込みをしたパーティメンバーは、日が暮れて動けなくなる前に飯屋の前に戻った。
 一番に戻ったのはレイとカレン。
 数歩遅れて、テルラとプリシゥアが足取り重くやって来た。
「どうでしたか? テルラ」
 レイが訊くと、金髪の少年は首を横に振った。
「困っているが原因は分からない、と言った返事しかありませんでした。表情を見るに、そちらも収穫無しみたいですね」
 大袈裟に肩を竦めるカレン。
「もー全然。私達が行ったアップタウンは裕福な人達が住んでいる地域だからか、汚い恰好したハンターにはすっごく態度悪いの。しょうがないからレイが身分を明かして、王女様がお忍びで調べているって事にしてやっとよ」
「そこまでしても得る物は有りませんでしたわ」
 珍しくレイが疲労の篭った溜息を吐く。
「話はメシを食いながらしようか」
 気配も無く現れた黒コートのグレイが不機嫌に顎をしゃくる。
「そうですね。店先での立ち話は迷惑ですね」
 パーティーメンバーは店に入り、それぞれの財布で夕飯を頼んだ。テルラは質素な豆のスープとパンだったが、女性陣は力が付きそうな肉料理を頼んだ。
「僕達の方は収穫無しでしたが、グレイの方はどうでしたか?」
「怪しい動きは見られなかった。たった半日の調査では断言出来ないが、敵は全く情報収集をしていない気配がする。このクエストは解決に時間が掛かりそうだから、さっさと本命の方に行き、帰りにまたチャレンジするって手も有るな」
「確かに、ここで何日も足止めしていたら、ただでさえ協力的ではないリトンの街の不興を買ってしまうかも知れません」
 上品にナイフでステーキを切っているレイが言う。
 唐揚げを食べているプリシゥアと鳥胸肉の照り焼きに噛り付いているカレンも同意して頷いている。
「そうですね……。現在はちょっと不便なだけで実害はほとんど有りませんし、後回しでも良いかも知れませんね」
 テルラが今後の事を考えていると、グレイが注文していた鳥もも肉のオーブン焼きが遅れて運ばれて来た。
 それと同時に、立派な装備の男性二人が一行のテーブルに近付いて来た。
「お食事中失礼。貴方方は突発クエストを調べておられたハンターパーティですか?」
「そうですが、何か?」
 テルラが応えると、男性二人は軽く姿勢を正した。
「俺はこの街の勇者、アトイです。こちらは相棒の」
「勇者スヴァンです」
 スヴァンの肩に、掌サイズの子ザルが乗っていた。食べ物屋内でおいしそうな臭いが充満してるのに、行儀良く肩に座っている。とても良く躾られている。
「勇者様でしたか。僕がこのパーティのリーダー、テルラです」
「プリシゥアっス」
「カレンです」
「レイですわ」
 食事の手を止め、名乗るメンバー達。
「……グレイだ」
 食事の場なので海賊帽を脱いでいる黒コートの少女だけは、名乗ってからもも肉に齧り付いた。
「ええと、レイさんはお忍びで突発クエストに挑まれているとお聞きしました。その、貴女の正体は王女様だと。王家の協力を頂けるのなら、この街の勇者として、持っている情報をお伝えしなければと思いまして。王女を前にして跪かないのは失礼である事は重々承知していますが――」
 お忍びなので周りにバレない様に小声で囁いているアトイの言葉を、軽く右手を上げて遮るレイ。
「余りにも情報が無かったので身分を明かしましたが、このパーティのリーダーはこちらのテルラです。王家ではなく、わたくし達五人がクエストに挑みますので、そのおつもりで」
 金髪の少年に顔を向ける勇者達。
 王女の力を頼りたかったが、我を通して機嫌を損ねても良くないと考え、大人しく従う。
「分かりました。では、テルラくん。同席してもよろしいですか?」
「どうぞ。解決に役立つ情報をお持ちなんですか?」
 アトイ達は、テルラの質問に頷きながら椅子に座った。
 しかし、勇者達が口を開く前にグレイが余計な事を言った。
「解決出来る情報を持っているなら、とっくのとうに解決しているだろうさ」
「ハハハ、耳が痛いです」
 アトイは朗らかに笑った。
 直後、真顔になる。
「解決出来ないのは、勿論理由があります。暗闇の元凶と思われているのは、クーリエ・アンミと言う少女です」
「少女? 魔物ではないと」
「ええ、そうです、テルラくん。魔物ではないから、勇者である俺達では強く出られないんです。しかも、
その少女は自分が原因ではないと言い張っている」
「その子が原因だと思った理由は何ですか?」
 カレンが訊く。
「最初の闇は、彼女の自宅付近で起こりました。ごく小規模な範囲だったので、魔力持ちの彼女が疑われました。なので魔法使いを使った調査を始めようとしたら、街全体が暗闇に包まれる事態になったんです」
「へぇ。それは露骨に怪しいですね。怪し過ぎて罠っぽい」
「我々もそう思いました。ですので、アンミ家付近の魔力持ち全員を疑っています。それ以外の可能性も無限に有ります。人の仕業ではなく、アンミ家付近に魔物が居たのかも、とも。もしそうなら移動しているでしょう。つまり、解決出来ないのは疑惑が多過ぎるからなんです」
 アトイに続いて言うもう一人の勇者スヴァン。
「しかし、同性同年代の君達なら、件の少女も心を開くかもしれない。犯人でなくとも、何か知っているかも知れない。どうか力を貸していただけないだろうか」
「分かりました。明日、調べてみます」
「お願いします。俺達に伝言が有れば、役所の窓口を通してくれればすぐに。じゃ、お願いします」
 勇者達は、頭を下げてから店を出て行った。
 座ったまま見送ったパーティメンバー達は食事を再開したが、グレイはもも肉をワイルドに齧りながら店内の様子を見ていた。
「視線を感じるが……どこからの物かは分からないな。マジで厄介なクエストかも知れないが、切迫した気配も無い。訳分らんが、このどっちつかずの綱渡りみたいな感触もハンター仕事の特徴なのかな」
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