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メルディ国編

リジーさんの怒涛(?)の日々だヨ 雑事編①

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 カレーパーティー終了後、サージット隊長が簡易トイレを持ってきてくれた。馬が繋がれている所を見ると、やっぱり人間が動かすのは無理の様だ。うん。隊長も馬も面倒掛けてゴメンよ。
 さてと。わざわざ持って来てもらったんだから、しっかり確認しないと……なんだけど……。これって、あれだよ。使用後なんだよね……。
 そんな訳で、さくっと浄化魔法! 消臭・滅菌付き!! イメージは……病院の滅菌室あたり? 真っ白爽やか~みたいな?
 そんな風に、気合(?)を入れて魔法を使ってみたら、光が簡易トイレを包み――。

「……」
「……」
「……」
「……リジー殿……」

 光が収まった後には、真っ白な簡易トイレが出現。
 うん? もしやこれって新品同様?

『というよりも、これは新品状態ですね』

 はあっ!?

『リジーのイメージが真っ新まっさら――つまり、使用前の状態だった為、時空魔法が発動し、簡易トイレ――ではなく、移動式の牢が製造された時まで時間が巻き戻りました』

 巻き戻り? は? 真っ新状態とか、全く意識してなかったんだけど!?
 それに、こんな簡単に時空魔法って発動するの?

『しません』

 おい!?

『簡単には発動しませんが、全く発動しない訳ではありません。魔法が得意で、熟練度の高い者でしたら、何万回に1回くらいの割合で成功します』

 結構あり得ないであろう確率なんですが!?

『大丈夫です。リジーは完全なる魔法特化型。発動しようとも、誰も不思議には思いません』

 今まさに! サージット隊長に不思議がられているんだけどっ!?

『サージット隊長は時空魔法を判別する事は出来ません。ただ単に、浄化魔法を掛けようとも完全に綺麗にはならなかった物が、リジーの魔法によりいきなり真っ白になったから何が起きたのかを疑問に思っているだけです』

 ……本当に?

『はい。浄化魔法を強めに掛けたとでも言えば、納得すると思います』

 それで良いのか……とも思うが、馬鹿正直に成功確率の低い時空魔法の事を告げる訳にもいかない。
 仕方ないから、マルの助言通り、浄化魔法を強めに掛けたと言ったら。

「なるほど。魔法特化の方が使うと、こんなに違うのですね」

 うんうんと頷き、感心した様に呟くサージット隊長。納得されちゃったよ……。
 これはあれか? モンド隊長も十分納得しちゃうレベルって事?

『リジー』

 うん?

『リジーの場合、時空神と魔術神の加護を持っている為、時空魔法の失敗はあり得ません。使う時は気を付ける様にして下さい』

 はい~っ!?

『仮に時空魔法だと気が付かれても、熟練度が高いから発動しやすいとでも言って誤魔化して下さい。それで特に問題はありません』

 いやいやいや! 問題ありありでしょっ!?

『現在、この世界で時空魔法に気が付けるのは神と神獣くらいですので、問題はありません』

 じゃあ……現時点で気が付いているのは……。

『(リジーを見守っている神以外)いません。ルベルも、凄く綺麗になったとしか思っていません』

 せ……セーフ!! 助かった~~~~~~~~っ!!!
 ……ん? 何か今、声なき声があった気がするけど……?

『リジー。サージット隊長が首を傾げています。早く簡易トイレを確認した方が良いのでは?』

 あ、やっば。綺麗になった簡易トイレをぼーっと眺めている怪しい人になってしまった。
 あたしは視線を上下に移動させ簡易トイレを改めて確認した後、サージット隊長に向き直る。

「中を確認しても大丈夫?」
「あ、はい。どうぞ」
「これを作るにあたり、気を付けておくべき事はある?」
「そうですね――」

 簡易トイレの中を見つつ、サージット隊長に注意点を確認しておく。
 罪人が首を吊れない様にしておくとか、換気の事とか、排泄物の処理の為の工夫とか……。
 座る場所(?)は、蓋つきの洋式便座で、床の下の部分に排泄物を溜め、タンスの引き出しの様に取り出し、処分するらしい。……子供用のおまるを思い出すなぁ……。
 壁や床、天井、洋式便器等、全て殴っても壊れない様に衝撃耐性を付け、中では魔法を使えない様に魔封じを施している。
 他にも、臭いがこもらない様に常時換気されると同時に新鮮な空気が供給され、水分補給や手洗いに使える様、水の出る装置まで設置されている。罪人相手に至れり尽くせりじゃね?
 まあ、殆ど身動きの取れない空間だから、ストレスは凄そうだけど……犯罪者だし、生きてれば良いやって考えなのか?

「うーん……これは……どうなっている?」

 確認した限りだと、どう贔屓目(?)に見ても、間違いなく建設現場の仮設トイレだね。洋式、蓋付きという違いはあるけれど、犯罪者は移送されている間、トイレ住まいって事になる。
 犯罪者用だから、床も壁も厚めで、音が漏れない、外から聞こえない様になっている。自死を防ぐ為の工夫も見られるし、魔法のある世界だから付属されている機能も便利。
 顔を見る事もなく食事の提供も可能。簡易トイレのドアに付いている小窓が、この食事の提供場所だ。
 小窓といっても、中が見える、中から外が見える訳じゃないから何の為にあるんだと思ったら、この為だったらしい。閂を外すと、小窓になっていた物が倒れて簡易テーブルになり、その上に食事を乗せて、小窓の内側にあったドアポストの様な隙間から簡易テーブルをスライドさせて食事を渡している。
 食事は基本的に手掴み。簡単なサンドイッチの様な物が多いらしい。まあ、下手に食器類を渡して脱獄の道具とかに加工されたら事だから、この辺は当然かな? 水は魔道具である程度の量までは飲み放題だ――飲み過ぎを防ぐ為に水の供給量は決められている――し、サンドイッチに挟める具材さえ気を付ければ、栄養状態もそうそう悪くはならないだろうから、多分問題なし?

「ふむ……」

 簡易トイレの製造(?)に当たり必要になりそうな材料なんかはトキの中を探せばある気がする――既に資源神が揃えていそうな予感がする――し、形成は魔法で何とかなる。
 色々と細工が施されてはいるけれど、それについてはマル経由で技工神に指導してもらえば、それなりにはなる筈。仕上げ作業は必須だろうけれど……。
 トイレの内外に施されている魔法に関しても、どんなものかは説明されたからイメージ出来る。だからこれも何とかなる。
 後は、あの百貫デブサイズにするくらい――って、そうだったそうだった。

「サージット隊長!」
「はい?」

 作り方の考察をしていたあたしがいきなり声を掛けてきたからびっくりしたのだろう。サージット隊長が目を見開いている。
 まあ、それを気にせず、話しを進めるのがあたしだ!

「あの百貫デブが入る大きさにすると、普通の馬では引けない気がするんだよね」
「はい……仕方ないので、頭数を増やそうかと……」

 うん。やっぱりそうなるよね~。
 しかめっ面になっている所を見るに、馬を増やすのは苦渋の決断なんだろう。まあ、王都から遠く離れた町だからね。馬の数も限られており、本来なら余計な事に回したくないのも分かる。
 だがしかし!

「移送中は、あたしのゴーレム馬を提供するよ」
「はい?」
「かなり力が強いから、1頭で十分引けるから問題ないよ」
「え? えっと……よろしいのですか?」
「構わないよ。ゴーレム馬も自由に走り回れるって喜んでいたし」

 実際は、『荷物を引っ張りながら』が付くが、この辺は伝えない方が良いだろう。あたしの為にも、ゴーレム馬の為にも、そして何より、常識人枠であろうサージット隊長達の為にも。

「そういう事でしたら……宜しくお願いします」
「うん。どうせだから、移送式の牢を引っ張るのは全部ゴーレム馬にしておく?」
「いえ、流石にそこまでして頂くのは……」
「平気へいき。他のゴーレム馬も喜ぶだろうから問題ないよ」

 あの、リアカーを引っ張っている時の様子から……うん。確実に喜ぶと思う!!

「……申し訳ありません。では、宜しくお願いします」
「了解」

 頭を下げなくても良いのに……モンド隊長もそうだけど、隊長と付く人は真面目なのが多いのかね~。
 あ、違う。クズも居た。隊長達が真面目なだけだね、うん。
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