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甘い交流
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ソンドールとの何度目かの茶会は、シューリンヒ侯爵邸の庭園にした。
少し離れたところに侍女が見守る中、陽射しを避けてガゼボで寛いでいる。
「この茶は香りが変わってるな」
この頃はすっかり打ち解けて、ふたりだけのときは口調も砕けたものになっていた。
「フレーバーティーと言って、干した果物や花の香りを茶に移したものよ」
「へえ、面白いことを考えるな」
「お気に召したかしら?」
「ああ、この前のより好きだな」
(この前のは酸味のあるティーだったわね。あれは次からはやめておきましょ)
そよそよと風が心地よい。
ソンドールは積極的に話し込むときと、まったく話さずにただ寄り添って過ごすときがあり、今日は話したい日のようだ。
パトロールの時に見かけた大人気のスイーツを教えてくれたりと、よく話し、またリーリルハの話しも良く聞いてくれる。
だからリーリルハはソニアラの頼み事を思い切って相談してみることにしたのだ。
「騎士団の公開練習のチケットって手に入りにくいものなのかしら」
「らしいな。あれ、前に来たときはどうしたんだ?」
「幼馴染が買っておいてくれたの。公開練習って義務ではないのでしょ?ソンドール様はいつも参加されているの?」
「時間が許す限り参加してる。公開練習のチケット収入は騎士団の維持費に回されるんだが、その競技に参加すると装備品を優先的に支給してもらえるんだ」
「そうだったのね」
「俺みたいな弱小貴族の倅や平民で騎士に成り上がってきた者にとって、上質な武器や防具を買うのは至難の業だ。支給品が頼りだが、どうしても保ちがよくない。
直せる物は直せと言われるが、競技に出れば煩いことを言われずに、新しい装備の支給が受けられるんだよ」
リーリルハはその話に、初めて聞いた騎士団の厳しい状況に眉を寄せていたかと思うと。
「そうだわソンドール様!再来月のお誕生日は装備一式を贈らせてください!」
「えっ。そんな、いいからっ!一式なんてすごく高いぞ。それにどうせすぐ辞めるんだ」
「騎士団をお辞めになられても貴族である以上は、万一に備えた装備は必要よ。高いってどれくらい?」
リーリルハはスッとソンドールの耳元に口を寄せた。
あたたかな気配と甘い香りに、真っ赤になったソンドールには気づかずに。
「ジュルガー様は不貞相手のドレス代をしらっと私の名で買っていたのよ、お値段は・・・・・だったわ。それよりもお高いものかしら?」
「ま、マジか?」
「マジって何ですの?」
「本当に?っていう時に、騎士たちがよく使ってる」
「そうなのね!では、マジですわ!」
リーリルハは胸を張って盛大にドヤった。
(くっ、なんだこれ可愛い!俺の兄貴は本当に阿呆だな、あとで返せって言っても絶対に返してやらんぞ)
見惚れていると、今度は下から覗き込んで来た。
鼻孔を甘い香りに擽られて、ソンドールは初体験の試練に晒されている。
(ぐっふっ、ち、近い!)
しかし心身を鍛えた騎士はそんなことはおくびにも出さず、淡々と耐え凌ぐのだった。
少し離れたところに侍女が見守る中、陽射しを避けてガゼボで寛いでいる。
「この茶は香りが変わってるな」
この頃はすっかり打ち解けて、ふたりだけのときは口調も砕けたものになっていた。
「フレーバーティーと言って、干した果物や花の香りを茶に移したものよ」
「へえ、面白いことを考えるな」
「お気に召したかしら?」
「ああ、この前のより好きだな」
(この前のは酸味のあるティーだったわね。あれは次からはやめておきましょ)
そよそよと風が心地よい。
ソンドールは積極的に話し込むときと、まったく話さずにただ寄り添って過ごすときがあり、今日は話したい日のようだ。
パトロールの時に見かけた大人気のスイーツを教えてくれたりと、よく話し、またリーリルハの話しも良く聞いてくれる。
だからリーリルハはソニアラの頼み事を思い切って相談してみることにしたのだ。
「騎士団の公開練習のチケットって手に入りにくいものなのかしら」
「らしいな。あれ、前に来たときはどうしたんだ?」
「幼馴染が買っておいてくれたの。公開練習って義務ではないのでしょ?ソンドール様はいつも参加されているの?」
「時間が許す限り参加してる。公開練習のチケット収入は騎士団の維持費に回されるんだが、その競技に参加すると装備品を優先的に支給してもらえるんだ」
「そうだったのね」
「俺みたいな弱小貴族の倅や平民で騎士に成り上がってきた者にとって、上質な武器や防具を買うのは至難の業だ。支給品が頼りだが、どうしても保ちがよくない。
直せる物は直せと言われるが、競技に出れば煩いことを言われずに、新しい装備の支給が受けられるんだよ」
リーリルハはその話に、初めて聞いた騎士団の厳しい状況に眉を寄せていたかと思うと。
「そうだわソンドール様!再来月のお誕生日は装備一式を贈らせてください!」
「えっ。そんな、いいからっ!一式なんてすごく高いぞ。それにどうせすぐ辞めるんだ」
「騎士団をお辞めになられても貴族である以上は、万一に備えた装備は必要よ。高いってどれくらい?」
リーリルハはスッとソンドールの耳元に口を寄せた。
あたたかな気配と甘い香りに、真っ赤になったソンドールには気づかずに。
「ジュルガー様は不貞相手のドレス代をしらっと私の名で買っていたのよ、お値段は・・・・・だったわ。それよりもお高いものかしら?」
「ま、マジか?」
「マジって何ですの?」
「本当に?っていう時に、騎士たちがよく使ってる」
「そうなのね!では、マジですわ!」
リーリルハは胸を張って盛大にドヤった。
(くっ、なんだこれ可愛い!俺の兄貴は本当に阿呆だな、あとで返せって言っても絶対に返してやらんぞ)
見惚れていると、今度は下から覗き込んで来た。
鼻孔を甘い香りに擽られて、ソンドールは初体験の試練に晒されている。
(ぐっふっ、ち、近い!)
しかし心身を鍛えた騎士はそんなことはおくびにも出さず、淡々と耐え凌ぐのだった。
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