上 下
33 / 81

ジュルガーの部屋。

しおりを挟む
「あー、まったくいつまでこうしていればいいんだ・・・」

パートルム公爵家の自室に閉じ込められて以来、食事が運ばれる以外まったく外の様子がわからなくなった。
気心の知れた侍従が外され、食事の運搬も衛兵が持ってくる。
声をかけても聞こえないかの如く、ただ持って来て、食器を下げるだけ。



「コリールはどうしただろうな」

リュスティリア王女に不敬な発言をするなど、さすがのジュルガーでも有り得ない。
見たこともないほど王女が激昂していたことから、コリールはもうだめだろう。
いくら公爵家の子息でも不敬を問われたら、助けようがなかった。

「あれはまずかったよな・・・。コリール可愛かったけど、あそこまで愚かだとは」

しかし、それが自分が本来居るべきではなかった所に引き込み、マナーも常識も不十分なままに振る舞わせたせいだとは一顧もしない。
自分に責任の一端があるなどとは、これっぽっちも思っていないので他人事だ。


「まあ、コリールくらいの令嬢ならまた見つかるか。それより父上はいつまでこうして謹慎させるつもりなんだ!ハア」

ため息をつくと父の怒声が聞こえ、激昂したリュスティリア王女の顔が浮かんでは消える。

「リア殿下も、あんなに怒ることないと思うんだよな」

またため息をつく。


「あ、リルハからリア殿下に取りなしてもらおう!元はと言えば、アイツのせいでもあるんだからな」

独り言ちるとすぐにレターセットを取り出し、リーリルハへの命令がびっしり書き込まれた、失礼極まりない手紙を書き上げた。

侍従が、水入れの交換に来た際、リーリルハに手紙を出すよう頼んだところ、預かった侍従は即座にポリーア夫人の元へと持ち込む。

「奥様、旦那様がお出かけになられている間は奥様にご相談するようにと」
「聞いているわ。まさかと思うけど、また何かしでかしたの?」

夫人の悲しそうな顔を見ると、モリーズの帰宅を待ったほうがよかった気がしてくるのだが、そうも言っていられない。

「ジュルガー様がこれをリーリルハ嬢へと」

差し出された手紙の封を躊躇うことなく開け、便箋を引っ張りだすと、目を走らせる。

夫人の顔は悲しみから絶望、怒りへと変わっていった。



ハラリとその手から落ちた手紙を盗み見た侍従の、その口は外れてしまったかのようにカパリと開いてしまう。

手紙にはこう書かれていた。

「まず聞いているかもしれないが、リルハのせいでリア殿下が激怒されている。
私へのお怒りは誤解に過ぎないとリア殿下にお伝えするし、機嫌を取ること。

次にこの誤解のせいで、部屋で謹慎させられているので、暇つぶしになるような書籍や一人で楽しめるボードゲームをいくつかもってこい。
父上に咎められたら、必ずリア殿下のお怒りは誤解で、リルハが解くからもう謹慎させなくとも大丈夫だと伝えること!

それでも父上が出そうとしないときは、毎日食事とスイーツを差し入れだ。部屋に入れられから冷めたスープとパンくらいしか食べていない!

私のために迅速に動け!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる

田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。 お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。 「あの、どちら様でしょうか?」 「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」 「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」 溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。 ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。

【完結】貶められた緑の聖女の妹~姉はクズ王子に捨てられたので王族はお断りです~

魯恒凛
恋愛
薬師である『緑の聖女』と呼ばれたエリスは、王子に見初められ強引に連れていかれたものの、学園でも王宮でもつらく当たられていた。それなのに聖魔法を持つ侯爵令嬢が現れた途端、都合よく冤罪を着せられた上、クズ王子に純潔まで奪われてしまう。 辺境に戻されたものの、心が壊れてしまったエリス。そこへ、聖女の侍女にしたいと連絡してきたクズ王子。 後見人である領主一家に相談しようとした妹のカルナだったが…… 「エリスもカルナと一緒なら大丈夫ではないでしょうか……。カルナは14歳になったばかりであの美貌だし、コンラッド殿下はきっと気に入るはずです。ケアードのためだと言えば、あの子もエリスのようにその身を捧げてくれるでしょう」 偶然耳にした領主一家の本音。幼い頃から育ててもらったけど、もう頼れない。 カルナは姉を連れ、国を出ることを決意する。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

離縁の脅威、恐怖の日々

月食ぱんな
恋愛
貴族同士は結婚して三年。二人の間に子が出来なければ離縁、もしくは夫が愛人を持つ事が許されている。そんな中、公爵家に嫁いで結婚四年目。二十歳になったリディアは子どもが出来す、離縁に怯えていた。夫であるフェリクスは昔と変わらず、リディアに優しく接してくれているように見える。けれど彼のちょっとした言動が、「完璧な妻ではない」と、まるで自分を責めているように思えてしまい、リディアはどんどん病んでいくのであった。題名はホラーですがほのぼのです。 ※物語の設定上、不妊に悩む女性に対し、心無い発言に思われる部分もあるかと思います。フィクションだと割り切ってお読み頂けると幸いです。 ※なろう様、ノベマ!様でも掲載中です。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

完結 喪失の花嫁 見知らぬ家族に囲まれて

音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、目を覚ますと見知らぬ部屋にいて見覚えがない家族がいた。彼らは「貴女は記憶を失った」と言う。 しかし、本人はしっかり己の事を把握していたし本当の家族のことも覚えていた。 一体どういうことかと彼女は震える……

男装の公爵令嬢ドレスを着る

おみなしづき
恋愛
父親は、公爵で騎士団長。 双子の兄も父親の騎士団に所属した。 そんな家族の末っ子として産まれたアデルが、幼い頃から騎士を目指すのは自然な事だった。 男装をして、口調も父や兄達と同じく男勝り。 けれど、そんな彼女でも婚約者がいた。 「アデル……ローマン殿下に婚約を破棄された。どうしてだ?」 「ローマン殿下には心に決めた方がいるからです」 父も兄達も殺気立ったけれど、アデルはローマンに全く未練はなかった。 すると、婚約破棄を待っていたかのようにアデルに婚約を申し込む手紙が届いて……。 ※暴力的描写もたまに出ます。

処理中です...