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新たな婚約
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リーリルハとソンドールの婚約はあっという間に成立の運びとなった。
モリーズですら想像もしなかった早さで。
ジュルガーの代わりにリーリルハの婚約者になってくれと言われ、へそを曲げたようだったソンドールが、リーリルハの隣に立ち、うれしそうに話しかけているのだから。
(魔法でもかけられたかのようだなあ)
誰も口にはしないが、そう思っていた。
(ソンドールが、あんな顔を見せるなんて)
中でもユミンの驚きは最も大きかった。
ド貧乏コイント子爵の令息と聞いただけで手のひらを返す令嬢たちのせいで、段々頑なになっていったソンドールは、たぶん諦めたのだろう。
元々騎士学校では令嬢との出会いは多くなかった。だから背伸びをしてコイント子爵家で茶会をしようとしても、令嬢はまったく現れない。
爵位が低くても豊かな家の娘たちは、堂々と断わってきた。
貧しい家の娘たちからは貧乏は真っ平だと背を向けられ、せめてソンドールの出自を明かしてはどうかとナニエルにも何度も言ったのだ。
ナニエルが首を縦に振ることはなかった。
後ろ盾になるわけでも、金を出してくれるわけでもない公爵家の名を出して、相手の期待が大きくなることを良しとはしなかったのだ。
息子を大切に思う故の選択だったが、いつしかソンドールのまわりは損得抜きで付き合える令息たちだけになってしまう。
令嬢たちから選ぶ価値がないとされることに慣れ切ったソンドールは、自分から令嬢たちに距離を置き始めて今に至っていた。
せっかく養子に来てくれたのに、自分たちの力が及ばなかったために、騎士として評価されながらどこか厭世した目をするようになってしまったことを、ユミンはずっと気にしていた。
だから、リーリルハとふたりで頬を赤らめながら声を揃えて、婚約を受けると言ったときに喜びの声をあげてしまったのだ。
(ふたりともとってもうれしそうだわ)
本当なら、公爵家の息子のままならこれは当たり前の姿だったはず。
(ジュルガー様が愚かなことをしたお陰でチャンスが回ってきた!それを掴み取ったのはソンドール自身よ。これであの子は幸せになれる!)
(そうか・・・。上手くいったのはよかったが)
ナニエルは思いがけず生まれた複雑な感情に戸惑っていた。
ソンドールがシューリンヒ侯爵家に入るということは、則ち自分が子爵ではなくなるということ。コイント子爵はシューリンヒの保有爵位となってしまう。
今までも貴族とは言えないような貧乏暮しだった。騎士団の俸給もあるし、平民となっても困ることはないだろう。
そこまで考えて、ふと気づいたことがあった。
ナニエルは今もソンドールと同じように騎士団で騎士を務めている。税だけでは領民を守る金が足りないから、騎士団からの自分の俸給をも領地の支えとしていたのだ。
しかし、それをシューリンヒが持ってくれるというなら、もう自分の金は使わなくとも良いということではないだろうか!
コイントはほぼ名前だけと言う子爵だが、それを守るために必死でやってきた。
ナニエルは父のような才に欠け、継いでから先細る一方だが、それでも爵位を失わずに来たことだけは褒めてもいいと自分では思っている。
それを失くすのは耐え難きことだと思っていたが、平民なら十分すぎるほど豊かに暮らせる毎月の俸給を、これからは自分とユミンのためだけに使えると気づくと、爵位に縋り付く気持ちはあっという間に霧散した。
(これからは美味いものを食べ、旅行にも行ける!ユミンにも少しはお洒落をさせてやれるんだ)
孫が生まれて成長するまで、領地はシューリンヒに預けるだけだ。
シューリンヒ家なら孫に苦労をさせないため、土地を整備して良い状態で分筆することだろう。
そうこれから起こりうることを視点を変えて見てみたら、いいことしかないではないか!
(いいぞ!これはいい!運が回ってきたんだ)
ソンドールが犠牲になるならともかく、本人が気に入っているなら言うことはない!
欲が湧いたナニエルは、ひとりくつくつと笑い声を漏らした。
モリーズですら想像もしなかった早さで。
ジュルガーの代わりにリーリルハの婚約者になってくれと言われ、へそを曲げたようだったソンドールが、リーリルハの隣に立ち、うれしそうに話しかけているのだから。
(魔法でもかけられたかのようだなあ)
誰も口にはしないが、そう思っていた。
(ソンドールが、あんな顔を見せるなんて)
中でもユミンの驚きは最も大きかった。
ド貧乏コイント子爵の令息と聞いただけで手のひらを返す令嬢たちのせいで、段々頑なになっていったソンドールは、たぶん諦めたのだろう。
元々騎士学校では令嬢との出会いは多くなかった。だから背伸びをしてコイント子爵家で茶会をしようとしても、令嬢はまったく現れない。
爵位が低くても豊かな家の娘たちは、堂々と断わってきた。
貧しい家の娘たちからは貧乏は真っ平だと背を向けられ、せめてソンドールの出自を明かしてはどうかとナニエルにも何度も言ったのだ。
ナニエルが首を縦に振ることはなかった。
後ろ盾になるわけでも、金を出してくれるわけでもない公爵家の名を出して、相手の期待が大きくなることを良しとはしなかったのだ。
息子を大切に思う故の選択だったが、いつしかソンドールのまわりは損得抜きで付き合える令息たちだけになってしまう。
令嬢たちから選ぶ価値がないとされることに慣れ切ったソンドールは、自分から令嬢たちに距離を置き始めて今に至っていた。
せっかく養子に来てくれたのに、自分たちの力が及ばなかったために、騎士として評価されながらどこか厭世した目をするようになってしまったことを、ユミンはずっと気にしていた。
だから、リーリルハとふたりで頬を赤らめながら声を揃えて、婚約を受けると言ったときに喜びの声をあげてしまったのだ。
(ふたりともとってもうれしそうだわ)
本当なら、公爵家の息子のままならこれは当たり前の姿だったはず。
(ジュルガー様が愚かなことをしたお陰でチャンスが回ってきた!それを掴み取ったのはソンドール自身よ。これであの子は幸せになれる!)
(そうか・・・。上手くいったのはよかったが)
ナニエルは思いがけず生まれた複雑な感情に戸惑っていた。
ソンドールがシューリンヒ侯爵家に入るということは、則ち自分が子爵ではなくなるということ。コイント子爵はシューリンヒの保有爵位となってしまう。
今までも貴族とは言えないような貧乏暮しだった。騎士団の俸給もあるし、平民となっても困ることはないだろう。
そこまで考えて、ふと気づいたことがあった。
ナニエルは今もソンドールと同じように騎士団で騎士を務めている。税だけでは領民を守る金が足りないから、騎士団からの自分の俸給をも領地の支えとしていたのだ。
しかし、それをシューリンヒが持ってくれるというなら、もう自分の金は使わなくとも良いということではないだろうか!
コイントはほぼ名前だけと言う子爵だが、それを守るために必死でやってきた。
ナニエルは父のような才に欠け、継いでから先細る一方だが、それでも爵位を失わずに来たことだけは褒めてもいいと自分では思っている。
それを失くすのは耐え難きことだと思っていたが、平民なら十分すぎるほど豊かに暮らせる毎月の俸給を、これからは自分とユミンのためだけに使えると気づくと、爵位に縋り付く気持ちはあっという間に霧散した。
(これからは美味いものを食べ、旅行にも行ける!ユミンにも少しはお洒落をさせてやれるんだ)
孫が生まれて成長するまで、領地はシューリンヒに預けるだけだ。
シューリンヒ家なら孫に苦労をさせないため、土地を整備して良い状態で分筆することだろう。
そうこれから起こりうることを視点を変えて見てみたら、いいことしかないではないか!
(いいぞ!これはいい!運が回ってきたんだ)
ソンドールが犠牲になるならともかく、本人が気に入っているなら言うことはない!
欲が湧いたナニエルは、ひとりくつくつと笑い声を漏らした。
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