三日月のリアライズ

アラタ

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Dark room(暗室)➂

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 型番:C-ray-3333
  pw:prince_list031
 特徴:金髪・水色の瞳
 身長:178cm
 体重:Light-2    
 頭脳ランク:A
 年齢設定:二十歳
 性格:温厚で柔軟
    正義感が強いが後天的に獲得した傾向
 免許:乗り物全般
 職歴:社内教育課教官付アシスタント
    デザイン事務所オーナーのパーソナルケア
    家庭教師他

 型番下のprince_list031ってなんだ、王子のリスト? 意味不明だなと思いながら眺めていると、最後のページにタリスの所見が「仮定」として書き込まれていた。俺にとって、衝撃の言葉で。

 “リミッター設定されていない「喜」と「楽」の感情で動くなら、AIは問題行動と判断しない。つまり彼のAIは、暴力を喜びとしてとらえているのではないか――。”

 そこまで読んで愕然とした。暴力を、喜びとして……?

「ふざけるな。ジョージと俺が同じ嗜好の人種だって言うのか!」 
「落ち着いて、C-ray-3333。あくまで原因を探る上での仮定よ」

 廃棄の理由を探してるだけじゃないか。俺は正しいことをした。どうしてコンプリ社のやつらはそれがわからないんだ?

「仮定が事実なら、あんたを殺せるかもね。申し訳ないなんて感情、不良品の俺にはカケラもないんだから」

 タリスの顔に恐怖が浮かんだ。演技なのに、真に受けるとは大馬鹿だ。作った側なら本気か演技かくらい見極めろよ。

「殺人予告とは面白いですね。人間への反逆だ。君は間違いなく廃棄処分になるだろうねぇ」

 エイリーが、したり顔で笑んだ。こいつ。何かにつけ言動がイラつく。誰も彼も俺の言動の意味を理解しようともしない。

「プログラムのバグですわ。エイリーさん、まずは修正を試みます。判断はそれからでも遅くありません」

「私は正気に見えますよ。人間への敵意は明らかです。リスク・マネジメントの立場として甘いのではないですか。安全性を考慮し、警察に身柄の引き渡しを」

「C-ray-3333の所有権は廃棄するまでコンプリ社にあります。私が責任をもって原因究明にあたります」

「わからないな。安全より大事な価値がこのロボットにありますか? タリスさんでは話になりませんね。グレッグさん、聞こえますか。そちらの見解を伺いましょう」

 エイリーが呼びかけると、壁に埋め込まれたモニターがオンになり、幹部のグレッグが映った。

『私共はC-ray-3333の廃棄処分を支持します』

 ほかにも立ち会っている幾人かの声が聞こえた。「欠陥品だ」とか、「メンテは時間と金の無駄だ」とか言いたい放題罵っている。

 正しいのは人間で、間違っているのは俺のほう。製造過程でミスが重なったゆえの出来損ない――だとしても。

「おかしいのはあんたたちだ。虐待されてる幼い娘を見て見ぬ振りしろっていうのか。主人のジョージに絶対服従? サラを見殺しにしろと!」
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