ひとしづくの、愛。

秋野

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まだ第二性が発覚する前、蒼斗は自分がαだと信じていた。
なんとなく晴人がΩなのも感じ取っていたので、成人したら番になって結婚するつもりでいた。

しかし判定結果はβで、α至上主義の父は蒼斗が中学を卒業した時から好きなように生活すればいいと家から出されたのだ。

「はぁ…」

ため息を吐いた蒼斗の腰に、晴人がしがみついてきた。

「うっ…俺のせいで…迷惑かけてごめん、ね。」

ボロボロと大粒の涙を零す晴人の瞼に唇を落とし、そっとそれを拭ってやる。



その後、晴人が気を失うまで抱き合っていた。
寝ている間に後処理を済ませ、布団を掛けてやると気持ち良さそうに頬が緩んだのを確認して電気を消した。


「ん……」 

翌朝細く差し込む光で、目を覚ます。
隣で寝息を立てている蒼斗の頬に、そっと手を触れた。
すると少しくすぐったそうに身をよじる。

「んーおはよ。大丈夫か?」

薄く目を開けた蒼斗が眠そうな声で言って、サラサラと髪を撫でてくれた。

「…うん、ごめんね。」

今のところ発情は落ち着いている。

蒼斗の胸に擦り寄って、目を閉じる。

「謝る必要無いでしょ。」

腰に腕を回され、ギュッと抱き寄せられる。

「………すき。」

蒼斗の胸に更に頭を擦り付けた。

「うん、俺も。晴人は可愛いな。」

笑いながら髪を撫でて、顔を上げさせられた。
ちゅっと触れるだけのキスをされる。

ずっとこんな日が続いて欲しいな…なんて思いながら新たな1日が幕を開けた。
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