【R18】君は僕の太陽、月のように君次第な僕(R18表現ありVer.)

茶山ぴよ

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第15章 夢一夜

第283話 夢一夜(9)★

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ラブラブ入浴のお約束……といったらいいのか、将は聡に背中を流してもらうべく、背中を向けていた。

しかし、本当は聡の姿がもっと見たい将としては、この向きは少し不満だった。

鏡に聡の裸体が映るかと思ったが、古い鏡は少し曇っているのでぼんやりとしか映らない。

だから将は、少し所在無く、肘を膝に乗せたまま、後ろの様子をうかがうしかなかった。

聡は、将の広い背中と、その下のほうにある痛ましい火傷のあとの盛り上がりを久しぶりに見る気がした。

将の背中は久しぶりに見たせいか、また少し広くなっている気がした。

「将、あいかわらず筋トレいってるの?」

タオルについた石鹸の泡を塗りつけるように、聡は将の背中を洗い始めた。

何も塗らなくてもしっとりとした艶が乗っている褐色の肌は、筋肉の形に盛り上がっている。

だけど、その形はあくまでも流線型で、10代の青年らしく、しなやかさだ。

「ん……いや、大悟のこと以来、忙しくていってない」

答える声は何気ない調子だったけれど、それで聡は思い出す。

将には……この1ヶ月あまり、いろいろなことがありすぎたはずなのだ。

大悟のこと。そして巌の死。

昨日の、取り乱した将が、この皮膚の中に隠れている。

そう思うと聡は、目の前にある将の背中を優しくタオルで撫でるようにした。

将の健康な部分の皮膚と、その下でいまだに紅い大きな火傷の跡。

「いろいろ、あったもんね……」

そう呟きながらと、将が昔受けた心の傷跡の上を、聡は石鹸をつけたタオルで少し柔らかめに往復していく。

「ね、アキラはさ、いつも手で体洗うの?」

だけど、今朝の将は、すっかり元気になったようで、話題を変えてきた。

さっき聡が体を手で洗うところを見ていて感じた疑問らしい。

「うん。乾燥肌だから、あんまりこすらないほうがいいんだって」

「へえ」

しばらく、黙って聡に背中を任せられていた将は、

「やったげるよ」

急に振り返った。

「やだ。えっち」

聡は将を軽く睨むと、将の背中を擦っていたタオルで胸を隠してそっぽを向いた。

「じゃなくてー、今度は俺が背中を流してあげるからさ」

将は強引に聡をプラスチックの腰掛に座らせると、石鹸を泡立てた。

聡は将のタオルで胸を隠すようにして、少し俯くようにして背中に将の掌を待った。

華奢でなめらかな聡の背中は大きな手の将なら、二撫でもすれば洗い終わりそうだった。

将は、新品のアイスクリームの表面にスプーンをつけるときのような気分で聡の背中に石鹸をつけた手を伸ばす。

少し丸めた聡の肩甲骨が、ぴくっと動いた。

「なんだかくすぐったい」

「まだ触ってもないよ」

「だって……ふふふ」

聡は肩を震わせるようにして笑いがとまらないようだ。

将はそっと、聡の首の下に両手を這わせた。

そのとたん、聡は大きく体を震わせると、肩をすくめた。

本当にくすぐったいらしい。

将が聡の背中を撫でるたびに、聡は体を強ばらせ、すすり泣くような笑いを漏らした。

「ちょ、やだ……もう。くすぐったい」

聡は耐えかねて口に出すと、将の手から逃れようとした。

「ちょっと、もういい、もういいってばあ」

笑いすぎの聡は少し苦しそうに体をのけぞらした。

くすぐったさのあまり、タオルはとうに胸から外れている。

石鹸の泡をつけたまま、無防備に息をはずませている裸の聡を見て、将は3度目からまもないというのに、もう起き上がってしまった。

聡もそれに気付いたらしく、最後の笑いを飲み込むようにして黙り込んだ。

「あきら」

将は泡だらけの手で聡の肩を抱きとめると、いきなり唇をあわせた。

体中についた泡で、弾力ある聡の肌はまるでウナギをつかむように、ぬるりと逃げていく。

将はタイルの床に座り込むと、聡を横抱きに抱え込むようにしてやっと固定した。

朝日の中でより美しく血の色を透かしたその唇に自らのそれを押し当てる。

さらに泡でぬるつくのもかまわず、胸の丸みに手を這わす。

しかし、泡は将の指を表面で滑らせ、なかなかその柔らかさを実感できない。

「ダメだってば、将」

聡が意外に冷静な声を出した。

「……いいじゃん。もう1回しようよ」

将はなおも泡だらけのまま聡を抱きしめようとした。

「だめよ。高橋さんが朝風呂に入るっていってたでしょう」

将の動きが止まった。

具体的な言葉に、将は急速に萎えてしまった。

将は、聡にわざとため息をついてみせながら苦笑してみせると、ひょうひょうとシャワーを浴び、湯船へ向かった。

 

 


朝の陽射しが湯に差し込んでいる。

透明な鉱泉風呂は、水色のタイルを透かして、それ自身が少しだけラムネのような色にぬめっているように見えた。

「あー」

体を沈めると、お湯に押し出されるようにして声が出る。

今朝は冷え込んだのか、お湯は昨夜より少しだけぬるめに感じる。お湯に陽射しがキラキラと反射するのが清清しい。

聡は、どうやらシャンプーをすることにしたらしい。すこし上半身をかがめるようにしてシャワーで髪を濡らしている。

しばらくその白い後姿を眺めていた将だが、蝉の声に誘われるように湯の中を窓辺へと移動した。

サッシ窓からは、小さな清流が見えた。

きのうから、聞こえていたのはこの川のせせらぎだったのだ。

川の水は、この風呂の湯と同じくらい透き通って、朝日を透かして翡翠色に輝く深みには魚の影さえ見える。将はしばらくそれに見とれた。

体中が温まったおかげか、神経が急速に弛緩してくるのがわかる。

窓辺に手をかけて意識が溶けていくような将の額を、朝の風がひんやりと冷ます。

昨日のサービスエリアでもそうだったが、ここでも、もう秋の気配が漂っているのだ。

そういえば蝉の声も、ずいぶんあせっているように聞こえる。

蝉は……つがいと呼び合うために鳴きあっているのだ、と聞いたことがある。

早く結ばれないと、夏が終わってしまう。

そんな焦りだろうか。

つがい、という言葉を思い出した将は聡をふりかえった。

聡はシャンプーをシャワーで洗い流し終わるところだった。

シャンプーが目に入らないようにだろうか、目を固くつむっているのが将の位置からも見える。

髪の毛がすべておでこの上に固まった変な顔だけど、そんな聡の顔も将にはただ嬉しい。

自分の「つがい」といったら聡しかいない。

夏が終わる前に聡と、とうとう結ばれたんだ、と将は自分のものになった聡の後姿を目を細めてただ見つめた。

まるでお湯で浸されるような、温かいものが心にまで浸透してくる。

やがて、聡は濡れた髪を再びゴムで器用にアップにし、自分用の乾いたままのタオルを胸の前にたらして湯船のほうにやってきた。

「なーんで、隠すんだよ」

将はまた少し口を尖らせた。

「だって、恥かしいよ、こんな明るいところで」

と聡は、タオルごと慎重に湯船に身を沈めた。

「あー気持ちいい」

同じように思わず声を漏らす聡が、微笑ましくて将はそばにくるように誘った。

「こっちこいよ、川見えるよ」

「ほんと?」

聡はタオルで前を隠したまま、湯船の中をしゃがんだまま将のほうへやってきた。

「わー、本当だ。きらきらしてる」

木漏れ日が透き通った流れに反射して、不規則に煌いている。

胸の上まで湯に浸かったままサッシ窓から外をのぞきこんだ聡は歓声をあげた。

「きれーい……」

流れの行く末を眺める聡の顔、そして湯から出た鎖骨のあたりは、半透明に見えるほど輝いていた。

「アキラ、それ……」

将が目で指した聡の胸元には、浮いた聡の胸でタオルが盛り上がっていた。

「ん?」

聡にとってはいつものことだ。

「知らなかったー。おっぱいって水に浮くんだ」

将は感嘆してまじまじと、タオルをぴったりと貼りつかせたまま水面にゆらめく聡の乳房を眺めた。

「だって脂肪じゃない」

聡は濡れて甘栗色になった髪の下で笑った。

お湯のせいなのか、ばら色に染まった頬が朝日の中で微笑む。

将は、清流に見とれる聡に手を伸ばすと、お湯の中でもう一度抱き寄せた。

お湯は一瞬その水面を乱したが、すぐに元通りに静かになって、せせらぎと蝉の声だけが浴室に響いた。

お湯の中で胡座をかいた将の長い脚の中に、聡の腰はすっぽりと収まった。

せせらぎに耳を澄ますようでいて……きらめく川を眺めるようでいて、二人は二人しか感じていなかった。

「アキラのいうとおりになったな」

しばらくののち、将は聡の耳元に囁いた。

「なにが?」

お湯で弛緩しきった体が、なんとなく気だるい聡は、将の体にさらに寄りかかった。

「きのう。雨の中でさ。つらいことも乗り越えればいい思い出になるってさ。言ってたじゃん」

「そうね……」

塗りつぶしたような暗闇は明るい朝日に、冷たい雨は温かいお湯に。

今の二人から見ると、昨日の二人のつらさが嘘のようだ。

「乗り越えてよかった」

将は聡の体を後ろからそっと抱きしめる。

今度は聡のほうから、将に振り返るようにして口づけを求めてきた。

温かいお湯に浸されながらの、生ぬるい口の中の感触。甘い唾液。

せせらぎが、蝉の声が、二人から再び遠のきはじめた。

「もう」

ふいに聡は唇を離すと、軽く怒った顔をつくった。

将の手は、すでに聡の胸の丸みをとらえている。

「だって、アキラの体、エロすぎるんだもん」

将は笑いながら聡の首筋に顔をうめると、そのままの場所を口づけた。塩っ辛い汗のかわりに、鉱泉の甘い味がした。

口づけしながら、お湯の中で浮こうとする胸のふくらみを、押し留めるようにする。

ドリブルのような弾力も何もかも新鮮だった。

「だめよ……お湯が、汚れちゃう」

ついに聡が全身を桜色に染めて、ため息のように漏らした。
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