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第二章 交わる会合

052.満たされてない腹に、鳥の報せ

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「……殻を全部食べてもまだ欲しいみたいですよ?」
「そこは我慢させるしかないね」
「ふゅぅ……」
「カティアのご飯が最初に食べれたんだからワガママ言わないの。神力含んだ殻も食べたんだから、それがお腹いっぱいって覚えないと」
「ふゅ?」

 ぽんぽんと自分のお腹をさすってみても、大して膨らんでないからか実感が湧かないみたい。

(この小ちゃな身体のどこにあれだけ放り込んだのかわかってないようだなぁ?)

 僕がコフィー飲んでたら飲みたそうに目を輝かせてきたけど、苦いからやめさせた方がいいなぁと思って僕はメッと窘めた。

「クラウには苦いからだーめ」
「ふゅぅ……」
「もうすっかり主人が板についてきてるねカティア?」
「そうですか?」

 ペットは飼ったことはないので、昔の飼育委員の杵柄使ってみてる感じなんだけども。

「けど、聖獣達が交信してたなんて知らなかったなぁ。クラウ、君ずーっとカティアみたいな子を呼んでたの?」
「ふゅ?」

 くるんとフィーさんの方に振り返ったクラウだけど、相も変わらずわかってないのか首を傾げていた。

「……まあ、いいけど。とりあえず、君はカティアの守護獣になるんだから生まれたばかりだからって自覚は持ちなよ?」
「ふゅ!」

 まっかせてーってな感じにクラウはぴっと両手を上げた。

「愛らし過ぎますわ……」

 アナさんはぷるぷる肩を震わせながら口を押さえてた。出はしないだろうが、多分鼻血を防ぐためだろう。
 それくらいクラウの一生懸命さは可愛過ぎだ。僕だって間近で見てて同じように口を押さえたからね。
 とここで、エディオスさんの後ろから誰かがやってくるのが見えた。

「陛下。少しよろしいでしょうか?」

 さっきの人とは別の給仕のお兄さんが、手に紙で出来た立派な鳥を持ってきたのだ。

「ん?……って、その鳥の形は」
「はい。ヴァスシードからの通達になります」

 と言って、エディオスさんにその鳥を差し出してきました。

「んだよ、ユティの野郎なんかあったのか?」
「ユティ?」

 雰囲気からして、さっきも聞いたヴァスシードって国の王様のことだろうか?   もしくは例のお料理上手だと言う王妃様?
 セヴィルさんを見ると、ああ、と言って、

「ヴァスシードの国王でユティリウスと言うんだ」
「ほぉ……」

 エディオスさんが鳥を受け取り、ふって息を吹きかければ紙が折り紙を開いていくように崩れていき一枚の紙に変わった。

(……あれの仕組みって一体どうなってるんだろう?)

 エディオスさんが中身をさらっと読まれるとギョッと目を丸くされた。

「はぁ⁉︎   今日の夕刻にもう来るだと‼︎」
「何⁉︎」
「まあ、もういらっしゃいますの?」
「……なんか早くない?」

 反応は様々だったが、僕はいまいち飲み込めてないのでクラウと首を傾げていました。
 ただ、わかったのはヴァスシードの国王様が急にこのお城に来ることくらいだ。詳しいことはエディオスさんが読み上げてくれないからわからない。
 アナさんやセヴィルさんは席から立って、エディオスさんの後ろに回り込んでお手紙を覗き込んでおられました。

「まあ、ユティリウス様。この前は後三日後と仰ってましたのに……?」
「どうやらファルミアにも異存はないようだな。この速さ……おそらく転移方陣を使って来るようだが」
「だよなぁ……」

 エディオスさん頭痛がしたのか、こめかみを押さえておられました。

「っかし、ユティはともかくとしてなんでファルが止めに入らねぇんだ?」
「たしかに珍しいな。公務はあちらとて暇ではないはずだが……」

 事情を深く知らない僕でもそれは疑問に思う。
 いくらこの国が世界のトップでも、配下に散らばる国々の王様だって立派な役職だ。職務放棄してまでこちらに来るなんてよっぽどの理由があるはず。

「あの……陛下。それが真でしたらば」

 とここで放置状態になりかけてた給仕のお兄さんが割って入ってきた。
 焦るのも無理はない。国王様からの電報?は勝手に見ないだろうし内容が内容だから、お兄さんがオロオロしかけてる気持ちもわからなくもない。

「ああ。今も聞いてただろうがヴァスシードの国王夫妻が夕刻にここに来ることになりそうだ。マリウスとライガーには食事は俺らと一緒にするように言っておけ。護衛や使用人らの方は中層を一部使っていいから対応は任せる」
「はっ」

 お兄さんは一礼すると足早に裏へと行ってしまった。そんな粗相はこの場合誰も気にしていないから無視。
 ただ、さらっと決まっちゃったけど初対面の僕やクラウが同席してもいいのかな?

「ん?    カティアどうかした?」

 話に加わってなかったフィーさんが僕が考え込んでたのを不思議そうに首を傾げた。

「あ、いえ。そんな大袈裟なことではないんですが」
「十中八九、君がユティ達と同席してもいいのか悩んでたんでしょ?」
「え、はい……」

 やっぱりバレてましたか。初日から僕は顔に出やすいって言われてたしね。
 そしてフィーさんが、くすりと口元を緩めた。

「遠慮する必要はないと思うよ?    君ももうこの城の一員と言っても過言じゃないし」
「そ、そうでしょうか?」
「水くせぇなぁ、カティア。誰もお前が邪魔なんて思ってないぜ?」
「ああ」
「そうですわよ、カティアさん」
「あ、ありがとうございます……」

 嬉しいお言葉に胸がなんだかこしょばゆい。
 まだ出会って1週間くらいなのに、もう皆さんと過ごすのが当たり前になってきている。僕って、家族やツッコミ親友以外はコミュニケーションが乏しかったから、こんな親身になってくれる人達からの優しい言葉や態度には弱いんです。
 愛想がなかったわけじゃなくて差し障りのない普通のお付き合いと言うか。昔の僕からじゃ考えられないくらい毎日がとっても楽しい。

(そ、それに、こ、婚約者まで出来たもの。お互いの気持ちは確認し合ってないけどさ)

 未だ美形さんとそう言う関係になれたなんて信じ難い気持ちでいっぱいだ。

「ん?    エディオス、お前この間ユティリウスに識札を飛ばしていなかったか?」
「あ?」

 セヴィルさんの問いに、エディオスさんは思い出すべく顎に手を添えて首を捻り出した。
 しばらく唸ってたが、ややあってさぁーと血の気が引くのがわかるくらい青ざめていった。

「……直接的ではねぇが、カティアのこと知らせたな」
「おそらくそれだろう……」
「ですわよね」
「ぼ、僕のことですか?」

 まさかセヴィルさんが僕の御名手になったとかじゃないでしょうね⁉︎

「来たら美味いもん食わしてやるってくらいだ。ゼルとカティアの御名手のことは時期が来るまで秘匿すんのがいいだろ?    いくらユティにだからって言うわけねぇよ」
「そ、そうですか……」

 それにはほっと出来ました。
 セヴィルさんも小さく息を吐かれていた。

「ですが、それだけでしたらファルミア様がお止めになられない理由にはならないと思われますが」
「……たしかに」
「だよなぁ?」
「あの公務重視のミーアがユティと一緒くたになってそんな急いで来るほどでもないよねぇ?」

 と、皆さん渋い顔色になってしまわれた。
 僕はと言うと、王様と王妃様が来るからにはピッツァを振舞ってくれってエディオスさんに頼まれていたから、どんなのを用意しようか悩むしかなかった。

(だって、あの王妃様が来るんだよ?)

 料理好きだから家庭的な奥様なイメージとかしてたけど、王妃様と言う立場上厳しい面も持ち合わせなきゃいけないだろうから多分違うかも?
 だけど、舌が肥えてる上に料理上手な方に僕なんかがどんなピッツァ出せばいいのか。普通で大丈夫だろうか?

「ふゅぅ……」

 クラウが眠たげな声を漏らした。
 さっきから静かだなと思ってたら眠たかったんだね。僕は抱っこしてからトントンと翼上の背中を軽く叩いてあげた。
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