スライムからパンを作ろう！〜そのパンは全てポーションだけど、絶品！！〜

第598話 人生色々

　シェリーとトラディスに、一から転生してきた経緯を説明したんだけど。

　話し終わったら、二人にぎゅっと抱きつかれた？？


「……二人とも？」

「「いい人過ぎる！！」」

「へ？」


　首が動いてたら傾げていただろうけど、二人がさらにぎゅーって抱きつくから出来なかった。


「助けるために死んじゃったのもだけど」

「懐大き過ぎ！　普通そんなあっさり受け入れる！？」

「い、いや……まあ。仕方なかったし？」

「「それで片付ける！？」」


　息ぴったりだけど、僕としては死んだ実感があんまりないから……あっさりしていたんだよね？

　お師匠さんも同じだったのか、苦笑いしてたし。


「パターンにもよるが、転生者は神のミス以外に意向で運命を動かせられるんだ。私の場合は、神に救ってもらったパターンだな」

「お師匠さん？」

「私の前世は、正直言って家の内部が腐っていた。今も思い出せるが親に感謝の念など浮かばない。……だから、こちらでは病で先に逝かれても、いい家族だった。一時的でもその場にいられたのには、感謝しか浮かばん。それに今では、新しい家族を得られるんだ」


　家族の形なんて、同じものはないと言われているけど。

　お師匠さんの場合は、そうじゃなかったんだ……。レイアさんが婚約者になって嬉しいってずっと言ってるけど、それは本当に心から……レイアさんが大好きだって気持ちがあるから、言える言葉。

　僕もエリーには言いたいけど、生半可な気持ちと言葉で言ってはいけない。

　お師匠さんは、その域にもういるんだ。


「……僕も、ちょっと苦労したけど。おふたりはそれ以上ですね」

「「「いやいやいや」」」


　でも、トラディスがぽつんとつぶやいた言葉には、シェリーもいっしょに全員否定したけどね！？


「君は君で、苦労したことに変わりない。それを最小限と思わないように」

「……そうですか？」

「今が充実しているけど、昔の苦労を大したことのないように言えるのはまだ早い。あの経験があって、出会えた存在の大きさを理解しているにしても……成人したての若い人間は意見を履き違えることが多い。それは間違えないように」

「……お師匠さんがお師匠さんだー」

「前世合わせて、五十年くらい生きた人間だからな」

「「「わぁ」」」

「数十年でこんな達観してるんだねー？」

「精霊程ではないが、密な生き方をしているだろう？」

「面白いー」


　とりあえず、叱られるとは別だっただけど。

　お師匠さんからは、人生談のような教えをいただくことができたよ。

　シェリーたちからも、勢いで動いたことを謝罪されてからもう一度お茶をするのにスバルで過ごすことになった。