164 / 204
のっぺらぼう
第2話 手掛かり
しおりを挟む
風吹はああ言ったが、すぐに出会えるとは限らない。
界隈と言うのは、何も一箇所ではないらしい。名古屋もとい、愛知県などでも各地域。県外でも星の数ほどあるらしい。
それほど、人間より数は少ないが長い年月を生き続けているあやかし達は数多くいるのだ。
昼間、辰也が偶然人間界でぶつかったのっぺらぼうもそのひとり。出会えるだけで奇跡なのに、また会えるのは非常に難しい。
しかし、芽生えた恋心のようなものも無駄にしたくないので、行きつけでもある楽庵へと守護であるかまいたちと向かう。
その途中で、久しぶりに恩人でもある別のかまいたちの水緒と出会えた。
「悩ましい顔じゃねぇか?」
タバコをふかしているのは相変わらずだが、辰也の心を読んだかのようにニヤついた笑顔になった。
「……バレてます?」
「さあな? だが、お前さんのその顔は……誰かに懸想している顔だ」
「けそう??」
「古い言葉だ。誰か好いてんだろ??」
「……バレバレじゃないですか」
辰也の腕の一件もだが、相変わらずこのかまいたちには頭が上がらない。なので、正直に昼間の出来事を話した。
「……ほぉ? のっぺらぼう?? どんな奴だ??」
「え? どんなって??」
「あっしら、あやかしは……一の種族に対して一匹とかじゃねぇ。複数いんだ。あっしや奈雲らがそうだろう??」
「あ~……そっか」
たしかに、狐耳やたぬき耳のあやかしが複数いるように、かまいたちも同じだった。なら、あののっぺらぼうもまだ他に同族がいるのだろう。
とりあえず、服装などの特徴を水緒に話してみた。
「ほーん? そりゃ、情報屋だろうな??」
楽庵に着いて、それぞれ熱燗を頼んだところで……思い当たったのか、水緒がそれらしいあやかしの特徴を口にした。
「情報屋??」
ゲームや小説に漫画などで、なんとなく耳にした程度の知識でしかないが……現実でまだあるのだと少し驚いた。しかし、人間以上に長い月日を生きるあやかし達なら事情は違って当然。
「おう。芙美っつーのっぺらぼうでな? ちぃっとおっちょこちょいだが、情報屋としての腕は悪くない。この界隈にもちょこちょこ顔出しするから……こことかにも来るんじゃねぇか?」
「芙美さんですか?」
料理に集中していた大将の火坑も、知っている客なのかこちらの会話に混ざってきた。
「大将さん! 知っているんですか!?」
「ええ。多い時で、週三くらい来られる常連さんなんですよ?」
「常連……」
辰也も常連ではあるが、そこまで頻繁に来られてはいない。今は春先で、新入社員の研修などもあるから……今日のようにたまたま来れる日くらいでしか界隈に足を運べない。
しかし、これで望み薄にはならない。
手掛かりが出来たのだから……と、辰也は火坑に今日の代金のための心の欠片を取り出してもらった。
「かぼちゃですか?」
出てきたのは、種やワタを抜いたかぼちゃの塊。
なら、と火坑は手早く出来るかぼちゃ料理を振る舞ってくれると言ってくれたのだ。
界隈と言うのは、何も一箇所ではないらしい。名古屋もとい、愛知県などでも各地域。県外でも星の数ほどあるらしい。
それほど、人間より数は少ないが長い年月を生き続けているあやかし達は数多くいるのだ。
昼間、辰也が偶然人間界でぶつかったのっぺらぼうもそのひとり。出会えるだけで奇跡なのに、また会えるのは非常に難しい。
しかし、芽生えた恋心のようなものも無駄にしたくないので、行きつけでもある楽庵へと守護であるかまいたちと向かう。
その途中で、久しぶりに恩人でもある別のかまいたちの水緒と出会えた。
「悩ましい顔じゃねぇか?」
タバコをふかしているのは相変わらずだが、辰也の心を読んだかのようにニヤついた笑顔になった。
「……バレてます?」
「さあな? だが、お前さんのその顔は……誰かに懸想している顔だ」
「けそう??」
「古い言葉だ。誰か好いてんだろ??」
「……バレバレじゃないですか」
辰也の腕の一件もだが、相変わらずこのかまいたちには頭が上がらない。なので、正直に昼間の出来事を話した。
「……ほぉ? のっぺらぼう?? どんな奴だ??」
「え? どんなって??」
「あっしら、あやかしは……一の種族に対して一匹とかじゃねぇ。複数いんだ。あっしや奈雲らがそうだろう??」
「あ~……そっか」
たしかに、狐耳やたぬき耳のあやかしが複数いるように、かまいたちも同じだった。なら、あののっぺらぼうもまだ他に同族がいるのだろう。
とりあえず、服装などの特徴を水緒に話してみた。
「ほーん? そりゃ、情報屋だろうな??」
楽庵に着いて、それぞれ熱燗を頼んだところで……思い当たったのか、水緒がそれらしいあやかしの特徴を口にした。
「情報屋??」
ゲームや小説に漫画などで、なんとなく耳にした程度の知識でしかないが……現実でまだあるのだと少し驚いた。しかし、人間以上に長い月日を生きるあやかし達なら事情は違って当然。
「おう。芙美っつーのっぺらぼうでな? ちぃっとおっちょこちょいだが、情報屋としての腕は悪くない。この界隈にもちょこちょこ顔出しするから……こことかにも来るんじゃねぇか?」
「芙美さんですか?」
料理に集中していた大将の火坑も、知っている客なのかこちらの会話に混ざってきた。
「大将さん! 知っているんですか!?」
「ええ。多い時で、週三くらい来られる常連さんなんですよ?」
「常連……」
辰也も常連ではあるが、そこまで頻繁に来られてはいない。今は春先で、新入社員の研修などもあるから……今日のようにたまたま来れる日くらいでしか界隈に足を運べない。
しかし、これで望み薄にはならない。
手掛かりが出来たのだから……と、辰也は火坑に今日の代金のための心の欠片を取り出してもらった。
「かぼちゃですか?」
出てきたのは、種やワタを抜いたかぼちゃの塊。
なら、と火坑は手早く出来るかぼちゃ料理を振る舞ってくれると言ってくれたのだ。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
あばらやカフェの魔法使い
紫音
キャラ文芸
ある雨の日、幼馴染とケンカをした女子高生・絵馬(えま)は、ひとり泣いていたところを美しい青年に助けられる。暗い森の奥でボロボロのカフェを営んでいるという彼の正体は、実は魔法使いだった。彼の魔法と優しさに助けられ、少しずつ元気を取り戻していく絵馬。しかし、魔法の力を使うには代償が必要で……?ほんのり切ない現代ファンタジー。
母が田舎の実家に戻りますので、私もついて行くことになりました―鎮魂歌(レクイエム)は誰の為に―
吉野屋
キャラ文芸
14歳の夏休みに、母が父と別れて田舎の実家に帰ると言ったのでついて帰った。見えなくてもいいものが見える主人公、麻美が体験する様々なお話。
完結しました。長い間読んで頂き、ありがとうございます。
セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】
remo
恋愛
橘 あおい、30歳目前。
干からびた生活が長すぎて、化石になりそう。このまま一生1人で生きていくのかな。
と思っていたら、
初めての相手に再会した。
柚木 紘弥。
忘れられない、初めての1度だけの彼。
【完結】ありがとうございました‼
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
離縁の脅威、恐怖の日々
月食ぱんな
恋愛
貴族同士は結婚して三年。二人の間に子が出来なければ離縁、もしくは夫が愛人を持つ事が許されている。そんな中、公爵家に嫁いで結婚四年目。二十歳になったリディアは子どもが出来す、離縁に怯えていた。夫であるフェリクスは昔と変わらず、リディアに優しく接してくれているように見える。けれど彼のちょっとした言動が、「完璧な妻ではない」と、まるで自分を責めているように思えてしまい、リディアはどんどん病んでいくのであった。題名はホラーですがほのぼのです。
※物語の設定上、不妊に悩む女性に対し、心無い発言に思われる部分もあるかと思います。フィクションだと割り切ってお読み頂けると幸いです。
※なろう様、ノベマ!様でも掲載中です。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる