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11-4.渇き(呪怨視点)

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 *・*・*(呪怨視点)









 何処だ。

 何処だ、何処だ。

 霊力がある人間どもよ。

 我が腹の足しにもならないが。

 あの万乗ばんじょうの女を喰らうには、力が必要だ。

 喰らえ。

 喰らえ。

 喰らえ。

 喰らって腹を満たして、霊力を取り込もう。

 そして、天津神あまつかみらに対抗するためにも。

 喰らうが、喰らう。

 すると、居た。

 居た、居た。

 旨そうな霊力を持っている人間。

 つがいが居ようが居まいが関係ない。

 この呪怨の糧となれ。


【喰らう……!】


 さあさあ。

 この呪怨の糧となるべく、散れ。

 肉を魂を、我が糧となるべく寄越せ。

 騒ごうが、わめこうが知らぬ、知らぬ。

 命乞いをしたところで遅い。


【お前達は、我の『餌』だ】


 餌が、呪怨に抵抗する意味がわからない。

 そして、呪怨は騒がしくなった街中で次々と喰らい続けていく。

 渇きを、飢えを満たすためにも。

 そうして、いつのまにか辺りは血潮の川となり。呪怨はその血潮をすすっていた。

 味はするが、霊力は大したものではなかった。狙っていたのは、騒ぎに紛れて何処かへと逃げて行ったから。

 口惜しい、口惜しい。

 あれを喰らえば、満たされたのに。

 だが、必要以上に追いかけてはいけない。

 何処にいるかわからない、天津神らに見つかっては元も子もない。

 だから、探そう。

 もっともっと、霊力がある人間を喰らうために。

 呪怨は空を駆けた。
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