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第三章
《油断 8》
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「う…うう。」
セイラはうめき声を聞き、全身が痛いのを我慢して、周りを見渡すが、自分以外の誰もいなかった。
「……。」
セイラはしばらくしてから、先ほどのうめき声が自分のものだと気づく。
右手を動かそうとするけど、鉛のように重く思うように動かせなかった。
血を流しすぎた。
セイラは自分の状況を理解し、数回瞬きをする。
これからどうするべきか考える。
仲間が迎えに来てくれるまで何も出来ない。
力を使って傷を回復する事は出来なくはないが、確実にまた気絶をしてしまう事は間違いなかった。
「……。」
声を出そうとするが、うめき声のような音しか出ない。
「……。」
大人しくする事しか彼女にやる事はなかった。
だけど、変に頭がはっきりとした彼女は少し前に居た蒼泉と碧嵐が完全にいない事に不思議に思う。
彼女たちならば姿を消しても、側に居てくれると思った。
だけど、今は気配すらない。
責任感がありそうな蒼泉が居ない事は可笑しいと思ったが、セイラは指一本、気配を探る為に力を巡らせることも出来なかった。
ただただ、自分の力が回復されるのを待つしか出来なかった。
セイラは少しでも早く力を取り戻せるために目を瞑る。
視界を閉ざしたお陰で、聴覚、嗅覚など別の感覚が研ぎ澄まされる。
澄んだ水の臭い。
無音、凪いでいる風。
そして、この洞窟の外で感じるピリピリと張りつめた気配。
セイラはホッとする。
どうやら、彼女たちはセイラを守る為に洞窟の外で警戒しているようだった。
だから、ここには彼女たちの気配はなかった。
セイラはホッと息を吐く。
あの二人が強い事は理解していたけれども、それでも、姿がなかった事にセイラは無意識に不安を抱いていたのだった。
セイラは今度こそ自分の力を取り戻すために全ての感覚を閉ざし、自己治癒に集中する。
どうか、全員無事でいて。
セイラは一つの願いを胸に抱きながら自分の内に籠る。
セイラはうめき声を聞き、全身が痛いのを我慢して、周りを見渡すが、自分以外の誰もいなかった。
「……。」
セイラはしばらくしてから、先ほどのうめき声が自分のものだと気づく。
右手を動かそうとするけど、鉛のように重く思うように動かせなかった。
血を流しすぎた。
セイラは自分の状況を理解し、数回瞬きをする。
これからどうするべきか考える。
仲間が迎えに来てくれるまで何も出来ない。
力を使って傷を回復する事は出来なくはないが、確実にまた気絶をしてしまう事は間違いなかった。
「……。」
声を出そうとするが、うめき声のような音しか出ない。
「……。」
大人しくする事しか彼女にやる事はなかった。
だけど、変に頭がはっきりとした彼女は少し前に居た蒼泉と碧嵐が完全にいない事に不思議に思う。
彼女たちならば姿を消しても、側に居てくれると思った。
だけど、今は気配すらない。
責任感がありそうな蒼泉が居ない事は可笑しいと思ったが、セイラは指一本、気配を探る為に力を巡らせることも出来なかった。
ただただ、自分の力が回復されるのを待つしか出来なかった。
セイラは少しでも早く力を取り戻せるために目を瞑る。
視界を閉ざしたお陰で、聴覚、嗅覚など別の感覚が研ぎ澄まされる。
澄んだ水の臭い。
無音、凪いでいる風。
そして、この洞窟の外で感じるピリピリと張りつめた気配。
セイラはホッとする。
どうやら、彼女たちはセイラを守る為に洞窟の外で警戒しているようだった。
だから、ここには彼女たちの気配はなかった。
セイラはホッと息を吐く。
あの二人が強い事は理解していたけれども、それでも、姿がなかった事にセイラは無意識に不安を抱いていたのだった。
セイラは今度こそ自分の力を取り戻すために全ての感覚を閉ざし、自己治癒に集中する。
どうか、全員無事でいて。
セイラは一つの願いを胸に抱きながら自分の内に籠る。
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