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3 R18 これも訓練の一環なのです

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 UMAのラスボスの姿を、映像でとらえたというニュースを見た時、わたくしは前世を思い出した。不思議と前世と今世の記憶はすんなりと調和した。なんというか、今世の自分の中に、前世の淡い記憶が入ってきた感じ。

 シロアリの女王、UMAの顔が前世でわたくしの妹だった少女だったことが結びついたその時、訓練中だというのに叫び声をあげそうになった。さらには、ラスボスの側にいるのは、元婚約者でああった王子に、その側近たち。良く見れば、UMAたちの顔は、前世でのわたくしによって罪を暴かれた貴族たちに似ていたのだから、コーチの存在も忘れてニュースを食い入るように見続けた。

「メガー……、まさかこんな風にまたあなたを見ることになるなんて」

 前世でわたくしが消えた後、腐敗しきった国は、王侯貴族たちだけが国を支えている民から搾り取った美味しい金を食らいつくして、国そのものを崩しただろう。あの国の民たちだって馬鹿ばかりではない。わたくしというストッパーがいなくなり、シロアリたちの浸食が加速したに違いない。近隣諸国では革命が起こっていたのだから、それを見習って民がたちあがった姿が見えた気がした。
 そうなれば、王族の一員になり贅の限りをつくしたメガーとて、わたくしが最後にいた場所にたどり着いたのは容易に想像がつく。

 あれほどの仕打ちを受けていたのに、不思議と彼らを恨む気持ちはそれほどない。どちらかというと、彼らを悼むような、まるで歴史の本を見ている傍観者のようだ。今のわたくしは、この世界のタイムという女性の意識が強いせいかもしれない。

 もしかしたら、メガーたちもわたくしと同じように生まれ変わったのかもしれない。わたくしたちはどこまでいってもわかり合えない敵対関係になるのかと、複雑なような、そして、いっそそのほうがいいというすっきりした気持ちになる。今のわたくしは、そこそこお金持ちの家で愛されて満たされて育ったゆえに余裕があるからだろうか。

「あの子たちがシロアリ……。あの子たちにはお似合いかも」

「タイム、何を言っているんだ? それにしても気をそらすなど……今は訓練中なんだぞ」

 ニュースの映像をコーチが切る。ニュースの映像は過去のもので、メガーそっくりの女王率いるUMAの軍隊が、この星を侵略しようとしてきた初日の様子が映し出されていた。
 それを見ながら、わたくしは無慈悲な彼らの所業に憎しみや拒否、そして嫌悪感を増幅させる訓練をしていた。ところが、その途中で敵を葬ろうとする気分を高めるどころか空言を考え始めたわたくしに、コーチは別の感情を高めるための別のステップに移ったのである。でも、その訓練法ではわたくしには効果がないと判断されたのだろう。

 コーチの大きな指が、いきなり訓練用のバニースーツに身を包んだわたくしの胸の先をかすめた。スーツの生地はサテンやテュールよりも薄く、胸の先にパットすらついていない。ほぼ肌に直接触れられたかのようで、それだけで、体がびくんと跳ねてしまった。

「ああっ! 申し訳、ございません。コーチ、そこは……あ……」

 ポツリとつぶやいた言葉に、コーチは苛立ったようだ。訓練中なことを忘れて他の事に気を取られていたわたくしが悪いとは思うものの、ちょっと待って欲しいと言いたくなる。

 わたくしの言葉などお構いなしに、何度もこういう訓練をしていたコーチが、わたくしの感じやすいポイントに思わせぶりに触れてくるからたまらない。

 コーチは柔らかなソファに腰かけ、わたくしを太ももの上に乗せた。背後から抱え込むように、耳に吐息と言葉を吹きかけながら触れられていく。

「やはりこちらのほうがお前には手っ取り早いな。少し触れただけなのに、体も心も反応しすぎるくらいだ。全く、訓練に集中しろ。はあ、お前は敵に対して寛容すぎる。普通は憎しみを持てば排除したくなるものだというのにそれが乏しいから力が足りないのだ。お前が高まれば高まるほど、キュービクルと一体化して先程のUMAを退けることができるんだ。やつらへの憎しみや悲しみといった感情で心を高めるよりも、このほうが効率がいいのはわかっているな?」
「ああっ! は、はい、そうですけど、でも、んっ!」

 コーチの指が、腋の下からバニースーツの胸の部分に入り込んだ。ぴったりサイズのバニースーツに、ほぼ無理やり指を入れられたから、窮屈になる。

「そもそも、キュービクルを動かすための動力源は、生理的心理的欲求のどれかでいい。つまり」
「ん……。食べること、寝ること、なにかをしたい、満足したいという欲求です。はぁん」

 突然、きつくなっていた胸が解放された。コーチが胸の部分のスーツをペロンと下に降ろしたからだ。アンダーバストから上の部分が露わになり、恥ずかしさで胸を隠した。でも、手で隠そうとしても、そこはコーチの手ですでに包まれていて、逆にわたくしがコーチの手を胸に当てているような恰好になる。

「そうだ。だが、お前にはそういう欲があまりない。お前の後輩のカエリズミは、UMAへの憎しみ、あいつらを絶対にやっつけたいという欲求が強くそれだけでキュービクルを動かせる。だが、お前はUMAを憎みつつもキュービクルを動かせる力には到達しないんだ。であるならば、どうするか。なんらかの感情を高ぶらせて爆発させ、そしてその先の何かを満足させたいという欲求を力に変えればいい」
「は、はい、はぁ、ん……んっ!」

 すっかり官能を高められて、わたくしの力が入りづらくなった手の下のコーチの太い指が、尖りきった先端をつまむ。ピリッと痛いような、それ以上に腰にダイレクトに走ってくる感覚に息をつめて背をそらした。もう、胸を露わにしている状況なんてどうでもよくなるほど、何も考えられなくなっていく。

「人間、誰しもてっとりばやいのは性欲だ。食欲は空腹にならなければならないし、睡眠欲は寝不足まで時間がかかる。どの種も持っていて、いつでも高めることができる強い欲求。だからこそ、お前たち訓練生には、男のコーチがマンツーマンで教えているのだからな」
「は、は、ぃ……! ああ、も、もうダメです、もう、わたくし……コーチ……」

 もっと触って欲しい。そして、今の中途半端なこの気持ちと体を何とかして欲しくて、はしたないけれども、自分でも考えられない程甘ったるい声でねだってしまった。

「胸だけで高みに昇りつめそうになるとは、優秀な生徒だ。だが、まだだ。もっと己の中にある激情を高めるんだ」

 コーチはそう言うと、足の間にあるファスナーを下ろした。そこは、まだコーチにも、母や乳母以外、誰にも見せたところのない場所。反射的に足を閉じようとしたけれど、ぐいっと開かれてしまったのである。
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