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他国からの留学生

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 中等部二年生も中盤を迎えたころ、我が王立学園に留学生がやってきた。
「グランディス王国から留学して来ました。エリオットです。よろしくお願いします」
 噂をすれば何とやら。今度はエリオットがこちらの学園にやってきた。まあ、なんとなくそんな気はしていたので、そんなに驚くことではないのだが。
 あ、クリスティアナ様とフェオが睨んでいる。よっぽど嫌いなんだな。
「やあ、シリウス。久しぶりだね。クリスティアナ様も妖精様も元気そうで何よりです」
 エリオットは紳士らしく挨拶をした。
 さすがはイケメンエリオット。周りにいた女の子達が黄色い声を上げている。一応クリスティアナ様は淑女の礼を返したが、すぐに俺の後ろに隠れた。
 フェオはすでに俺の頭の後ろに隠れている。エリオット、不憫な子……。
「シリウス、隣のその子は誰なのかな? この間のグランディス王国にシリウス達が留学していたときにはいなかったと思うんだけど? まさか、新しい……」
「ああ、この子は俺の聖剣エクスカリバーのエクスだよ」
「え? そ、そんなことが?」
 エリオットの顎が外れそうだ。そんなに驚くほどのことではないと思っているのだが、最近は俺の常識も大分ズレてきているので、エリオットの反応が本来は正しいのかも知れない。
 それからはエリオットがジロジロとエクスのことを見るものだから、エクスもエリオットを嫌うようになっていた。
 本当にエリオットはうちの女性陣からは人気がないな。
 だがその一方で、王立学園の女子生徒からは絶大な人気を誇っていた。
 それもそうだ。なんて言ったって、エリオットはイケメンだし、グランディス王国の王子だからね。

「エリオットはなんでこの学園に来たんだい? まさか……」
 エリオットはため息をついた。
「そのまさかだよ。どうもグランディス王国では俺の身の安全を確保することができないみたいでね。それに、恥ずかしいことにいまだに犯人の尻尾がつかめてないんだ」
 なるほどね。それは安眠できないな。それで犯人の目を反らし、犯人逮捕に力を入れるために、この国にエリオットを亡命させたということか。
「それで、この国に留学生として来ることで、犯人を炙り出そうというわけか。危なくないか?」
「ああ、確かに危ない。だが、俺の国じゃ、共犯者が多くてすぐに雲隠れしてしまうんだよ。だが、この国なら使える手が限られている。そこを捕らえるつもりみたいで、かなりの人数の諜報員が来てるみたいだよ」
「そうか。それで護身術のため、エリオットも剣術を習うことにしたということか」
 今は剣術の授業の時間だ。この時間に剣術のクラスにいるということは、そういうことなのだろう。
 エリオットは魔法だけではなく、剣術も必要だと判断したようだ。
 前回のゴーレムの件もあるし、いい選択だと思う。魔法だけではどうにもならないことがある。
「それでな、シリウス。ぜひ俺に剣術を教えてくれないか?」
「いや、先生に習えよ」
 俺は当然断った。エリオットと一緒にいる時間が増えれば、みんなとイチャイチャする時間が減る。みんなも嫌がる。断るしか選択肢がないな。
「聞いたところによると、シリウスが一番強いそうじゃないか。頼むよ」
「断る。俺は嫁達と一緒にいる時間が一番大切だからな」
「嫁達って、クリスティアナ様以外にも婚約者がいるのか?」
「もちろん。フェオとエクスがそうだよ。分かったら他を当たってくれ」
 エリオットは口をパクパクさせていた。そりゃそうか。妖精と聖剣を妻にするとか言ったら、そんな反応になるか。

 エリオットはそこそこ剣術の才能があったようである。すぐに頭角を現し、メキメキと剣の腕を上げていった。
 今ではアーサーに次ぐ実力者になっている。
 そして、残念なことに、アーサーと共に先生の手には負えないレベルになっていた。
「シリウス、やはり俺に剣術を教えてくれないか?」
「シリウス様、私からもお願いします。エリオット様と共に、私にも剣術を教えてもらえませんか?」
 この学園で二人に剣術を教えることができるのは、もはや俺しかいなかった。アーサーもエリオットもまだ伸び代がありそうだ。この伸び盛りの期間を無駄に過ごすのは、二人にとって大きな損失になるのかも知れない。
 どうしたものか。
「教えてあげたらよろしいではないですか」
 見かねたクリスティアナ様が口を挟んできた。それもそうなんですけどね。
「ですか、そうなると、クリスティアナ様達と過ごす時間が減るかも知れませんよ?」
「シリウス様を貸し出すのは、剣術の授業の間だけですわ」
 クリスティアナ様は笑顔でキッパリとそう言い切った。
 その笑顔は俺からは見えなかったのたが、どうやらかなり凄味のあるものだったらしく、二人が縮こまっているのが見てとれた。
 結局俺は二人を教えることになった。
 というよりかは、二人はどうやら俺に弟子入りしたつもりのようであり、俺のことを師匠と呼ぶようになっていた。
 どうしてこうなった。
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