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確認した方が良さそうだ①
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サンチョさんのあまりに必死な形相に押されて、取りあえず話だけ聞くことになった。すでにサンチョさんは涙を流している。
「私には愛する妻がおりまして、その妻も、私と同じく毒にやられました。さいわい私は解毒剤が良く効いて、右腕のしびれと痛みで済んだのですが、妻は……半身不随になり、寝たきりになってしまったのです」
夫婦同時に毒にやられたとなると、だれかに毒を盛られたみたいだな。どう見てもサンチョさんがかつて冒険者だったみたいには見えないもんな。おなかもそれなりに出ているしね。
「構いませんよ。エベランに暮らしているのですか?」
「ひ、引き受けて下さるのですか! そうです、そうなのですよ。エベランなら薬が手に入りますからね」
ガバッと駆け寄ると、俺の両手を握った。どうやら相当、奥さんのために手を尽くしてきたようである。
「リリアも良いよね?」
「もちろんよ。ただし、あたしたちがエクストラ・ヒールを使えることは内緒にすること。それが守られないなら、お断りよ」
ビシッとリリアが指差した。サンチョさんともう一人の男の人が無言でコクコクとうなずいた。リリアはエクストラ・ヒールが「とても目立つ魔法」だと判断したようである。
これは俺もホイホイと使わないようにしなければいけないな。使うときは無詠唱にしよう。無詠唱だと魔力を多めに消費するし、効果も落ちるのであまりやりたくないんだけどね。でも仕方がないか。
話は決まった。サンチョさんはお金を支払うと言ったが、口止め料として一切受け取らなかった。どうやらお金を稼ぐだけなら、治癒院を開いた方が早そうだ。
部屋に戻る途中で、バルコニーに出た。
「リリア、エクストラ・ヒールを使うのはダメそうだよ。どうなってんの?」
「あたしもサッパリ分からないわ。封印されているうちに、どうも世の中の魔法事情が大きく変わってるみたいね。どこかで一度、魔法について調べる必要があるわね」
「そうだね。エクストラ・ヒール以外にも使うとまずい魔法があるかも知れない」
俺たちはお互いにうなずき合うと何事もなかったかのように部屋に戻った。このことがだれかに知れ渡ると面倒くさいことになりそうだ。
翌日から、サンチョさんの俺たちに対する態度がガラリと変わってしまった。俺たちはただの冒険者で、馬車に乗る資格はないはずなのに、しきりに乗せようとしてきた。
さすがにレイザーさんにおかしいと思われて、何があったのかを聞かれたが「食事のお礼をしたら気に入られた」と言って、何とか納得してもらった。
ウソはついていない。サンチョさんにも「気持ちはありがたいが、冒険者としてのテストの一つなのでそっとしておいて欲しい」と頼んでおいた。おかげで何とか静かになった。
まあ、休憩の度に色々と食べ物を差し入れして来たけどね。
何だか食いしん坊コンビのように思われているような気がする。別に良いけどね。
そんな感じで旅を続けていると、魔物の反応があった。道の両脇には腰の高さまで伸びた草が生い茂っている。
「魔物がこっちに向かってます。一応、警戒しておいて下さい」
「良く分かったな。マルチダ、どうだ?」
「いるわね。数は三つね」
マルチダさんもアナライズが使えるのかも知れない。それでも有効範囲が狭いのか、その後ろから来る次の団体に気がついていないようである。
「その後ろからさらに四匹来てるわよ」
「この辺りならグラスウルフなのかな?」
「足が速いからそうかもね」
会話している間にも迎撃体勢を取った。不意打ちさえ防ぐことができれば、そうそう後れを取ることはないだろう。ガサガサと茂みをかき分ける音が大きくなってきた。
レイザーさんとライナーはすでに剣を抜いていた。
前衛二人、後衛はリリアを含めて五人。バランス的にどうなんだろうか。まあその辺は魔法で援護すればいいか。後衛にいる男は俺だけ。ちょっと情けない?
グラスウルフの巨体が飛び出して来た。それをあっさりと跳ね返す前衛二人。すぐにマルチダさんの追撃の魔法がグラスウルフに突き刺さった。残った一体もベールスの弓が仕留めた。
ちなみに俺とリリアの出番はなかった。次こそは。
「私には愛する妻がおりまして、その妻も、私と同じく毒にやられました。さいわい私は解毒剤が良く効いて、右腕のしびれと痛みで済んだのですが、妻は……半身不随になり、寝たきりになってしまったのです」
夫婦同時に毒にやられたとなると、だれかに毒を盛られたみたいだな。どう見てもサンチョさんがかつて冒険者だったみたいには見えないもんな。おなかもそれなりに出ているしね。
「構いませんよ。エベランに暮らしているのですか?」
「ひ、引き受けて下さるのですか! そうです、そうなのですよ。エベランなら薬が手に入りますからね」
ガバッと駆け寄ると、俺の両手を握った。どうやら相当、奥さんのために手を尽くしてきたようである。
「リリアも良いよね?」
「もちろんよ。ただし、あたしたちがエクストラ・ヒールを使えることは内緒にすること。それが守られないなら、お断りよ」
ビシッとリリアが指差した。サンチョさんともう一人の男の人が無言でコクコクとうなずいた。リリアはエクストラ・ヒールが「とても目立つ魔法」だと判断したようである。
これは俺もホイホイと使わないようにしなければいけないな。使うときは無詠唱にしよう。無詠唱だと魔力を多めに消費するし、効果も落ちるのであまりやりたくないんだけどね。でも仕方がないか。
話は決まった。サンチョさんはお金を支払うと言ったが、口止め料として一切受け取らなかった。どうやらお金を稼ぐだけなら、治癒院を開いた方が早そうだ。
部屋に戻る途中で、バルコニーに出た。
「リリア、エクストラ・ヒールを使うのはダメそうだよ。どうなってんの?」
「あたしもサッパリ分からないわ。封印されているうちに、どうも世の中の魔法事情が大きく変わってるみたいね。どこかで一度、魔法について調べる必要があるわね」
「そうだね。エクストラ・ヒール以外にも使うとまずい魔法があるかも知れない」
俺たちはお互いにうなずき合うと何事もなかったかのように部屋に戻った。このことがだれかに知れ渡ると面倒くさいことになりそうだ。
翌日から、サンチョさんの俺たちに対する態度がガラリと変わってしまった。俺たちはただの冒険者で、馬車に乗る資格はないはずなのに、しきりに乗せようとしてきた。
さすがにレイザーさんにおかしいと思われて、何があったのかを聞かれたが「食事のお礼をしたら気に入られた」と言って、何とか納得してもらった。
ウソはついていない。サンチョさんにも「気持ちはありがたいが、冒険者としてのテストの一つなのでそっとしておいて欲しい」と頼んでおいた。おかげで何とか静かになった。
まあ、休憩の度に色々と食べ物を差し入れして来たけどね。
何だか食いしん坊コンビのように思われているような気がする。別に良いけどね。
そんな感じで旅を続けていると、魔物の反応があった。道の両脇には腰の高さまで伸びた草が生い茂っている。
「魔物がこっちに向かってます。一応、警戒しておいて下さい」
「良く分かったな。マルチダ、どうだ?」
「いるわね。数は三つね」
マルチダさんもアナライズが使えるのかも知れない。それでも有効範囲が狭いのか、その後ろから来る次の団体に気がついていないようである。
「その後ろからさらに四匹来てるわよ」
「この辺りならグラスウルフなのかな?」
「足が速いからそうかもね」
会話している間にも迎撃体勢を取った。不意打ちさえ防ぐことができれば、そうそう後れを取ることはないだろう。ガサガサと茂みをかき分ける音が大きくなってきた。
レイザーさんとライナーはすでに剣を抜いていた。
前衛二人、後衛はリリアを含めて五人。バランス的にどうなんだろうか。まあその辺は魔法で援護すればいいか。後衛にいる男は俺だけ。ちょっと情けない?
グラスウルフの巨体が飛び出して来た。それをあっさりと跳ね返す前衛二人。すぐにマルチダさんの追撃の魔法がグラスウルフに突き刺さった。残った一体もベールスの弓が仕留めた。
ちなみに俺とリリアの出番はなかった。次こそは。
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