狂愛サイリューム

須藤慎弥

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18♡心構え

18♡5※

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 ツアー後はもちろん、歌って踊って会場を湧かせた歌番組の収録のあとは大体、聖南が〝獣〟から〝猛獣〟にグレードアップされる。

 アドレナリンってやつのせいにして、ギラギラした瞳で俺を見下ろして笑う聖南はついさっきまでは万人の恋人だった。


「俺に見惚れてたんだって? 声に出しちまうくらい、そんなにカッコ良かった? 俺」
「……んっ、ん、っ……」


 ぐちゅ、ぐちゅ、と艶かしい音を立てながら、器用に性器の先端だけを挿抜される。

 たっぷり解しても、最近はめっきりエッチの回数が減った(聖南が我慢をがんばってる)から、一気に奥まで挿れないで慣らしてるんだって。

 聖南優しい……って感動したのは最初だけで、もう何十分ぐちゅぐちゅされてるのか分からない。

 絶対に聖南には刺激が足りないはずなのに、挿れられても抜かれても俺がビクビクッと下半身を震わせてるのが楽しいみたいで、なんかずっとこの調子で弄ばれている。


「あっ……せな、さん……っ」


 右胸をさわさわと撫でて、左の乳首をぺろぺろしてる聖南はこんな事まで器用だ。

 舌先の熱と湿り気が気持ち良くて、ビリビリっとした刺激が背中から下半身へと伝わる。 すでにヘソの下ら辺が、俺の精液と先走りでびちょびちょだ。

 まだ一回も触られてないのに簡単にイけちゃう体になった俺は、聖南の肩にしがみついて与えられる快感に酔うだけ。

 っていうか……なんで聖南がそのことを知ってるの?

 衣装を着て綺麗にヘアメイクを施されたキラキラな聖南を観て、思わず「カッコいい……」って呟いた時は恭也しか居なかったはずなのに。


「照れてんのは分かるんだけどー、俺は直接言ってほしいなー」
「あうっ……ぅ、ん……っ」


 そう言って眼鏡を外す聖南は、ほとんど服を脱いでない。

 CROWNの出番が終わるなりホテルに連れ込んで、全裸に剥いた俺に覆い被さってすぐ猛獣と化した。

 「ここシャワールームあったよ」と嬉しい情報をくれた、出番直前の聖南。

 この時期は特に、俺がやたらとシャワーを浴びたがるのを知ってる聖南はやっぱり気が利くなぁって感動しながら、楽屋でCROWNのパフォーマンスを見届けてからシャワールームに走った。

 ……あれは悪魔の囁きだったんだ。

 聖南ははじめから、出番終わりで猛獣になる気満々だったんだ。

 見事に俺は、猛獣の罠に引っかかった。


「葉璃、気持ちい?」
「……ん、え、っ? あっ……ぅ、……ぅん、……」


 性急に押し倒しておいて、俺をすでに二回もイかせておいて、分かりきった問いには頷くしかない。

 半分だけ挿入して俺のいいところを重点的に擦り上げては、ずるずるっと引き抜く。 そしてまた挿れられて、先端で内壁を抉るように腰を動かされる。

 何十分も中をぐちゅぐちゅされたらだんだん考えてる事がぼんやりしてくる。 とは言っても、完全には意識を飛ばしきれないさざ波のような快感をずっと味わってると、これもまた癖になりそうだと思えてくる。

 でも、でも、───。

 これも充分気持ちいい、んだけど……どうしても、……ちょっと物足りない。

 なんで奥まで挿れないの?なんて、聞けるわけない。


「そろそろ一時間だな。 葉璃ちゃん、分かってくれた?」
「え……っ?」
「俺すげぇ妬いてんの」
「あ、っ……んぁっ……っ……!」
「奥まで欲しいんだろ? さっきから腰押し付けてきてんの、気付いてる?」
「うぅ……っ、しらな、っ……」


 これは、聖南が楽屋で言ってた〝プチお仕置き〟だ……!

 今日みたいな猛獣の瞳は、アドレナリンが大量分泌されてる時かヤキモチで嫉妬メラメラな時しか見られない。

 いつまで経っても射精するための動きをしない聖南に、俺の体が勝手にその先を求めようとしてたなんて事は知らなかった。

 意地悪されてるんだって気付いたのがたった今でも、聖南に繋がれた俺にできる事は限られてくる。

 だからっていつもと違うじれったさにムズムズして、俺……無意識にそんなやらしい動きしてたの?

 薄っすらと目を開けて聖南を見ると、綺麗な薄茶色の瞳はまだ猛獣のままだった。


「やっぱさ、他の男にこの肌触らせるのはナシだって」
「んっ……違っ……あれは別に、なにも……!」
「あー今思い浮かべたな。 俺とセックスしてる時に他の男の事考えるなって言ってんだろ。 さらに一時間追加しちまうぞ」
「や、やぁぁ……! せなさん、っ……ごめ、なさい……っ」
「焦らされんの、どう? 気持ちいいけど物足りねぇって顔してるな」
「ふ……っ、んっ……せ、なさんっ……! ごめん、なさい……っ」
「謝んなくていいよ。 別に怒ってるわけじゃねぇし?」
「う、うそっ、……せなさん、怒ってる!」
「怒ってねぇよ~。 ……ちょっとしか」
「やっ……待って、待っ……んんんーーっっ」


 油断していた俺の中が、一気に熱くなった。 貫かれたと同時に、ぐぷっと孔からローションが弾け飛ぶ。

 今までの刺激とは全然違う。

 内襞を擦る性器がずるずると俺の中を犯していき、行き止まりとなった場所を先端でぐりぐりと愛撫されると声すら出なくなった。

 ヤキモチ焼いた、この表情。 少し……ううん、かなり荒い腰使い。 キスもまともにしてくれなくて、今まで我慢してた分を取り返そうとするみたいに最奥までの挿抜が激しくなる。

 俺の腰を掴んでピッタリと密着した状態で脳まで揺れそうなほど腰を振られると、揺さぶられた分だけ唇がだらしなく開いた。

 ……舌を噛んじゃいそうになる。


「二度と他の男に触らせるな。 分かった?」
「う、んっ、わかっ……た、ごめ、なさ……っ」


 少ししか怒ってないなんてウソ。

 いつも涼しい顔してる聖南の眉間が、「俺めちゃめちゃ怒ってるよ葉璃ちゃん」って言ってる。

 俺の体をすっぽり包み込んでやらしい吐息を漏らす聖南は、何でプチお仕置きしてるかを分からせるために一時間も意地悪した。

 かと思えば、ほんの何分か激しく動いただけで、ずっと我慢してたらしい欲をあっけなく吐き出す。

 中にいる聖南の性器にはほとんど変化はないけど、お腹があったかくなったからたぶん、イった。


「……ごめん、葉璃ちゃん。 プチお仕置き実行しちまった」
「うぅ……っ! せなさん、おこっても……かっこいいし、激しいの嫌いじゃない……けど……っ、こわい!」
「悪かったって。 今日のは久々に頭にきたんだからしょうがねぇじゃん。 恋人の体触られたら誰だって嫌だと思うよ?」
「うぅぅぅ……っ」
「ごめんごめん。 俺が悪かった。 意地悪が過ぎたな」
「……でも、おれも、ごめんなさい……。 せなさんのこと……不安に、させた、から……」
「そういうとこ、葉璃は俺に甘過ぎる」
「せなさんこそ……!」


 おでこにちゅっとされると、お仕置きなのにお仕置きしきれない聖南を愛しいなって思う。

 俺が「触って」って言ったわけじゃないけど、不意打ちでも嫌なもんは嫌だよね。

 だって俺も、聖南が他の人に素肌を触られたって聞かされたら……ヤキモチ焼く。 それだけじゃなく、怒る……かもしれない。

 さっきの聖南みたいに。



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