迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

文字の大きさ
134 / 223
⑭彼氏がキレました……

─雷─②

しおりを挟む



 泣きながら電車に揺られて、降りる駅を間違えた。

 てか、気付いたら知らねぇ景色で慌てて降りたら、知らねぇとこに着いてた。

 改札を出てみると、たった何駅かしか進んでねぇのにマジで異世界にワープした、みたいなど田舎に到着してたんだ。

 大袈裟に言うと、いま俺は〝絶望〟の真っ只中。

 回れ右して戻りの電車に乗りゃいいじゃんって思うだろ?

 それがさ、駅員のおっちゃんに半泣きで助けを求めたら「ここは快速止まらないから次の電車は二十分後だよ」だってさ。

 知らねぇとこで? 気分も体調も絶不調なのに? ひとりぼっちで待ってろって?

 たかが二十分、されど二十分。

 ガーン!と打ちひしがれてた俺に、駅員のおっちゃんからは「迷子かい?」ってガキ扱いされるし。

 二十分間、しょぼんと寂しい駅でひたすら待ってるなんてムリで、途方に暮れていた時だった。

 しばらく鳴らなかった着信音が響いて、急いで手に取る。


『あ、雷ー? 今何してんのぉ?』
「しぇっ、しぇんぱーいッッ」


 迅の激怒の声じゃなくて、相手は全然関係ない先輩だったから心底ホッとした。

 この状況でキレられたら、さすがに悲しくなってくる。

 別に泣くようなことでもねぇのに、また目から汗が……。


『えっ? なにっ? 雷、あんた泣いてんの?』
「ふぇッ、泣いてねぇよぉぉッ」
『どうしたのよ! てか今どこにいるのっ?』
「駅ぃぃッ」
『駅だけじゃ分かんないわよ!』
「だって駅だもんーーッッ」
『あーもうっ、とにかく近くのコンビニかファミレスに居なさい! すぐに行くから!』
「ありがとぉぉッッ」


 よく分かんねぇけど、漢字が読めなくて伝えらんなかった駅名を言わねぇまま、通話は切れた。

 先輩が来てくれる……二十分がきっとあっという間だ。

 言われた通り、俺はコンビニかファミレスを探した。

 駅から右に曲がって、都会ならまだウジャウジャ人がいる時間だってのにあんまり人通りの無えこんな田舎に、その二つがあんのかと不安を抱きつつ。

 歩くこと十分。 全国展開するファミレスのチェーン店を発見した。

 雷にゃんは幸運だ。


「……ふぅ、……」


 腹がムカムカすっから食欲も無くて、席に案内されてもメニュー表に手が伸びない。

 晩メシ時だってのに先客が二組しか居ねぇし、普段は気付きもしねぇ店内を流れるBGMがやたらと爆音に聞こえる。

 迅からの連絡がない。

 泣いてたから、いつから鬼電がパッタリ無くなったのか分かんねぇ。

 冷静になると、迅にマジで〝ヤリチン〟って言ったのは悪かったな思う。

 俺は超めんどくせぇバカヤローだ。

 でも迅が、俺の居ないとこであんな本音をさらけ出してるの知らなかったからさ……。

 浮かれて、のぼせ上がって、ルンルンハッピーな何とかホルモンを四六時中分泌させてたからさ……。

 ショックだったんだよ。

 いつか迅にポイされる日がくるって考えたら、悲しくてツラくて、腹ン中がぐっちゃぐちゃになった気がしたんだよ。


「ポイされたくねぇなぁ……」
「何をポイするって?」


 呟いたと同時に、頭をガシガシ撫でられて振り向く。

 迅の撫で方じゃないそれは、女の姿の先輩だった。

 大きめのショルダーバッグを肩から下ろして、よいしょと俺の前に腰掛けるのは、大柄だけど紛れもなく綺麗な女性。 もとい、キャリアウーマン。


「あ、先輩……」
「早かったでしょ。 タクシーぶっ飛ばして来たんだからね。 あ、何か頼んだ?」
「ううん、何も。 てか先輩、なんでここが分かったんだ……?」
「便利な世の中よね」
「う、うん?」
「なんだ。 泣いてないじゃない」
「汗は引っ込んだ」
「あら、そう」


 ファミレスかコンビニ、ファミレスかコンビニ、と呟いてるうちに、目からどんどん溢れ出てきていた汗は枯れた。

 心配してくれた先輩は、謎の力を使ってここまで来てくれたのに、俺はどうしてもいつもみたいに笑えねぇ。

 ヘラヘラしてないとやってらんねぇと思う反面、それすら出来なくなってるとか我ながら重症じゃん。


「でもさっき泣いてたのはホントでしょ? どうしたのよ。 迅クンとケンカでもしたの?」
「……してない」
「そんな唇尖らせて。 ムッとする事があったんでしょ? 迅クンが無理強いしたとか?」
「むりじい……?」
「無理矢理ヤラれたのかってこと」
「なッッ? なななな、な、何をッ!?」
「……ここではちょっと」


 あぅ……そういうことか。

 迅はエッチのむりじいどころか、最近はヌきっこ大会も何か遠慮がちだよ。

 こないだ泊まりに行った時、二回目のレッスンを期待してイチジク持参したのに、結局ちくびもイジられなかった。

 やらしいキスはいっぱいされた。

 「好きだ」「可愛い」も耳タコなくらい聞かされた。

 でもレッスンはしてくんなかった。


「無理矢理なんかされてねぇ。 いっそヤッてくれ!とは思ったけど」
「……どうして?」


 動画三部作を提供してくれた先輩にならいいかって、俺が絶不調になった経緯を打ち明けた。

 恋人不在で繰り広げるにしては、ちょっと過激でモラル違反なヤリチンとエロピアスの会話。

 実際は何メートルも離れたとこから二人の話を盗み聞きして、ところどころ辻褄が合わねぇとこもあったけど。

 先輩には、俺の解釈を織り交ぜた。

 ……のがいけなかったのか、俺に加担してくれると思った先輩はみるみる呆れ顔になっていく。

 肩肘をついて、手のひらに顎乗せて、たまに「ふーん」と素っ気ない相槌打って。

 なんでだ。

 まるで説教されそうな雰囲気なんですけど。


「あんたそれ、ちゃんと話聞いてた?」
「当たり前だろ! 聞いてたからキレたんだ!」
「そう言われてもねぇ……。 あたしにはとても理解出来ないんだけど」
「理解できない~ッ!?」
「なんでそういう風に受け取っちゃうのよ。 少なくとも迅クンは、あたしに宣言してたわよ? 雷はチビで華奢で童貞処女だから、ちゃんと段階踏んでくって。 〝俺が本気出したらたぶんアイツ死ぬ〟とも言ってたかな」
「────ッッ!?」



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?

藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。 なんで?どうして? そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。 片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。 勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。 お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。 少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。 (R4.11.3 全体に手を入れました) 【ちょこっとネタバレ】 番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。 BL大賞期間内に番外編も完結予定です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

処理中です...